テレビ業界の裏話 PR

ディレクターの仕事、TK(タイムキーパー)から始まった

記事内に商品プロモーションを含む場合があります

こんにちは。

北海道のテレビ局でディレクターをしているSです。

最初からディレクターだったわけでは、もちろんなく、

AD、そしてタイムキーパーからスタートしました。

その頃のことを書いてみたいと思います。

男のTK(タイムキーパー)

タイムキーパー(TK)とは、

言葉のとおり、時間を管理する仕事だ。

番組にはCMが入ったり、

VTRが入ったりするから、

時間を管理する人はとても重要だ。

ただ、TKは女性が多い。

というか、

全国でも男性のTKは、あまりいないと思う。

なぜ女性が多いのか。

TKは「あと何分!」など、声を出す仕事でもあるので、

女性の高い声の方が聞こえやすいから、

と言われている。

つまり私が「残り何分です!」と声を出しても

「アッ? 何?」となってしまったりすることがあるのだ。

なぜ男の、

しかも制作ディレクター志望の私が、

TKをやることになったかというと、

単純に、入社した会社が、

TKが足りない状況だったからだ。

だからADとTKを、兼務という感じで

とりあえずやってみることにした。

関連記事:

TKとはどんな仕事なのか

3か月はみっちり練習した。

そのあとは先輩のTKと、

交代で朝の番組や特番を担当した。

TKといっても、ストップウォッチで、

時間を計算するだけではない。

番組の進行表も作らなければならないし、

音響効果を担当することもあった。

生放送の番組でBGMを流したり、

ショッピング番組でよく聞く、

「ジャン!」とか「キラリン!」といった

効果音を出す作業も担当したりする。

これらは、朝、台本を見て音を選び、

その音を機器に登録して、

本番の時に、タイミングを合わせて出すわけだが……

関連記事:テレビ業界、ADの採用状況とは

 TKはつらいよ

たとえば、出演者のコメントに合わせて

「ジャン!」を出す予定になっていても、

なにかアドリブが入ったりすると、

「あ、今出していいかな?」と、

一瞬迷ってしまったりする。

その迷いが遅れにつながる。

ヘンな間で「ジャン!」

……テレビは、間が大切だ。

まずいタイミングでの効果音は、

完全に放送事故だ。

あとから出演者に謝ったりすることもよくあった。

gakkari_tameiki_man

また、VTRの頭出し

(番組中にすぐ再生できるように準備しておくこと)をして、

決められた時間にスタートボタンを押し、

それと同時に、

ストップウォッチも押さなきゃならないのに、

うっかり忘れてしまったこともある。

その時は幸い、フロアディレクター(生放送で現場の進行を見る人)が、

カウントしてくれていたから助かったが……。

他にも、

エンディングテーマを流すタイミングを間違えて、

番組が残り数秒というところで、

音楽が終わってしまったこともある。

失敗するとフロアディレクターや、

担当ディレクターに怒られる。

なぜならディレクターたちが、寝ずに考えた進行を、

単純なミスで台無しにしてしまうのだから。

関連記事:テレビ番組制作会社への転職をお考えの方へ

TKの仕事は責任重大

今から思えば、TKで学んだことは、

ディレクターの仕事においても、

役に立っていることがたくさんある。

たとえば、

毎日、CDを聴きまくっていたおかげで、

色々な曲を知ることができたし、

自分の中にストックが貯まったため、

このVTRにはあの曲が使えるな、という風に、

思いつくこともできるようになった。

でも……

「ひとつのミスが放送事故につながる」

というプレッシャーは

毎日感じていた。

生放送だから仕方がない。

TKは、生放送の現場では、

最も責任重大なポジションとも言える。

その責任感に、

正直、毎日つぶされそうだった。

それでも2年ほどはTKの仕事を続けた……

関連記事:テレビ番組ロケの現場はどんな雰囲気?同行の際、注意する事とは?

TKからディレクターへ

さて……

TK(タイムキーパー)を2年続けた私は、

プレッシャーもあって、すこし腐りかけていた。

そんなとき、

当時のプロデュサーや、上司のディレクターが、

状況を考慮してくれ、

TKの仕事と併せて、

取材や編集なども担当させてくれた。

初めて、やりたい仕事をやっている、

という気持ちになれた。

TK業務を後輩に引き継ぐまでは、

毎日遅くまでの作業になった。

でも、全然苦ではなかった。

関連記事:テレビ局への転職は未経験でも大丈夫なのか

TKをやってよかった

今思えば、

TKは大変だったけれど、

我慢して続けてよかった。

TKを経験したことで、

今ではたいていの仕事が、

我慢できるようになった気がするのだ。

関連記事:テレビスタッフが教えるカメラの選び方

映画の紹介番組へ

3年目から、映画の紹介番組に、

ディレクターとして加わることができた。

映画はもともと大好きだったので、

これほど嬉しい仕事もなかった。

新作をいち早く、試写会で見られるだけでなく、

俳優さんや監督さんとお会いすることもできる

レポーターやアナウンサーがいない時は

インタビューを担当したりもする。

大学を出て3年足らずの若造が、

大物監督やベテラン俳優に、いっちょ前にインタビューするのだ──。

数か月前までは、

TK業務の緊張感に縛られていたADが、

俳優と話している……!

すごい世界だと思った。

毎回違う作品に出会えるので、

モチベーションが下がるということはなかったが、

たいてい試写会は、18時以降に始まるので、

早朝ロケや、徹夜で迎えた日の試写会は、

眠気との戦いでもあった。

関連記事:テレビ局の中で、違う部署のロケに参加したら担当が変わった話

映画の紹介番組が与えてくれたもの

映画の紹介番組は、

いわゆるパブリシティと言われ

営業の方や代理店さんなど、

外の業者・他の部署の人との関わりが多いが、

ひとりでもくもくと仕事をするよりも、

いろんな人に会って話をするのは、

自分の性分に合っていた。

人脈が広がっていくのも、非常に貴重だった。

そしてなにより、

テレビの仕事をするうえで、

映像を作るプロである、

映画監督という職業の方々と、

会って、話ができたということは

自分にとって大きな収穫だった。

そういった意味でも、

この仕事をやらせてもらえて、本当にありがたかったと、今思う。

関連記事:テレビスタジオのセットはどのようにして出来上がるのか

映画紹介番組のディレクターに

3年目から映画の紹介番組に、

ディレクターとして加わることができた。

肩書はディレクターだったがまだまだ仕事はAD兼務。

映画はもともと大好きだから楽しかった。

試写会に行ったり、映画を編集したり、

そしてなにより

俳優さんや監督さんと直接お会いすることができる。

レポーターやアナウンサーがいない時は

自分で俳優さんにインタビューすることも少なくない。

大学をでて3年たらずの若造が、

大物監督やベテラン俳優の前

いっちょ前にインタビューできるのだ。

なかなかできないことだし、本当にうれしかった。

数か月前までは

TK業務の緊張感と

毎日のローテションに腐っていたADが

今は俳優と話しているのだ。

すごい世界だと思った。

どんな仕事でも、

毎日やっていると飽きるということがあるが、

この場合は映画を見るのも仕事、

様々な映画を見るので

モチベーションが上がる。

たいてい試写会は、18時過ぎとか

毎日の仕事が終わってから始まるので

朝からロケや徹夜で迎えた日の試写会は、

眠気との戦いでもあった。

関連記事:ADに転職したい、という人が考えるべきこと

映画紹介番組で人脈も広がった

映画の紹介番組はいわゆるパブリシティと言われ

営業さん・代理店さんなど、

外の業者・他の部署の人との関わりが多い。

私は他部署やほかの方と関わる仕事が好きなので、

合っていたと思う。

みんなで話しあったり打ち合わせしたり、

ひとりでもくもくとする仕事よりもずっと楽しい。

人脈が広がったのも、当時の自分には非常に貴重だった。

そしてなによりテレビが好きでこの業界に入ったのだから

テレビに出ている人たちや、

それを作る監督と会うのが一つの目標でもあった。

そういった意味でも映画番組が担当できて、

本当に良かった。

関連記事:テレビの仕事に就くなら東京か地方のどちらがいいか

テレビ局によって特徴がある

映画番組やパブの番組をしているときは

見せ方などをプロデューサーとワイワイ話しながら

少しでもおもしろく見せるように、

色々話し合って工夫した。

朝の情報番組ではスタッフ同士でどうやって見せるかなど

毎日放送終わりに反省会とともに楽しくいろいろ考え、

下の者も同等に意見をした。

そういう、スタッフがやりやすい環境が、

番組によってはある。

これはまた、上が変われば変わるし、色々ある。

自分はのんびりマイペースな方なので

VTRを完成させるまで、

スパン(時間)が長いほうが合っていた。

いままで3局ほどでしか働いたことはないが

局や番組によってやり方は全然違う

関連記事:多くの人が憧れるバラエティ番組の制作ってどんな仕事?

局が変われば、求められるものも変わる

ある局ではバリバリ仕事をして評価されていた先輩が

違う局で働いたときに、

ケチョンケチョンにダメ出しされ

凹んでいる姿も何度も見た。

憧れている先輩が自信喪失している姿は

なかなか衝撃的だった。

職場が変わると評価は本当に違うし、

求められているものも変わる

私が移ったテレビ局でも、

仕事内容は同じでも、

作業の進め方や、

求められるものの差が大きすぎてとまどった。

ある局では、

編集からテロップ入れまで、

一人で最後まで時間をかけてするのだが、

別の局では、

取材をして編集はそこそこ、最後は編集マン。

何人かで分断して編集する場合もある。

後者の局に入り、慣れるまで

V(VTR)を作るスパンが短かったので

まるで突貫工事のように仕事して、

満足できるものができずに放送することばかりだった。

だけどそれから何年も経てば、自然と慣れる。

そこのやり方に慣れれば、

自分なりのローテも組めるようになる。

また、みんなで、

一気に仕事をするという作業内容も、

人によっては合うのかもしれない。

関連記事:バラエティ番組制作のバイトの面白さ

編集のやり方はいろいろ

報道色の強い職場では

VTR撮影してきたものを、

一語一句キャプション(説明、短い見出し)セリフなど、

全部書きおこす場合がある。

これは本当に単純作業だが、時間だけはかかる。

今までしたことがなかったので、

このスタイルには衝撃を受けた。

しかしこのキャプションがあれば、

デスクにチェックしてもらい、修正する場合にとても効率的だ。

キャプションを見て、並べ替えれば済む。

キャプションがなければ、

記憶の範囲で文言やシーンを並べ替えなければならない。

これも編集に慣れたり、任されたりするようになると

さほどキャプションは必要なくなる。

どこの局でもいろいろやり方があるので、

制作会社で働く場合は、

柔軟にできるほうが

早くチームの力になれると思う。

わからないことは年下であっても、聞いた方がいい。

(北海道情報ディレクター)

関連記事:ディレクターがADに求めていること

ABOUT ME
kitamura
主にインタビューを担当。テレビ番組制作の現場で頑張っている人たちの生の声をお届けします。


LINE@」からテレビ業界に関する質問を受け付けています。

友だち追加







    テレビ業界への転職を検討している新卒でテレビ業界へ就職したいテレビ業界に関するご質問全般