2020年テレビ業界にとって、大きな変革の年とも言えます。
コロナによって、撮影や取材がストップしつつ、新しい撮影方法取材方法が模索されました。
スタジオの中は密にならないよう間隔がおかれたり、リモート出演に。ロケものは、最小人数で間隔を保ちながら撮影。
ドラマの撮影方法も台本や設定を変更することになりました。
視聴率が高いのに、人気番組が終了するというニュースも出ています。それは撮影方法が今の状況に適していないため、続けていくことが困難になったためと報じられています。
制作方法や撮影方法が変化していることは、これからこの業界に入ろう!と思っている学生の方たちに、どんな影響があるのでしょうか。
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新しい撮影方法で、現場はどうなっている?
撮影現場では、スタッフの人数を絞り込んでいます。
スタジオ収録だと、以前は観覧席があって、30人から50人くらいお客さんを入れていました。
人を入れることで、そのお客さんたちを誘導したり、合図を送る仕事がありました。その仕事はアシスタントディレクターの仕事です。
司会者へ番組進行の指示だしをする仕事がありましたが、これも、アシスタントディレクターの仕事でした。ロケものの仕事であれば、現場で撮影の段取りをしたり、出演者の誘導、通行人の整理、俯瞰カメラやサブカメラをまわす、それらもアシスタントディレクターがやっていました。
スタジオ収録のひな壇があるようなバラエティ番組ですと、ゲストの芸人やタレントさんのスケジュールを送ったり、収録当日の段取りをするのもアシスタントディレクターの仕事ですが、ゲストたちもコロナ前の半分程度になっています。
制作の現場でも、スタッフの人数を最小限にする努力がされていますが、真っ先に削られているのが、アシスタントディレクターたちです。
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現場から離れたADたちは…
撮影現場に行けないADたちの仕事は、資料整理や、再放送や番組の二次使用のための許可撮り、YouTubeなどから番組に使える映像を探し出したりその申請をする、ネットでリサーチ、電話で取材交渉など、デスクークの仕事へシフトされています。
それも、さほど人数が必要とされません。
制作会社でテレビ番組制作以外の事業をしていれば、そちらに人員をまわすなどなされており、本来のADの仕事とは異なる、意に沿わない仕事をしている人たちもいます。
つまり、今、アシスタントディレクターは余っている状況にあります。
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落とされるエントリーシート、合格するエントリーシート
とはいえ、次世代を担うディレクターを育てていくために、採用はされますが、どういう人材が取られるのでしょうか。
それは、テレビをやっていく本気度が高い人です。その本気度は、どこにあらわれるのでしょうか。
落とされるエントリーシートは、好きなテレビ番組やタレントについてアツく書かれているものです。マニアックなアイドルや、アニメなどについての考察についても、落とされる可能性が大きいです。
数年前であれば、それほど知られていない、認知度の低いアイドルやマンガをもっと世に知ってもらって、スポットライトをあてたい、という志望動機であっても、制作会社なら通っていました。今年以降は、厳しいかもしれません。
通過するエントリーシートは、志望動機はそうであっても、将来テレビでその思いを実現させるために、今、自分はこういう作戦を考えていて、こんなことをしています、と実現化へ向けての行動をしていることが書かれている、そんなシートです。
例えば、ファンサイトやコミュニティサイトを運営している、とか、ファン同士が繋がれるイベントをしている、でも構いませんし、架空の番組企画書やビジュアルブックを作ってみました、でも構いません。
彼らの魅力を、まだ見ぬ、知らない人たちに知ってもらうために、あなたは何をしているのか、あなたの熱い思いを、周りにどう伝えるのか、を実践している人なら、採用側も話を聞いてみよう、と思わせます。
熱い思いを語るのと、熱い思いを伝えるのとでは、好きをベースにした「動き」で違い生まれます。思いを語るだけでは、興味のない人に、その良さは伝わりません。
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自分が学んだことを書くなら、専門的になりすぎない
また、自分が学んできたこと、やってきたことを細かく詳しく書かれているのも要注意です。特殊な分野であればあるほど、知らない人からは関心を得ることが難しいのです。
特殊な分野を学んできて、それをアピールしたいのであれば、その知識がない人たちにも、読んでもらえる内容にしておくことです。
テレビ番組とは、どんなに難しい内容であっても、初見でわかるまでかみ砕いて説明します。そのためには、まずディレクターがその難しい内容を理解し、そして、分解して、わかりやすい言葉へ変換し、見せ方を工夫します。
理系の学生の方たちは、技術系の専門職以外は採用が難しいのはここで引っかかっている可能性が大きいのです。
自分がやってきたことは、専門的だと認識し、一般の人には伝わりづらいと思いましょう。それに関心を持ってもらうにはどうすればいいか、私たちの身近なものや生活にあるもので例えたり、見立てたり、といった工夫をすることです。
一生懸命に説明しても、人はわからないことにはシャットアウトしてしまいます。自分が学んできたこと、やってきたことに自信がある人は、今一度、難しくなりすぎていないかどうか、誰かに見てもらうといいでしょう。
大人とのやりとりに慣れておく
今までなら、アシスタントディレクターは雑多な仕事をしながら、タレントや取材先への姿勢やふるまいを身につけたり、番組の進め方や演出方法、機材のバリエーションや扱い方などを学んでいくのですが、その機会が失われています。
アシスタントディレクターの失敗は、外部の人たちとのやりとりで多く起こります。
タレントの事務所や取材先への連絡ミス、現場での振る舞い、フォローが薄い、また自身の認識不足などから起こります。タレントさんへのあいさつがなかったために、担当から外されたADもいました。
それくらい、立ち居振る舞いに厳しい文化があります。
あいさつや返事、言葉遣いが備わっていない、という人は、採用を見送られます。
提出物があるものについては、締め切りが守れない人は、そこで線引きされるでしょう。
社会人としての振る舞いが、会社側が教えなくてもできる人でないと、採用は厳しいかもしれません。
もし、いままで、年齢の離れた大人、先輩との接点が持てなかった人は、積極的にOB訪問をしたり、アルバイト先の人とはなしをすることで慣れておきます。
教えてもらう、ではなく、自分から正しい方法を知り、積極的に身に付くように慣れる、と自分で考えて動ける人が求められています。
機材関係も教えてもらうのを待つのではなく、自分で操作することで学んでいきます。そういう機会がない、と諦めるのではなく、知って使ってみること、やったことがなくてもやりたいと言える人が求められています。
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