ロケハンはロケーションハンティングのこと。
映画やドラマではロケする場所を探すことを指しますが、テレビ番組では、ロケをスムーズに行うために、何をどう撮影するかを決めるために行います。
ロケハンの段取りもADさんの仕事。
ロケハンに同行するときには、その場を仕切るのもADさん。ロケハンはどんな流れで、どんなことを確認してるのでしょうか?
今回はバラエティ番組のグルメ企画についたADさんの仕事の流れと確認ポイントを追っていきましょう。
見出し
ロケハンのブッキング。何時に行くのがいい?
取材先の窓口としてやりとりするのはADさんの仕事。
さて、ロケハンのブッキング、何時に先方に時間をもらうのがいいのでしょうか?
飲食店ですと、ランチタイムが終わって、夜の仕込みをする間の休憩時間がねらい目。
その時間、お昼の2時前後で都合を聞きます。
この時間帯は「アイドルタイム」といって、通し営業でも空いている時間です。
ロケハンにかける時間は1時間程度を設定します。
関連記事:テレビ局で内定をもらって最初はアルバイト、新卒ADになった今の仕事内容をインタビューしてみた!
ロケハンに持っていくものと準備
ディレクターを取材先まで案内するので、店までの行き方を調べて、待ち合わせ場所を設定します。
たいていは、最寄り駅で待ち合わせします。
待ち合わせ場所から店へ案内できるように地図を印刷したり、地図アプリに目印を付けておきます。
先方の担当者の名前は憶えておき、当日遅れる可能性がありますから、連絡先をスマホに登録しておきます。
もっていくものは、名刺とメモを取るノートと仮払い。
仮払いというのは番組から預かる経費です。
交通費や試食の支払いに使います。
関連記事:ADの給料と仮払い、知っておきたいお金まわりのこと
待ち合わせの場所から店まで
待ち合わせの場所についたら、店までの道路や周りの環境に注意を払いながら歩いて行きます。
例えば…
- 交通量の多さ、渋滞しているところがないか。
- 工事しているところはないか。
- 近くに大きな病院や学校がないか。
ロケの時は車輛で移動しますので、車輛が停めやすいところなのか、そうではないのか?
ロケ中に騒音があるのか?などの目安になります。
大きな病院が近くにあると、救急車のサイレンが頻繁に聞こえてくるかもしれませんし、学校があるとチャイム音や子供たちの声があるかもしれません。
ロケのときに、起こるかもしれないトラブルの材料を拾って、ロケまでに対応したり準備をしておきます。
有名タレントをキャスティングしているなら、前の仕事場所がどこで、ここまでどうやって来るのか、ルートを確認しますし、どの場所に車を停めて、どう店まで歩かせるのか、もシミュレーションしておきます。
関連記事:街ブラロケって事前許可は取っているの?
お店に着いたらご挨拶後打ち合わせ
取材先に到着したら、それまで連絡をとっていたADさんが担当者とあいさつをします。
それから、ディレクターを紹介して、名刺交換です。
先方の担当者とディレクターが繋がったら、その先の打ち合わせはディレクターがリードしていきます。
では、打ち合わせ、スタート。
①番組の趣旨を伝える
はじめに、番組内容について説明します。
- 番組名
- 放送エリア
- 放送予定日
- 出演者
などの番組の基本的なことをここでもお伝えします。
電話で説明しているはずですが、そのときは聞き流していたり、他局の番組と勘違いしていた、なんていうことがあります。
②撮影内容
次は、撮影内容を固めていきます。グルメ企画なので、撮影する料理を決めます。
たいてい、食レポするメインの料理以外に、店の定番料理や特徴のある料理を紹介しますから、3〜4品になります。
撮影のときは、食レポをする料理は2食、紹介だけの料理は1食分が必要です。
試食はどの位置で、ディスプレーカットはどのテーブルで撮るのがいいのか、カメラマンがどう動くか、外の光や店舗のなかの照明の位置などから検討します。
ロケはロケ車輛で移動します。
タレントやメイクなどがそれぞれの車輛で来るなら、その台数分をお店に駐車場があるなら、お借りできるようにお願いします。
なければ、近くの駐車場を教えてもらって、そこも見ておきます。
関連記事:テレビ制作でDとADが苦手な仕事…3位精算、2位裏取り、1位は…?
③料理やお店の基本情報を確認
テロップやナレーションを入れるための基本情報を確認。
- 店名や料理名の正式名称
- 店長や料理人など出演していただく方のお名前
- データ的なあれこれ…例えば、お店の創業年、紹介するメニューの値段、いつから出しているか?、1日に出る個数、など
- エピソード…例えば、紹介する料理がどういうきっかけで誕生したのか?など。
- 料理に使われている材料など
調理シーンを撮影するなら、厨房も下見させてもらいます。
関連記事:ロケの仕事でADやDがミスしがちなこと
ADさんがメモすること
取材先の方が話したことはすべて書き取りますが、
- 店の周囲を観察して気づいたこと
- 店で気づいたこと
- 撮影で必要な機材や小道具、備品に関すること
例えば、窓が大きくて外光が入ってくるような店だと、反射や映り込みがあるかもしれません。
外光を遮断するための黒い布を用意しておく、とか、料理の照りを撮るために刷毛やスポイトを持っていく、撮影した料理を持ち帰るためのパックはこれくらい必要とか、気づいたことはすべて書いておきます。
ロケのスケジュールは時間を押してしまうもの。
時間短縮につながることはすべてロケまでにやっておく必要があります。
何をしておくべきか、後でディレクターと相談するために気づいたことはメモしておきます。
関連記事:ADさんにインタビュー!まずは自分から何かしてあげる
ロケハンのときにADは質問していい?
もちろん、ADさんが質問してもかまいません。
あれ?これってどういうことだろう?とか、これ、聞き間違いかな?と思ったことや知りたいことは、後で聞こうと思わずにその場で聞くようにします。
後回しにすると、忘れてしまうからです。
ADさんの質問は、意外な視点だったり、取材者から思わぬ回答が出てきたりします。
ディレクターが聞き忘れていることだってあります。
質問したからといって、ディレクターが気を悪くすることはありません。
関連記事:テレビ番組制作現場における新型コロナウイルスの影響についてインタビュー
告知に関する注意事項
最後に、番組からの注意を伝えます。
テレビに出るのは、お店にとって宣伝効果が期待できるもの。
店内やホームぺージで、「今度、〇〇(番組名)に出ます!」と告知したいかもしれません。でも、番組によってルールがあるはずなので、前もって伝えておきます。
たいていの場合は、放送日の1週間前くらい。次週予告が公式HPなどで出てから。
それも演出によって、どこまで次週予告するかどうかは番組の考えがあるはずなので、お店側にも理解していただく必要があります。
放送後に見逃し配信サービスで視聴できる番組もありますから、どこで、いつまで視聴できるのか、もお伝えしておきます。
こうした通達は、言い洩らしたり、先方が聞き洩らすこともあるので、書面で渡しておきます。書面のフォーマットは番組で作っていることでしょう。
同時間帯の放送かぶりを回避するため、他番組から取材が入っているかどうか、放送の予定がないかどうかも聞いておきます。もし、他番組から取材依頼が入ったら、その情報を共有させてもらえるようにお願いしておきます。
試食は必ずしておく
メインで取り上げる料理は必ず、いただきます。
料理を見て味わって、どんな味なのか知っておく必要があります。
出演者が食レポをするときに、表現に困るタレントさんもいます。
そういうときに、こんな食感だった、こんな風味がした、とヒントを提供することがあります。
試食するときは、営業時間中に食事をして、そのあと打ち合わせをする、という流れにします。
目当ての料理がディナーの時間に出しているのであれば、打ち合わせをして試食、の流れです。
関連記事:ADの仕事でつらいと思うこと、悩みをインタビュー!
ロケハンから戻ったら
ロケハンから戻ったら、
- 下取材の電話リサーチで聞いた報告書と照らし合わせて、違っていたところは修正
- 新たな情報は加筆して報告書を更新
- 仮払いで使った交通費の経路と金額、試食した領収書は残った仮払いと一緒にまとめる
預かった金額=領収書+残った金額 にしておくと、何に使ったかわからない使途不明金が出ません。
以上のことは、ロケハンその日のうちに片づけておきます。
時間にすれば1時間程度の作業ですが、後日に後回しすると、メモを探したり、思い出すのに倍の時間を要します。
ディレクターと相談しながら、ロケスケジュールを作成して、取材先や技術会社、出演者に配布します。
ロケの前日には、取材先に電話をして、時間や撮影内容について最終の確認をしておきましょう。これでロケの準備が完了です。
今回はロケハンをメインに、ロケまでにADさんがやっていることを書いてみました。
たくさんあるように思えますが、慣れてしまえば、観察力が備わり、意識せずにできるようになります。
関連記事:テレビ業界で働き始めて2ヶ月!ADさんにお仕事インタビューしてみた!