最近、中学生・高校生からのご質問で、「将来、テレビ制作の仕事って大丈夫なんですか?」と聞かれます。
テレビ業界に将来性はあるのでしょうか?
実際のテレビ業界で働きながら感じていることをお話ししてみたいと思います。
テレビが見られなくなっている不安の声
テレビを見る人が少なくなっているから仕事がなくなるんじゃないか?と危惧している人は多いですよね。
「テレビが見られなくなっているってお母さんが言っていた。」
「そういえば友人たちもテレビを見ずに、YouTubeや動画配信を見ている。」
「先生たちも今ある仕事の半分はなくなるって言っている。」
「自分はテレビを見ているしテレビが好きだから、将来アシスタントディレクターをやって、ディレクターになって、番組制作をしていきたい。」
「でもテレビ番組が廃れてテレビ局がなくなったら、仕事もなくなるのではないか?」
「ディレクターになれたとしてもテレビ局がなくなったら、失業するんじゃないか?」
「自分が大人になったときテレビ制作の仕事はもうないんじゃないか。」
そう心配している人が多いです。
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テレビは見ていないけれど、テレビ番組は見ている
独り暮らしの人たち、大学生や若い社会人の方たちで家にテレビがないという人たちが増えています。
映像はネットで見ている、スマホやパソコンで見ているという人たち。
テレビは場所をとるし、値段が高いので購入しない人もいます。
その人たちにどんな映像を見ているのか聞いてみますと、地上波で放送していたドラマのタイトルや、バラエティ番組名をあげていきます。
それは番組じゃないの?テレビ、見てるじゃない?と指摘しますと、
「でもテレビでは見てなくって、スマホかパソコンで見ているからテレビは見てません。」と言います。
スマホかパソコンで見れる動画はYouTubeなど個人が発信している、誰もが見れる動画もありますが、オンラインの動画配信サービスがあります。
例えば、
- Hulu(フールー)
- ネットフリックス
- アマゾンプライムビデオ
- dTV
- パラビ
- FOD(フジテレビオンデマンド)
- テレビ東京オンデマンド
など、動画配信サービスは30近くもあります。
月額いくらかを支払って、オリジナル作品や映画、バラエティ、番組が見放題になるのですが、
この動画配信サービスではテレビ番組が見られるのもあります。
また動画配信サービスの株主や運営会社がテレビ局というサービスもあります。
Huluはもともとアメリカの会社ですが、日本での配信事業は2014年に日本テレビが買収していて、現在は日テレの完全子会社であるHJホールディングス合同会社(現・HJホールディングス株式会社)へHuluの日本向けサービスの権利義務を承継しています。
Huluを契約していれば日本テレビで放送されたドラマやバラエティ、アニメを見ることができるようになっています。
同じように、FODはフジテレビ系、テレビ東京オンデマンドはテレビ東京の番組が見ることができるのです。
パラビはTBSとテレビ東京など複数の会社による新会社が運営していて、TBSやテレビ東京のドラマやバラエティ番組を見ることができます。
ネットフリックスやアマゾン、dTVでも限定されていますが、テレビで放送された番組が見られるものもあります。
これはどういうことかというと、テレビでの放送が先行で、オンデマンドは後追いで番組を見ることができる、テレビで放送した番組を二次使用しているということなんです。
テレビ局がテレビ離れが加速している層や、テレビを所有しない層に向けてのサービスなんですね。
つまりみなさんが見ている動画配信サービスのなかに、テレビ局が制作したテレビ番組が含まれているのです。
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テレビ番組はどこが制作してどこから発信しているのか
テレビ番組はテレビ局が制作しています。
そしてテレビ番組はテレビ局が放送しています。
実際に制作しているのはテレビ局が委託しているテレビ番組制作会社です。
放送されているテレビ番組の9割以上は制作会社がつくっているのです。
テレビ番組制作のディレクターのほとんどはテレビ局員ではなく、番組制作会社の社員かフリーランス。
つまりテレビ局を仲介にして、テレビ番組制作会社が制作した番組はテレビ局から放送され、動画配信サービスから配信されている、ということなんですね。
テレビ局も変化し、成長している
動画配信サービスの会社のホームぺージをみますと、「会社概要」というところがあります。
ここを見るとどんな会社が運営しているのかがわかります。
上にも書きましたように、Huluの日本事業は日本テレビや日本テレビ系の準キー局や、東宝などが運営していますし、パラビはTBSとテレビ東京、大手広告代理店などのメディア会社が運営しています。
このようにテレビ局はほかの局やネット系のプラットフォームの会社と組んだり、協業で繋がったりしながら、新しい視聴者層を開拓していったり
テレビを所有しなくてもアプローチして、テレビという概念がなくとも番組を見てもらえるように、従来のテレビの姿にこだわらず変容していっていると考えられます。
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番組制作はなくならない
結局放送される場所やテレビという形は変容していくかもしれませんが、そこで流す番組や作品は常に作り続けなくてはなりません。
テレビ番組制作の仕事は、これから先も求められるでしょう。
極端ではありますが、番組制作という仕事がなくなったとしても映像制作は残ります。
番組制作というのは、映像制作のスキルだけではなくて、番組を作り続けないと身につかない能力も必要です。
編集作業はこれからAIができるようになるのでは、とも言われているそうですが、A+B+Cの情報を組み立ててということはオーダーできるでしょう。
しかしAという情報をどういうふうに表現するのか、誰に向けて発信するのか、誰を主体にするのか、を統合してどうやって撮影するのかを考えるのは人です。
AIはおもしろい映像を寄せ集めることはできるでしょうが、それで肝心な情報が伝わるのか、
そもそもそれらの映像は使用していいのかどうか、はまだまだ人がやるべき範疇だと思います。
テレビ業界の将来性を心配する声もありますが、プラットフォームや形は変わっていくものの、コンテンツ作りの現場では人の手が必要であるということはこれから先も変わらないことなのではないでしょうか。
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