秋も深まってきました。
テレビ番組制作をしたい!と思っている学生さんたちは、テレビ局への就職活動をスタートさせていることでしょう。
テレビ局がダメだったら、制作会社を受けよう!と考えている方もいるそうです。
ネット動画を見て育ったZ世代がテレビに魅力を感じ、面白くしてやろう!と思っている人がいることにテレビメディアの可能性を感じます。
さて、ほとんどの方が「テレビ局がダメだったら、制作会社へ」と、皆さん序列をわきまえているようです。
テレビ局でも番組制作会社でも、「番組をつくりたい!」というのがきっかけ。
では、その序列とは?その違いとは、どこにあるのでしょうか。
今回は、テレビ局と番組制作会社の関係について解説します。
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テレビ局が誕生した時代と当時の番組制作
テレビメディアが誕生したのは、1953年のこと。当時は生放送で、ニュース、ドラマ、料理、スポーツ、クイズやゲームのプログラムがありました。
制作していたのは、もちろんテレビ局です。このころは、撮影機材と録音機材と放送するための機材が大きかったので、撮影はスタジオの中と限定的でした。
スタジオのなかのカメラや録音機を動かすのに、人材が4人5人と必要だったのが、だんだんと軽量化され2人(それでも2人がかりです!)で収録が可能となって、スタジオの外で撮影できるようになりました。
撮影可動域が広がっていきます。そのため、皇太子の成婚パレードやあさま山荘事件など歴史的なイベントや事件が生放送することができ、視聴者はリアルタイムで見ることができたのです。
歴史的瞬間を目撃できる、とテレビにくぎ付けになりました。白黒からカラーテレビになり、家に1台テレビがある時代へとなります。
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テレビカメラが自由に動く時代
カメラがもっと自由に動かせるようになると、イベントや事件の様子を撮影するだけではなく、現場で取材することが可能となっていきます。
当事者たちにカメラを向けて、彼らの声を聞き取ることができるようになりました。声だけではなく、彼らの背景、そして感情も画面に映し出されるようになります。
そうすると番組制作者たちに悩みが生じます。
例えば、国家的なプロジェクトに反対する地域住民、というニュースの場合、プロジェクト側から地域住民を取り上げると、地域住民たちはプロジェクトを邪魔する人たち、となります。
しかし、地域住民側からプロジェクトを取り上げると、代々その土地に住んでいた人たちの歴史や礎が破壊される国の行為となります。取材をするディレクターは、視点をどちらにするべきなのか。視聴者に知ってほしいのはどこにある事実なのか、に悩むことになるのです。
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テレビ局と制作者の溝
テレビ局と制作をするプロデューサーやディレクターの意向が違えば、テレビ局はPやDを現場から外す、移動させることが起きました。
テレビ局と制作者との考えの相違が埋められないと感じたとき、番組のプロデューサーやディレクターはテレビ局を辞めて、自分たちの考えに基づいて制作できる番組制作会社を立ち上げ始めます。
それがテレビ番組制作会社のはじまりで、それは1970年ころのことでした。
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延びる放送時間・増えるチャンネル
もっと自由に番組を作りたい、自分たちの考えを反映させたい、制作の幅を広げたい、とテレビ局から独立して、自身の制作会社を設立したり、転職したりする人たちが出てきて、制作会社は増えていきます。
時代はバブルに突入し、人々は寝る間を惜しんで働き、遊びました。
帰宅時間が遅くなり、放送時間が長くなります。
スポンサーである企業も広告費としてCMを大量にだしました。さらにBS放送、CS放送とチャンネル数も増えて番組数がどんどん増えていったのも、制作会社が増える要因でした。
制作会社が増加するプロセスにおいて、テレビ局制作 対 制作会社の制作の比率は逆転していき、今では、テレビ局制作は全体の10パーセント以下です。テレビ番組制作をしたいという理由でテレビ局を狙っていても、制作枠の採用人数はごくわずか。狭き門となっています。
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番組をつくるのは制作会社、では、テレビ局は何をしている?
テレビ番組の制作はテレビ局で行われてきましたが、番組制作会社へ委託されるようになり、テレビ番組制作にかかわるテレビ局員は番組制作会社のスタッフと比較するとごくわずか。
朝の情報ワイド番組も、ゴールデンタイムの1時間のバラエティ番組も、エンドロールに流れるスタッフは100人を越えますが、局員は演出やチーフプロデューサー、広報などの5名ほど。
テレビ局は何をしているのでしょうか。
制作されたテレビ番組を放送する
テレビ番組は制作されただけでは見ることができません。
電波にのせて放送されなければ視聴者に見てもらうことができないのです。
その放送システムは大きな設備を要します。
制作された番組を見てもらうために放送する、ことがテレビ局の役割です。
テレビ局の事業内容を見てみると、『基幹放送事業および一般放送事業、メディア事業』と書かれていたりします。あくまでも、メインは『放送』なのです。
テレビ番組を制作するために、制作費を集める
テレビ番組制作は多額の費用がかかります。その費用を集めるのもテレビ局の仕事です。
企業にCMを出してもらったり、イベントを開催して集客したり、施設を作ったりと、テレビ以外の事業を展開しています。
制作費だけではなく、放送の設備やシステムの管理や維持費にも費用がかかります。
制作し放送する費用を集めるのもテレビ局です。
視聴者が見たい番組を提供できるように、企画の方針を決める。
視聴者が見たい面白い番組を作るのは番組制作会社の手腕によるものですが、こういう番組が見たいだろうというコンセプトを決めるのはテレビ局です。
放送時間帯や視聴者の属性を割り出して、そこに見合った企画の骨幹をつくります。企画はどうやって発注されるのか、は様々なパターンがあります。
例えば…
- テレビ局が番組制作会社へ募集をかける
- テレビ局が特定の制作会社へ、発注をかける
- 番組制作会社がテレビ局へ売り込む
などなど。
関連記事:採用されやすいテレビ番組の企画はどのように考えるのか
テレビを持っていない人にも、番組が届けられる仕組みをつくる。
ひとり暮らしを始めるにあたって、かつてはテレビはマスト家電でしたが、今はそうではありません。
テレビを所有していない人、テレビ視聴が習慣化されていない人でも、テレビ番組を見てもらえるような仕組みをつくることが今、大きな課題となっています。
テレビ番組はテレビ局にとって、ひとつのコンテンツです。そのコンテンツを作るのが番組制作会社。そして、コンテンツをどう動かしていくのかを考えるのがテレビ局なのです。
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