テレビ番組のエンドクレジット(番組最後に流れる、番組制作に関わったスタッフたちの名前が役職名とともに流れるやつです)を見ていると、最後の方に「演出」という文字が出ますよね。
この演出というのはどのような仕事なのでしょうか?
そして、構成やディレクターといった他の仕事とはどのように違うのでしょうか?
テレビ制作における演出とは?
テレビ番組制作の現場では演出とディレクターはほぼ同じ仕事を指します。
ディレクターが演出という表記になることもあるんですね。
ただ、数人のディレクターが作ったVTRを全体を通して俯瞰的に見て、それを取りまとめ、修正をしたり、流れなどを指示したりする仕事をしているのが演出であることが多いです。
例えば1時間の番組でも、ロケをして撮影したコーナーのディレクターと、スタジオで出演者やMCと一緒に撮影する部分と、ディレクターが異なる、ということもあります。
ですが視聴者は一つの番組としてそれを見ているので、コーナーの内容とスタジオの内容でカラーが違うと違和感を感じます。
そこで必要になってくるのが演出の仕事、ということです。
番組全体のカラー、雰囲気などを調整してまとめあげるのが演出の仕事。
たとえばテロップの色味だって、全体で指定する人がいないと、それぞれのVTRでバラバラの雰囲気になってしまう、ということもあるわけです。
番組全体をまとめ上げるのが演出の仕事なんですね。
具体的な仕事内容としては、
- 企画
- 取材
- 編集
- ナレーション原案
- 音効さん(音楽を選ぶ人)への支持
- カメラ(現場による)
といったことをします。
ちなみに構成という仕事とは少し違って、
テレビ番組制作における構成は放送作家という仕事のクレジットであることが多いです。
この仕事は番組全体のおおまかな流れを決めたり、ナレーションの具体的な原稿を書く仕事です。
関連記事:構成作家と脚本家になるにはどんな方法がある?その違いは?
現場によって違う演出の呼び方
番組制作の現場ではディレクターと演出はほぼ同じ意味だけど、ディレクターが複数人入るような現場の場合は、演出がそれを最終的にまとめ上げて仕上げるのが仕事、とお話ししました。
クレジット表記では総合演出という言葉になることもあります。
これがドラマの現場になると「監督」という名前に変わります。
基本的には仕事は演出の仕事です。
見せたいものをどういう風に見せるか、ということが演出の仕事になります。
ドラマも番組によって全くカラーが異なりますよね。
例えば高視聴率を叩き出したことで有名な半沢直樹シリーズは、劇画タッチな演出というか、照明が過度に当てられ、役者さんの表情をドアップで映すようなシーンが多かったです。
通常であれば聞こえないような足音や指で机をトントンと鳴らす音などが後からつけられていて、これも映像の迫力を増長していました。
こういった演出をつけるのが監督の仕事。
これも結局どう見せるか、なので、現場がドラマに変わって呼び名が「演出」から「監督」に変わってる、というだけなんですね。
もちろん作っている作品が違いますから、演出の仕事でも、見せ方の種類というか、テクニックは変わってきますけどね。
ちなみにアニメの現場でも総監督という役職があります。
これも言ってみれば演出の仕事と同じで、最終的に作品のまとめをする人です。
- シナリオ
- 絵コンテ
- デザイン
- アフレコ
などなど、全部のチェックを行います。
入る現場によって演出の役職名も変わるということですね。
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演出の仕事の難しいところ
演出の仕事の難しいところは、自分の中でしっかりとした基準を持って、俯瞰的に番組の制作をまとめあげていかなくてはいけない、というところです。
しかし複数人のディレクターが関わっていて、そのディレクターたちが作ってきた映像が間違っていない。それもそれで表現の一つとして捉えるか、それとも修正にするか。
それを決めなくてはいけないというのがとても難しいところです。
もちろんディレクターが作ってきたものが明らかに修正した方が良いものであれば修正指示を出せば良いだけなのですが、
「これはこれでありだなぁ」というのがたくさんあるわけですね。
それをどこまで修正したらいいのか。
自分が手直しすることによってそのディレクターが作ってくる良いものを潰してしまう可能性だってあるわけです。
そしてそういった微妙な匙加減というのはどうにも言葉にして伝えるのは難しかったりもします。
かと言ってあまりにも修正指示を出さないと、修正に対して対応できないディレクターが育ってしまう。それもまた問題ですね。
つまり演出の仕事というのは、演出の仕事だけでなく、ディレクターを育てる仕事でもあるわけです。
言葉にするのは難しくても、なるべく説明して、若いディレクターたちがこれから活躍できるディレクターになるように指示出しをできるようにならなくてはいけません。
番組全体を取り仕切る演出というのはとても責任のある仕事なのです。