AD(アシスタントディレクター)は3Kと言われることがあります。(最近はいわれなくなりましたが)
3Kは
- きつい
- 汚い
- 危険
なのですが、汚いの代わりに、
- 帰れない
が入ることもあります。二徹とか三徹とか言いますよね……
今回は、この中で「きつい」ということに焦点を当ててみます。
きついは体力的なことだけではありません。
最近の新人ADの状況
最近では、働き方改革の影響もあり、新人ADが帰れない、というのは、ずいぶん減りました。
また、コンプライアンスが年々厳しくなっているため、危険な仕事もずいぶんなくなりました。
特にネットの普及により、何かがあるとすぐに書き込まれて拡散されますし、
苦情をいう手段も、かつてのように、電話や、手紙だけではなく、様々に増えています。
テレビ局としても、突かれそうなこと、叩かれそうなことは、なるべくしない、というところがあります。
特にバラエティに多かった過激な撮影には、しばしば、ADの危険できつい出番もありましたが、
それも現在では、とても少なくなっているはずです。
ただ、テレビ局内で作っている番組については、より厳しく、管理しているのですが、
実際に番組を制作しているのは、下請けの制作会社だったりしますから、
見えない部分も正直なところはあると思います。
さて、危険なことはやらされないし、帰れないということもない、
だけどADはきつい。
特に新人ADの時は、きつい、と言う声は、やはり聞かれます。
それはなぜなのでしょうか。
関連記事:ADの生活スタイルはどんな感じ?
同期がいない
ある新人ADさんは、やりたい番組だったし、先輩は怖いわけではない。
でも、年が離れた人ばかりで、同期がいないのでやりにくくてきつい、というADさんがいました。
どの番組にも、ある程度言えることなのですが、ディレクター1人に対して、必ずADが付く、というわけではありません。
むしろ、そんな番組は恵まれている方の現場だと思います。
通常は複数のディレクターに、AD少人数。
ひどい時は4人のディレクターの下に、ADが一人だけ付く、と言う場合もあります。
ADは4人のディレクターからの指示を全部こなさなければならず、かなりきつい状況になります。
そして、同期がいないということになるんですね。
4人からの指示で動くので、仕事の量が増えるからきつい、ということももちろんなのですが、
年齢が離れすぎている人たちばかりの中で、仕事をするのは、なかなか気疲れするものです。
タメ口をきける、同期や同僚がいるということは、精神的な息抜きになりますし、
愚痴も言えますから、実は大事なんですね。
これは他の仕事とは大きく違うところだと思います。
一般的な仕事なら、同期がいっぱいいるものですからね。
番組の予算の都合もあるので、なかなか厳しい面もありますが、
もし、同期が全くいない現場で、きついと感じたら、
他の番組でもいいので、同世代の人たちの様子を聞けるよう、所属会社の人に取り計らってもらうとか、
同期を紹介してもらうなど、自分から動いてみることも一つの方法だと思います。
同期や同世代の、状況を聞くことで、きつい時の対処法など、いろんな情報を仕入れることもできるかもしれません。
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何をやっていいのかわからない
テレビの制作現場というのは、たいてい皆、忙しくしています。
ぼーっと暇そうな現場というのは、ほとんど無いでしょう。
周りのみんなは忙しそうだけど、自分は何をやっていいのかわからない。
たまに言われても、わからない事だらけなのに、聞ける雰囲気でもない。
いろいろ言われたけど、どれを先にやっていいのかわからない。
わからないことが多くて、その結果、
自分は仕事ができない、役に立たない、と思ってしまう新人ADさんも出てきてしまいます。
実は、人に仕事を教えるということは、非常に高度で、難しいことです。
上手に教えることができる人など、ほとんどいないと思っていた方がいいでしょう。
自分がやるのと、相手に教えるのでは、全く異なる技術だからです。
自分がやっていることを教えればいいだけじゃ無いかと思うかもしれませんが、そういうわけではありません。
人が理解できるように教えるためには、
- 相手が何がわからないのかを理解する
- 目的など重要性やポイントをきちんと言えること
- わかりやすい言葉で説明できること
- 威圧感を与えない
など、必要な技術が実は多いのです。
特に2番目の目的や、重要性、ポイントをきちんと言えるかどうかは、特に難しいです。
これができないと、教えられる方は、自分の仕事が全体像の中のどの部分で、どんな必要性があるのかがわからない。
結果的に、丸暗記状態で覚えなければならず、
そうなってくると教えられたことがなかなか頭に入ってこなくなるんですよね。
新人ADだから、わかりやすく教えてもらえるだろうと思っていると、
言われても全く理解できず、あたふたするだけ、ということが多いんです。
もし、先輩が仏頂面して、怒ったように、仕事を説明してきたら、
もしかしたら、どうやって指示したらいいのか、その先輩もわからず、自分自身に苛立ってしまっているのかもしれません。
テレビの現場には教え上手な人は、ほとんどいないと思っていた方がいいのではないかと思います。
テレビは見て覚えろ、と言われるのは、おそらくそのせいなんですね。昭和的な言動ですけどね。
なので、仕事を言われてもわからない、何をやっていいのかわからない、
そのくせ、聞くと怒られる、と言うような場合は、相手の説明が下手なんだと思うくらいでいいんじゃないかと思います。
実際下手だと思いますし。
何をやっていいのかわからなくて、それがきついと言うような場合は、
何か手伝うことありますか?と聞くこと。
言われてもわからないときは、ただわからない、だけではなく、
どの部分がわからないのか、というのを少し具体的にして、聞いてみるのもいいと思います。
そうすると、指示した先輩も、内心で、自分の指示のどこが足りなかったのかに気付いて次からは、もっと上手に指示するようになるかもしれません。
テレビは入る現場によってやっている仕事が全く違いますし、日によっても内容が違ったりするので
仕事がマニュアル化されていない、というのもまた他の仕事とは違うところですね。
先輩がいやだ
説明や指示が下手な先輩がいたとしても、それがきついからいやだ、やめたいとはすぐにはならないと思います。
どんなに指示下手の先輩がいたとしても、その先輩が好感を持てる人だとしたら、きっと
うまくやっていけるでしょう。
ところが、性格的に、合わない、顔も見たくないとなると、かなりきついと感じてしまうと思います。
特に新人ADの時はそうです。
人間誰しも相性というものがありますよね。
人は初めて会う人に対して、かなり短時間で、好き嫌いを判定している、といいます。
ただ、相性と仕事とは、またちょっと違うと思います。
好きな人とだけ仕事をすれば、すべてうまくいくかというとそういうわけでもないでしょう。
一緒に仕事をしていくと、相手の良いところも悪いところも徐々に見えてくるものです。
ところが、悪いところばかり最初は見えてしまう人が多いような気がします。
先輩がいやだ、という声はよく耳にするんですね。
先輩のディレクターだったり、先輩のADだったり。
特によく聞くのが、高圧的、怒る、意地が悪い。
良い部分にも目を向けてみるということも、大事だと思うのですが、
この中で、最も問題で、新人ADさんがきついと感じるのは、
「意地が悪い」
ではないかと思っています。
高圧的とか、怒るというのは、理由があると思うのですが、
意地悪というのは、理由がありません。
意味もなく、いやなことを言われたり、嫌なことされるのは、やはり最もきついと思います。
もしかしたら、その先輩は、自分も意地悪をされて、同じようになってしまったのかもしれません。
もし、そんな人がいて、どうしてもきついと感じる時は、所属会社や他の先輩に相談してみるといいと思います。
自分の努力ではおそらくどうにもならないと思いますから。
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体力的にきつい
最後に体力的にきついというもの。
人間は、ずっと頑張り続けられるものではないですよね。
特に睡眠不足になると、考え方に余裕がなくなってきてしまいます。
きついけど、同僚と飲みに行って、憂さ晴らしすると、気分が晴れるとか
きついけど、番組が出来上がっていくのが楽しい、という場合は、多分大丈夫です。
ところが、本当に身体的にきついと感じて、気持ちが暗くなってしまう時は、要注意なので、
迷わず周りの人、先輩が怖いなら、さらに上の人に相談しましょう。
ロケで長時間外にいる、ということもあるのがテレビ業界の仕事です。
体力のいる仕事であることには間違いないでしょう。
身体的にきついからやめたいと言う人は意外に少ないもので、大抵周りの人との関係がうまくいかないということの方が多いのですが、
それでも、本当に体が、 SOSを出していると感じた時は、遅くならないうちに、きついと自覚して、周りに相談するのがいいと思います。
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では今日はこのあたりで。