テレビ番組にはCMがあるもの、というイメージがあると思いますが、
NHKにはCMがありません。
日本のテレビ局はNHKとそれ以外のテレビ局との間に大きな違いがあるのです。
今回はテレビ局の仕組みについて、NHKにどうしてCMがないのか、という観点から解説をしてみたいと思います。
NHKは公共放送で、CMは禁止されている
まず、NHKは公共放送、という放送になります。
NHKは日本放送協会の略称で、その設立目的は放送法により以下のように定められています。
「公共の福祉のために、あまねく日本全国で受信できるように豊かで、且つ良い放送番組による国内基幹放送を行うと同時に放送およびその受信の進歩発達に必要な業務を行い、合わせて国際放送および協会国際衛星放送を行うこと」(法15条、定款3条)
たまにNHKを「国営放送」と思っている方がいますが、
実は国営放送と公共放送は厳密に言うと違うものです。
国営放送というのは国が直接運営をし、国費を財源として番組作りをしている放送を指します。
公共放送であるNHKは受信者から受信料を徴収することによって運営を行っています。
「政治的公平」「対立する論点の多角的明確化」など法4条が求める放送を行うことが義務付けられており、受信料収入に比べると少額ではありますが国際放送を行うことで日本国政府からの交付金も出ています。
ちなみに朝日新聞DIGITALの記事によるとNHKの受信料収入は年間で7千億を超えているようです。
もう兆が見えるほどの収入なのだ、と考えると本当にすごい規模ですよね。
このような仕組みがあるのもあって、NHKは放送法でCMを行うことが禁止されています。
ただ、自局の番組宣伝やACジャパンとのタイアップなど、公共広告などは任意で流すことができることになっています。
ちなみに公共放送だからCMができない、というわけではなく
- フランス
- アメリカ
- 韓国
- ドイツ
などの公共放送はCMをして広告収入を得ることが認められています。
日本の公共放送であるNHKが広告収入を得ることを禁止されているのは、放送法で定められているからなんですね。
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民法はスポンサー収入で成り立っている
公共放送であるNHKとは違い、それ以外のテレビ局は民法と呼ばれ、NHKとビジネスモデルも全く違います。
受信料を徴収して運営を行っているNHKに対し、
民法と呼ばれる一般的なテレビ局は広告収入によって成り立っています。
企業が番組のスポンサーになることによって、番組と番組の間や番組の放送途中に企業のCMが流れるようになっています。
スポンサー料として企業側からテレビ局に支払われた料金が、番組制作やテレビ局の運営にかかるお金に当てられている、という図式ですね。
テレビ視聴者からすると、「テレビCMは番組の流れを止めてしまう邪魔なもの」という認識があるかもしれませんが、
そのCMがあるからこそ番組は作れるわけです。
だからこそ、番組側もスポンサーを獲得するのに必死です。
視聴率が良い番組を作れば、それだけスポンサーになりたいと思ってくれる企業が増えますから、数字を獲得することを常に意識して番組作りが行われています。
スポンサーへの配慮もいろいろ行われています。
例えば同一番組に競合他社がスポンサーとして入るようなことがないように「競合排除」というルールがあります。
例えば洗剤を販売しているA社とB社があったら、
同じ番組のスポンサーにA社とB社が同時に入ることは有りえなくて、つまりその番組CM枠にA社のCMが流れていたら、B社のCMが流れることはない、ということですね。
スポンサーの狙いは、CMを見てくれた人に「商品を買ってもらう」「会社名を覚えてもらう」ということですから、
その目的が分散されてしまわないように、競合他社が入らないように配慮されているのです。
出稿金額が多い企業ほどCM枠が多くなったり、
「この番組はご覧のスポンサーの提供でお送りします」というアナウンスの時に社名を読んでもらえたり、など差別化もされています。
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NHKだからできること
上記で解説したように、民法はスポンサーありきで成り立っているビジネスですから、スポンサーのための番組作りを意識しなくてはいけません。
対してNHKの場合はスポンサーはおらず、国民から直接受信料を徴収していますから、国民のための番組作りをすればいいわけです。
視聴率をとるための番組作り、とは少し違う観点で作られている番組が多いです。
特に長い取材期間をかけて、しっかりと撮影されたドキュメンタリー番組などが多い印象ですね。
これはなかなか民法ではできないことです。
動物系のドキュメンタリーは良い映像が撮れる保証もなく、そのままお蔵入りになってしまう映像も少なくありません。
それは一種の賭けとも言えます。
民法とは桁違いの番組制作費があるNHKだからこそできる番組、というわけです。
そういったビジネスモデルの違いを理解した上でNHKと民法を見比べてみると、
また新しい発見があるかもしれません。
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