今回はニュース番組制作のテクニックを1つご紹介します。
”ON”という、いわゆる業界用語があるのですが、今日はニュース番組(原稿)の作り方の中でもその”ON”の使い方についてお話ししたいと思います。
ニュース原稿の構成
ニュース番組のONとは
ニュース番組の原稿は、アナウンサーやナレーターが読む「ナレーション」と、”ON”というもので構成されています。
“ON(オン)”とは“音(おと)”とか、“トリキリ”とも呼ばれます。
ナレーション以外の部分はすべて“ON”と言ってもいいでしょう。
たとえば
- インタビュー音声
- 記者のリポート
- ヘリコプターや車の走行音
- 電話着信音やアラーム音
- 鳥の鳴き声や雨風の音
これら全てがONになります。
基本的に、“ON”が随所にちりばめられたVTRは臨場感があり、魅力的だといわれています。
ナレーションで延々と説明されるだけのニュース番組では面白くないですもんね!
“ON”の使い方は3通りある

たった30秒にも満たない短いニュース番組の中でも、“ON“の使い方は様々です。
たとえば「昨日の夜、UFOの目撃情報が相次いだ」というニュース原稿を書くとします(あくまで例ですので、UFOの存在については気にしないでくださいね)。
次の3パターンの書き方があります。 (♪の部分がONです。)
【パターン①】ONを終わりに持ってくる
ナレーション「○○市役所によると、昨夜市内ではUFOの目撃情報が相次いだということです。私たちは目撃者のひとりに話を聞くことができました」
♪目撃者コメント「流れ星とは違う、不規則な動きをしていました。あれはきっとUFOですね」
【パターン②】ONを中に入れる
ナレーション「私たちは目撃者のひとりに話を聞くことができました。それは昨日の夜のこと…」
♪目撃者「流れ星とは違う、不規則な動きをしていました。あれはきっとUFOですね」
ナレーション「○○市役所によると市内ではこうしたUFOの目撃情報が相次いでいるということです」
【パターン③】ONを最初に持ってくる
♪目撃者「流れ星とは違う、不規則な動きをしていました。あれはきっとUFOですね」
ナレーション「こう話すのは、○○市に住む男性です。市役所によると、同様に昨夜UFOを目撃したとの情報が相次いでいるということです」
このように目撃者のインタビュー(ON)をどこで使うかによって、同じことを伝えていても、パターンの違う原稿が生まれるのです。
関連記事:テレビ業界の仕事を実際にしてみて感じたギャップを現役ADにインタビュー!
ニュース番組の作り方、「正解」はどれなのか?
実はニュース番組を作り方に正解はありません。
先ほどのONも3パターン挙げましたが、どれが正解、というわけではないのです。
ただ、個人的な見解を加えると、②のONを中に入れる作り方がが最も魅力的な原稿のように思います。
②は、ONを聞いてもらうための準備時間をちょっと稼いだ上で、なるべく早めにONを使うことでインタビュー内容の持つインパクトを大事にしていると思います。
①のONを終わりに持ってくる作り方は、魅力的かどうかはともかく、説明としてはとても親切です。
すべての前提を分かった上で目撃者の声を聞かせているんじゃないかと思います。
③は、ONから入るというトリッキーなパターンですね。
この時に気を付けなければならないのは、「前提がなく、いきなり聞いてもらって視聴者が理解できるONなのか?」ということです。
大事なインタビューを早めに聞いてもらいたいというのは良い心がけですが、見る人に理解されなかったらもったいないですよね。
この場合「UFO」という単語が初めてそのニュース番組のインタビューの中で出てきますので、「UFO」はテロップの色を変えるなど、視聴者の目がいく工夫をしたいところです。
番組の作り方は常に挑戦
今回は“ON”の置き位置を変えることで、ニュースの構成に彩りが出ることをお伝えしました。
ONの位置を変えるだけで驚くほど視聴者のそのニュース番組に対する印象は変わってきます。
テレビ制作サイドは常に、「こうやったらどう見えるのだろうか?どう聞こえるのだろうか?」ということを考えながら番組を作っているんです。
そこに正解はなく、毎度毎度試行錯誤の繰り返しです。
挑戦し続けているんですね。
ぜひそんなことも踏まえつつ、ニュース番組を見てみてください。
こちらもどうぞ テレビの街頭インタビューのコツ
