テレビナレーションの違和感を感じる箇所

この夏、ある番組を見ていて、気になる表現がありました。
土曜日のお昼に放送されている番組です。

 

違和感を感じるナレーション

その表現があったのは、オープンしたてのグリル料理の店の紹介でのナレーションでした。

その店のシェフについてのナレーションのところで、

「いろいろな店で修業した一流の料理人」

というナレーションが入っていたのです。

たったの1行、
秒数で6秒

くらいのわずかなものですが、

違和感を感じた とともに、この番組は、大丈夫なんだろうか?

今日はプロデューサーが夏休みか夏風邪で休みだったんだろうか?
と心配してしまいました。

このナレーションの何がひっかかるのか、説明していきます。

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テレビナレーションでの使われない言葉

 

具体性のない「いろいろ」

 

まず「いろいろな」という言葉は、ナレーションでは、使いたがらないことばです。

視聴者にとって、何の情報もないですし、なんのイメージもわかないから無駄なんです。

単に秒数を埋める、空欄を埋める、空白を埋めるだけのことばで、
貴重な秒数をそういうことばを当てはめることはありません。

もちろん、インタビューでの回答や、フリートーク、
街録なんかでは、使われますし、

そこをカットするということはないのですが、ナレーションではわざわざ使わないんです。

オンエア前に、必ずプロデューサーはプレビューしますから、

「いろいろな」という言葉が使われていたら、

「いろいろな」とは何だ?

ナニ料理とナニ料理なのか?どんな料理店で修業していたんだ?と担当ディレクターに確認するはずです。

グリル料理の店であっても、和食の店で修業してきたとか、

イタリアン料理店にいたとか、フレンチだとか、

一言入ると視聴者は、想像が膨らみます。

ナレーターさんのなかには、日本語への造詣が深く、

表現を追求されている方も多くいらっしゃるので、

ナレーション入れのときに「このいろいろっていうのは、ほかに言い換えられないの?」

と聞かれると思います。

「いろいろな店で修業してきたシェフが」という表現であれば、ここまで強い違和感は感じなかったろうと思うのですが、

次に、「一流の料理人」と表現しているので、

おいおいおいおい……と感じたわけです。

比較表現の「一流」

「一流の」ということばは、滅多に使われないことばです。

おなじように滅多に使わない言葉で、

「最高の」「日本一の」「一番の」という言葉があります。

なんでかというと、必ず、その根拠は何か?を問われるからです。

たやすく使われる言葉ではないのです。

使うからには、プロデューサーに突っ込まれる覚悟をもって挑みます。

プレビューのときに、必ず、問われます。

「その一流の根拠はなんだ?どういう経歴のシェフなんだ?」

それに回答できないと、使わせてもらえませんし、

回答できたとしても、プロデューサーが納得しないと使えません。

「いろいろな」という、おおざっぱな表現が、「一流の」という稀有なことばと並んでいることで、両方の言葉が悪目立ちし、短い1行に収まっていることで、

違和感が残る残念な表現になってしまっているのです。

番組が放送されるまでには、多くの人のチェックが入りますが、
今回は、その多くをすり抜けて放送されてしまいました。

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テレビナレーションの違和感の理由

かつて、ナレーションは作家が書いていました。

放送作家の一分野です。

作家が書いていた時代は、作家が自分でナレーションを書くのに必要な情報を集めることもあったし、

アシスタントディレクターやリサーチャーにリサーチをさせて、適切なナレーションを書いていました。

今は、経費削減により、ナレーションはディレクターやプロデューサーが書くようになりました。

また、常に制作スタッフが十分いるとは限らず、限られた人数で掛け持ちで作品を作らなければならない事情もありますから、

このディレクターは少ない時間のなかで、ナレーションを書かなければならなかったのかもしれません。

もしかしたら、アシスタントディレクターからディレクターになったばかりで、
とにかく暖かく見守ろうという体制だった可能性もあります。

もしくは、プロデューサーのチェックが甘かったのか
それとも慢性的に人が足らず番組全体の抱える問題なのか……

いろいろと番組について深読みまでしてしまった一言でした。

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