今回は、公正取引委員会は広告においてどのように関係してくるのか、また排除勧告などを受けないために、CM広告ではどのようなことに注意すればよいのかなどについて書いてみたいと思います。
公正取引委員会と広告の関係
公正取引委員会は、国の行政委員会の一つで独立して職務を遂行している機関です。
またその使命は
- 反競争的行為に対する厳正な対処
- 公正な競争環境の整備
- ビジネスの実態に即した適格な企業結合審査
- デジタル技術・経済理論を活用した機動的かつ効果的な事件審査
- 競争政策・独占禁止政策の意義について効果的な情報発信
- 規制官庁をはじめとする関係各当局との積極的な対話と連携
- 多国間の協力による競争政策の国際的収れんの推進
(公正取引委員会ホームページより)
のようになっていますが、
テレビCMをはじめとする広告に最も関連するところとしては「景品表示法」に関するものだと思います。
景品表示法というのは正式名称を「不当景品類及び不当表示防止法」と言い、
商品やサービスの品質、内容、価格等を偽り誇大表現をしたり景品類の過大提供等を防ぐことにより、消費者がより良い商品やサービスを自主的かつ合理的に選べる環境を守るための法律です。
テレビCMなどの広告では視聴者の目に留まるために大げさな表現や根拠のない効能などを使ってしまう場合があり、このような表現は場合によっては景品表示法に違反することになるので要注意なのです。
この景品表示法の管轄は消費者庁になっているのですが、違反に関する調査権限の委任をうけることで、公正取引委員会では調査をおこなったり、行政処分場合によっては刑事処分まで告発することができるという機関です。
とはいえ、実際には最初から公正取引委員会が出てくることは無く、最初は都道府県の指示や注意のみで、こちらの方が件数的には圧倒的に多く、年間数千件単位で、公正取引委員会までいってしまうのは年間数百件ほどと言われます。
さて、テレビCMの場合必ずCM内容の考査というものが入ります。
この考査では実際より誇大表現をしていないか、不当な表示をしていないか、根拠のない効能・効果を標榜していないかなど細かい表現のチェックが入りますが、これらは都道府県や消費者庁への申し立てや抗議、ひいては公正取引委員会の調査に及ぶようなことの無いように行われているという意味合いもあるのです。
近年のネット広告と公正取引委員会
近年ではネットによる通信販売という新規成長分野において景品表示法に抵触する問題が非常に多くなっています。
ネット上の販売、広告は急激に広まったために既存の広告のようなチェック機能が追い付かず、過大景品付きとなっていたり、不当表示や誇大表示が後を絶たない状況です。
特にネット上では製造者から消費者に直接販売するB to Cが容易で、中間に小売店や販売店を仲介せず直で売り買いができてしまいます。
またホームページ上で指示に従ってクリックしていくと商品を購入できる安易さもあるため、消費者自身が誇大広告に惑わされないよう注意しなければならないという現状があります。
その他ネット系販売の特徴として下記のことにも注意点が必要です。
- 送料についての明記、返品の可否などもきちんと伝えてあること
- 重要な情報がかかれているページに飛びやすいようにリンクには色文字や下線をつける。
- いつの情報なのかわかるように更新日付を入れる方が良い
- 毎月料金が発生するようなものについてはその旨明瞭に表記する
- ダウンロードが必要なものなどはOSやCPU.メモリ容量なども表示する
などのようにネットならではの注意点も多くあるので、広告を出す際には消費者の不利益にならないよう、また公正取引委員会の調査に至らないよう注意が必要です。
関連記事:CM考査が難しい内容のものはどうやって進めていく?
実際の例と注意点
広告を出す際は媒体で考査を行うケースが多いのですが、それでも都道府県や公正取引委員会の注意を受けたり場合によっては排除対象となるので、不当表示にあたるようないくつか例を一部ですが挙げておきたいと思います。
- セール品で12万円の商品を→48000円、60%オフとして販売しているなどしているが、実際には元値が12万のような商品は存在しなかったようなおとり的な販売方法。虚偽の対象価格を表示することで著しく安く思わせている。
- 「MAID IN JAPAN」としているが実際は異なる原産国である虚偽の表示。
- 一番人気がある、売れている、最も効果があるなどを根拠の数値がないのに広告などで標榜すること。
- 中古車などで走行距離の計器を操作することで実際よりも商品をよく見せるような行為。
- 食肉にあるようなブランド表記が間違っている、あるいは一部しか該当していないなどの虚偽的表現をしている。
- 落としても絶対割れない、あるいは割れないことを連想させるような誇大広告表現をすること。
- 中古の住宅物件において再建築不可にもかかわらずその旨正しい表示をしていない。あるいは土地の利用制限にかかわることを正しく表記していないなど。
- 賃貸物件の賃料等について、おとり的な賃料を表示。
- 化粧品、サプリメントなど飲むと治る。美しくなるのような表現も個人差があり表記するのはNG。
- 痩身にかかわる商品で、〇日で〇キロやせる。食事制限をすることなく痩せるかのように表示しているが実際には根拠がない。
- 予備校、進学塾等で合格者実績の数字を載せているが、他校と異なる方法で数値化するなど適正な比較をしていないのに実績NO1のような言葉を広告などで使うこと。
- 古紙パルプの割合が50%程度であるにも関わらず、100%のように素材原料の虚偽表記をする。
- ウィルス除去の効果があるとうたいながら実際には合理的な根拠を示す資料がなかった。
- 量的に他社の2倍、他社より多いなどのような表現をつかっているが比較対象がはっきりしておらず根拠がない。
など。
ほんの少しの例を挙げてみましたが、これらは簡単な言葉で言うと
「これはとても良い品物だと消費者に思わせて、実際にはそうではないような表示をしている」場合を言います。
また、合理的な根拠をあげるとしたらどのような調査や試験が有効であるかについては
関連する学術界または産業界において、一般的に認められた方法または関連分野の専門家が多数認める方法により実施する。
またはその方法が存在しない場合は社会通念上及び経験則上妥当と認められる方法で実施する必要があるといわれます。
その他専門家や専門家団体、専門機関の見解や学術文献を基準とする
なども判断基準といわれます。
実際には微妙な場合も少なからずあるため、テレビCM広告の場合などは局によって考査の見解に違いが出てくる場合もあるようです。
いずれにしてもこのような知識を踏まえて公正取引委員会が調査しなければならないような事態になることのないような広告を心がけていくことが大切でしょう。