今回は、かつて畑違いの仕事をされていた40代のディレクター・Tさんにインタビューしました。
全く違う仕事をされていたのに、テレビの世界に入ろうと思ったのはなぜなのでしょうか。
テレビの生放送の現場での苦労や楽しさについても伺いました。
それではTさんのお話をどうぞ。
20代最後で、テレビの仕事に転職
大学を卒業して7年間、セキュリティ機器の設置の仕事をしていました。家庭や企業をまわって、防犯設備を取り付ける仕事です。
大学ではマスコミのゼミを取っていたので、当時からテレビ番組制作には関心があったのですが、当時はいわゆる就活氷河期だったこともあり、タイミングが合いませんでした。
でも、29歳のとき、30歳になる前にもう一度、したいことにチャレンジしてみようと思ったんです。
それで心機一転、このテレビ業界に入りました。今年で15年になります。
実は全く違う仕事をしていてもテレビ業界に転職することは可能なんです。
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テレビ業界は29歳でのスタートは決して早くはなかったですし、AD仲間も自分より若い人が多かったんですが、年齢は関係ないと思っていました。
何歳で始めるにしても、学ばなきゃいけないことはあるわけですから、頑張って経験を積めばいいと思っていました。
録画番組から生放送へ
最初は、テレビの仕事の中でも完パケといわれる録画番組を担当していました。
その後、ニュースアシスタントの仕事に2年ほど携わり、テロップを発注したり送出したりという業務を担当しました。
生放送の現場に初めて足を踏み入れたときは、やっぱり大変だなと思いましたね。
台本がないですし、新しいニュースが入ってきたらすぐ対応しなければならないので。
あらかじめ用意していても生放送の番組だとすぐに差し替えないといけないこともたびたびです。
映像が準備できなくても、重大なニュースは速報で伝えなければなりません。
そういうときは、たとえば事故のニュースだったら、地図を用意するなどして対処します。
とにかくその頃は走っていましたね。
生放送なので時間との戦いです。
テロップの発注書を持って、報道フロアから、テロップを打ってくれる専門の人がいるフロアまで階段をかけあがって、かけおりることを繰り返していました。
夏はかなり大変でしたね(笑)
時間ぎりぎりだと、テロップの順番もバラバラになっていることがあるので、それをきちんと順番通りに揃えるなど、オペレーション的作業を担当したりもしました。
集中力も求められました。
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生放送のニュース現場での仕事
そのあと、自分で希望して報道のアシスタントディレクターの仕事に就きました。
タイムキーパー業務、キューシート(進行表)の制作、説明画像である静止画の発注など、ニュース全般に携わるADです。
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ニュースアシスタントに似たようなところもあるんですが、作業は増えましたし、自分の考えを反映することのできる場面も増えました。
生放送のニュース現場での仕事は演出の勉強になる仕事でしたね。2年半くらいやりました。
その次に気象センターに移ったのですが、今まで学んだことがとても役立っています。
原稿を書いて、撮影も編集も自分でしますしテロップも発注するので、今まで勉強したことの総括みたいな感じです。
気象情報は、生放送の番組内の中に入るかたちで1日に何度もオンエアがあるので、時間によっては卓(機械)の前に座って、オンエアのディレクターと同じように、画面切り替えなどの指示を出すこともあります。
テロップ出しの機械操作を自分でやったりもするので、ほんとうに今までの仕事をすべてやっているという感覚がありますね。
尺出しもします。
尺出しというのは、生放送で喋っている出演者に残り時間を教えることです。5、4、3、2、というように合図を出す仕事です。
気象予報士さんが外に出て生放送で中継するスタイルってどこの局にもあると思うんですが、そのときに予報士さんに向かってフリップや手で合図をします。
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生放送中継の舞台裏
テレビ局のマスコットキャラクターとか、幼稚園の子どもたちが生放送の中継に出演することがありますが、子どもを並ばせたりということも気象センターの人員の役目です。
テレビの生放送中継のための道具を運ぶこともします。
雨が降ったらテントを張ったりするなど、気象状況に応じての準備もします。中の仕事も、外での仕事もあるというわけです。
尺出しのときや、マスコットキャラクターや子どもを誘導しているときに、手や姿がテレビ画面に映ってしまうことが、ほんのたまにですがあります。
カメラをよけそびれてしまうんですが、あとで「さっき映ってたよ」って言われたことが数回あります。
テレビに映るはずのないものが映ったらやっぱりだめなので、まあ失敗と言えば失敗ですかね(笑)
雪とか台風とか、気になる気象情報があるときは、普段よりも解説の回数が増えます。
増えるかどうかは当日にならないとわかりません。回数を増やすことになっても、もしその日に突然大きなニュースなどが入ってきたら、再び変更になることもあります。
いつも通りオンエアに備えて外でずっと待っていたら「ニュースを入れることになったので(ここの気象情報は)なくなりました」と言われたこともあります。
その日にならないとわからない、テレビの生放送はそういうものだと思ってやっています。
テレビの生放送は、楽しい気持ちと緊張する気持ちが同じくらいですね。ミスをしないように、と毎日思っていますから。
完パケのテレビ番組も、作りこんでいくという楽しみがあるので、また機会があればじっくり時間をかけて作ってみたいと思っています。
インタビューを終えて
落ち着いた表情で、これまでのお仕事のこと、現在担当している生放送の職務内容を丁寧に教えてくださったTさん。自信は経験を積むことで培われるのだなとあらためて思いました。これからも身体に気を付けて、いいお仕事をなさってください!(ライター・K)