テレビ番組制作の現場ではスタンドインというお仕事があります。
キャスティング業界やメディア業界で使われる言葉ですが、あまり一般的には耳馴染みがない言葉だと思います。
今回はスタンドインのお仕事について、テレビ局出向型の番組制作会社である弊社ライズプランニングが解説してみます。
スタンドインは演者の代わり
スタッフさんの首から下がっている紙には演者さん(番組に出演するタレントさん・役者さん)の名前が書いてあります。
スタンドインのお仕事はこのように、番組制作の現場でタレントさんや役者さんの代理をするお仕事です。
基本的にはその番組制作に入っているアシスタントディレクターがやることが多いお仕事かなと思います。
テレビ番組制作の現場では「いきなり本番撮影」ということはありません。
本番を行う前にさまざまなリハーサルが行われて、「これで大丈夫!こういう撮り方をしよう!」というプランニングをします。
このリハーサルにはかなりの時間がかかるので、演者さんの負担を軽減するために、背丈や雰囲気が似ているスタッフがテスト撮影を行うんですね。
テレビ番組制作の現場だけでなく、CM撮影やPV撮影、映画撮影などさまざまなメディア撮影の現場でスタンドインのお仕事が必要となります。
弊社の制作番組ですと情報・報道番組が多いので、現場のアシスタントディレクターがスタンドインを行うことが多いですが、
例えばダンサースタンドインといってダンスができることが条件のスタンドインもあります。
これはアイドルグループのダンスパフォーマンスがあるメディアの撮影案件ですね。事前に振り付け動画を覚えてもらって撮影に行ったり、現場で当日振付師さんから振り渡し(振り付けを教わること)があることもあります。
中にはカメラテストのために体格が似た人、髪型が似てる人をスタンドインとして起用することもあり、ギャランティが発生するものもあります。
モデルのスタンドインのお仕事なんかは1日あたり1.5万円〜2万円程度が相場です。
撮影前の「位置決め」
ではスタンドインの仕事がどうして必要なのか、もう少し詳しく解説してみたいと思います。
まずスタンドインが必要になってくるのが「位置決め」の作業の時。
これはリハーサルをやる前に、セットや人の位置を決める作業です。
撮影現場にはカメラが複数台ありますので、どの位置のカメラがどの人やモノを撮るか、ということを決めていきます。
番組内では人やモノが移動することもありますので、カメラから見てどの方向にどれくらい移動させるか、といったことも決めていきます。
これを予め決めておくことで、移動の動きがあっても、カメラがそれを追えるようになります。
予測不能の場所に動かれるとカメラで追えなくなり、特に生放送では視聴者にとって分かりにくい映像になってしまったりします。
立ち位置などに場ミリと言われる目標をテープでつけていったりします。
弊社の場合は情報・報道番組の制作がメインで、そのほとんどが生放送です。
生放送ではこういった事前の準備がとても重要になります。
これらの準備が入念に行われているからこそ、リアルタイムで放送しても視聴者にとってわかりやすい映像でお届けできるようになっているんですね。
逆を言えば、この準備がしっかり行われていないと、放送事故に繋がりかねません。
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段取りを確認するための場当たり
位置決めと似ているのですが「場当たり」という作業もあります。
これは出演者の立ち位置や転換のタイミング、段取りなどを確認する作業で、きっかけの確認をするものになります。
この場当たりでもスタンドインの仕事が発生しますね。
カメラに実際に映してみて確認するので背格好が似た人が求められることがあります。
例えばバストアップの撮影を予定していて、170センチの人の撮影なのにスタンドインの人が150センチだったら映す場所が変わってくるのです。
スタンドインではきちんとバストアップで映っていたはずなのに、実際の演者さんがきたら顔が切れてしまって胴体だけが映っていた…なんてことになりかねません。
実際の演者さんよりも背丈が高い方がスタンドインで入る時は、足を開いて背の高さを合わせたりすることもあります。
この視点で是非一度テレビ番組を見てみてください。
カメラのパンが綺麗に動いて特定の人を追いかけていたり、演者の手元を映していたところから、全体を映す画角に切り替わって全体の演者の動きが見やすくなったり…
といったカメラの動きがあり、それらは全て計算されているのです。
朝〜お昼の情報番組でも、よくよく見ているとコーナーが始まったら演者さんが決められた位置に移動していたり、自然に見えるように動いているのがよくわかります。
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