テレビCMはもちろん、どのような広告をやるにしても、「受け取り手に嫌われない」ということは必ず意識しなくてはいけません。
最近はSNSの台頭で、簡単に広告が炎上するようになってしまい、それによって広告の出稿が中止になる事例も多くなっています。
昔は広告を目にして不快な気持ちになっても、その気持ちをぶつけるためには企業やテレビ局に電話をしなくてはいけませんでした。
それが今ではSNSに簡単に書き込めるようになっていますし、そういった声が簡単に拡散されるようになってしまっています。
せっかくお金をかけてCMをしても、それがネガティブキャンペーンになってしまう可能性もある、というのはなんとも怖いことです。
広告を出すのも難しい時代になってしまいましたね。
そこで今回は、今までテレビCMに寄せられた苦情にどのようなものがあったのか、ということを見ながら、
テレビCMを制作する際にどんなことに気をつければいいのか、ということを考えてみたいと思います。
日清カップヌードルのCM中止事件
日清のカップヌードルの新CMが放送開始一週間ほどで放送中止になるという事件がありました。
これは2016年3月から放送開始されたCMで、ビートたけしさんが学長を務める「OBAKA’s UNIVERSITY」で小林幸子さん、ムツゴロウさん、矢口真里さん、新垣隆さんらメンバーが教員に扮し、それぞれの学部で教鞭を執るという内容になっていました。
このCMではたくさんの苦情が日清に寄せられたとのことで、日清はお詫びをし、CM放送が中止となっています。
このCMの中に、矢口真里さんが「危機管理の権威」として「二兎を追う者は一兎をも得ず」という格言をバックに登場するシーンがあり、ここに対しての苦情が多く寄せられたのではないかと見られています。
2013年に矢口真里さんは自らの不貞行為を理由に離婚をしています。
ネットではこのCMに対して「日清さん攻めてる!」というような好意的な意見も多く見られたことから、CMを見てみんながみんな不快な気持ちになったというわけではなさそうなのですが、それでもCM中止という判断に至るほどだったということです。
キャスティングだけで炎上する危険性があることを充分理解し、契約内容もしっかりと定めた上でキャスティングをする必要がありますね。
有名タレントを起用する場合、どうしてもそのリスクが生まれるというデメリットがあります。
女性の表現で炎上した資生堂
2016年10月、資生堂の化粧品ブランド〈INTEGRATE(インテグレート)〉のCMが炎上した事件がありました。
CM動画は2種類あり、
1種類目の動画では、25歳の誕生日を迎えた女性が友人とパーティーをしているシーンで、
「25歳以上の女性は可愛くない、チヤホヤされない」「25歳以降も可愛くあり続けるために〈INTEGRATE〉を使って化粧をしよう」という内容になっています。
このCMは「女性の価値を年齢で決めること」に対して強い批判があつまりました。
また2本目の動画はデザイン事務所のようなオフィスのシーンが描かれており、
1本目にも登場した女性が薄化粧で仕事をしていると上司から「がんばりが顔に出るのはプロではない」と指摘され、〈INTEGRATE〉を使ったら綺麗になり、上司も驚いて振り返ったという内容になっていました。
働く女性に対して容姿で仕事内容を判断するような表現が使われたのが物議を醸しました。
のちに資生堂はこのCMを取り下げています。
ジェンダーの問題はとても難しく、
商品やサービスによっては「働く女性がメインターゲット」というものも多いと思いますが、性差を意識したCMの場合は特に表現に注意が必要です。
制作する時にたくさんの方に意見をうかがって、なるべく多角的に考え、別の視点から見ても表現が不快に感じないか、というところは調査したいところですね。
テレビCMは事例研究が大切
テレビCMを制作する時は、どんなCMが好感度が高く、どんなCMが炎上したのか、という事例をたくさん見ておくと良いと思います。
今までの事例を色々見ておくことによって、どういう角度でCMが炎上するのか、ということがある程度見えてくるのではないでしょうか。
まず有名タレントをキャスティングするということで、ある程度リスクが発生する、ということは理解しておかなくてはいけません。
認知度がまだまだ低い商品やサービスの顔として有名タレントをCMに起用する場合は、有名タレントが商品やサービスの印象を担います。
そのため、有名タレントに不祥事があった場合は、商品やサービスの印象もそちらに引っ張られてしまうのです。
これを避けるためには、あまり知名度の高くないタレントさんを起用したり、イラスト制作などにしてタレントを起用しない、という手法もあります。
また、ターゲットを絞ってテレビCMを放送することはとても良いことですが、
男性向け、女性向けとすることによって、表現が不快なものになってしまいやすくなることもあります。
特に今はダイバーシティが求められる世の中ですから、どんな立場の人から見ても不快ではないか、ということを常に意識した方がいいですね。
その上で印象に残るCMを作らなくてはいけないですから、なかなか大変です。
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