テレビ業界の裏話

テレビディレクターになるために、アシスタントディレクターをやらなくてはならない2つのワケ

テレビ番組のディレクターになるためには、アシスタントディレクターからのスタートです。大学や専門学校で映像制作を学んできたから、動画配信の経験があるから、ADをやらずにディレクターをやりたい!とアピールされる方もいますが、それはできないのです。

ネット系の動画制作の会社なら、撮影や編集ができれば、ディレクターやクリエイターとして採用されるケースもあるのですが、テレビはアシスタントから。

その理由について書いてみます。

テレビ制作は複雑

番組の最後に流れるスタッフロールを見たことがあるかと思います。

番組に関わるスタッフの名前がえんえんと連なっています。

だいたいの視聴者は、このスタッフロールが始まるとチャンネルを変えるのですが…。一度、じっくり見てみましょう。

テレビ番組って、たくさんの人が関わっているんだなあ、ということが分かります。

ゴールデンタイムのバラエティ番組やドラマは、150人から200人くらいの名前が並んでいます。

そして、その人たちには、肩書がついています。

  • ディレクター
  • プロデューサー
  • カメラマン

なら、まあわかりますよね。

  • VE
  • EED
  • MA
  • ライン編集
  • オフライン

などよくわからない職種も見られます。

そのスタッフロールからわかるのは、ひとつの番組に関わっているスタッフが多いことと、様々な職種があるということ。ディレクターは、それらの職種についての理解していなくてはなりませんし、大勢のスタッフを統率しなくてはなりません。

また、テレビ番組制作は、作業する場所も点在しています。

打ち合わせの場所、撮影するところ、外ロケなのか、スタジオなのか、編集する場所、ポスプロの場所。作業内容によって、場所が違います。番組が変われば、その場所も変わるし、関わる人も変わります。

アシスタントディレクターを経験する期間は、3年から5年程度。その間に、場所を覚えて、制作の複雑さを紐解き、それぞれの職種の理解を深めて、人を覚えて繋がりを持っていきます。

そのためにアシスタントディレクターをやらなくてはならないのです。

関連記事:テレビ業界にはどんな職種があるのか

そして、アシスタントディレクター時に磨かねばならない能力があります。それは…

メディアリテラシー

そもそも、メディアリテラシーとは、ユーザー側に求められるもので、メディアから発信されている情報を主体的に、あるいは批判的に受け止めて、読みこなす能力。

それは作り手である制作者にも、求められています。

テレビというメディアの役割や機能を理解し、視聴者に対して、誤解を与えないように発信することが求められています。私たちは思い込みだったり、記憶違い、あやふやなまま使っている語彙、気づかないまま犯している違反事項が実に多いのです。

例えば、「タレントの●●さんが通う、路地裏のカレー店」という記事をみつけて、取材して放送する場合、映像に盛り込む要素は、

  • タレントの●●さんの写真や映像
  • 場所を説明するため、メイン通りから路地裏、路地裏から店舗へのストローク
  • カレーの魅力として、カレー作りの様子
  • カレーをどう提供しているのか、店内でのイートインとテイクアウトがあれば両方を紹介

と思いつくでしょう。

では、ディレクターとして気をつけなくてはならないことは…

  • タレントの●●さんの写真は、どこから探して、どこに許可を取るか?
  • そもそも、タレントの●●さんは本当に通っているのかどうか?店舗がそう言っているのではないか? 
  • 行ったことがある程度では?通っているといえる頻度、通っている?その頻度は?
  • 路地裏というからには、狭い道路のはず。そこは公道か、私道か?私道の場合、誰に許可をとればいいのか?どうやって撮影するか?
  • 路地裏なら、店の場所が分かりづらく、店の案内板を設置しているはず。それはどこに、どういうふうに設置しているか?道路交通法に反してないだろうか?
  • カレーを作っているのは店内か?それとも、それ以外の場所か?それらは衛生管理的に大丈夫なのか?
  • カレーの提供の仕方は、その地域の保健所のルールに則っているだろうか?

などを意識しなくてはなりません。

記事に書いてあるのだから、問題ないだろう、と思いたいところですが、そこがリテラシーが問われるところです。

雑誌は、写真とテキストのみのメディアで、テキストの文字数も限定的です。魅力的なポイントだけを取り上げて、時にはその魅力を盛っている、ときがあります。

雑誌の記事をみて、これは面白そう!と電話で話を聞いてみると、撮影できる要素があまりにも少なくてネタにならない、っていうことがよくあります。

アシスタントディレクターをやっている間は、メディアリテラシーを鍛える期間でもあります。

これはマニュアルやルール本があるわけではなく、取材経験を積み上げることで養われていきます。

ときには、思い込んだまま突き進んでしまい、間違えたまま放送してしまうという失敗をしでかします。そうした失敗も、ディレクターになるプロセスで必要な経験。

どんなディレクターも、アシスタントディレクター時代の失敗経験があるんです。

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アシスタントディレクターは、失敗が許される

アシスタントディレクターの間は、失敗しても許されちゃう時期なのです。取材や撮影中には、想定しないことがしょっちゅう起こります。些細なことが撮影スタッフ間のトラブルに発展することもあるし、取材先の気分を害することがままあります。

これらは、最初からでできなくてもしょうがない、気づかなくて当然、怒らせちゃったら謝るしかないのです。だって、慣れていないんですから。

日々そういう失敗を繰り返すことで、経験の引き出しが作られていきます。想定しないことが起きた時に、どう対応するかは、その引き出しのなかに答えがみつかります。

アシスタントディレクターはその引き出し作りの期間でもあり、引き出しが多いほど、おもしろいディレクターやプロデューサーに化けるのです。

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テレビ制作歴25年。テレビの業界の内側と、テレビ番組の裏側をわかりやすく発信していきます。


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