テレビ制作にはたくさんの工程があります。今回はディレクターとアシスタントディレクターが苦手な仕事について書いてみます。
テレビ制作の工程
テレビ制作の工程をざっくりと書いてみますと、
- 企画
- リサーチ
- 構成&キャスティング
- ロケハン
- ロケ
- 編集
- テロップ入れ
- 音楽入れ
- ナレーション入れ
- 事後処理
1つの番組を作るのにたくさんの時間がかけられており、関わる人も多いのがテレビ番組制作の特徴です。
アシスタントディレクターとして働き始めると、新人のうちから企画ネタの提出が宿題となることもあります。
もちろん内容が良ければ採用され、それが番組になります。
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苦手な仕事 第3位は「精算」
苦手な仕事の第3位は「精算」です。精算は、制作工程の流れのなかでは、⑩の事後処理のひとつ。
制作を通じて、実費で支払いが生じることが多々あります。
例えば、
- ロケハンに行くときの交通費
- 打ち合わせするときの飲食代
- 資料購入
など。
ロケのときには、
- 高速道路料金
- 駐車場代
- ガソリン代
- 小道具の購入
- レンタル
- ディスプレーカットを撮るための料理代
- スタッフの食費
などなど、色々な出費があります。
最初にプロデューサーから、これくらいの費用がかかるだろうと想定される金額を渡されます。これを「仮払い金(かりばらいきん)」といいます。
制作が終わったら、決められた日までに、何にいくら使ったかと、その領収書、そして返金するお金(あるいは、不足した金額)をまとめて提出せねばなりません。
その書類を作るのが、とにかく面倒くさい!領収書を探さなければならない(一か所にまとめていればいいものを、財布やら名刺入れやら手帳やノートやらにバラバラに保管していたりする。つまり整理下手な人が多いのです)し、それをリストにして計算しなくてはならない。
こういう実務的な作業が苦手。やりたくない。という声を多く聞きますし、プロデューサーから精算が遅いスタッフの愚痴を聞くこともあります。
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苦手な仕事 第2位は「裏どり」
「裏どり」の作業は、アシスタントディレクターの主たる仕事のひとつです。
工程でいうと、最初から最後までどの工程でも「裏どり」は欠かせません。というのは、テレビで発信される情報は、「どこかの誰かが言っていること、思っていること」を取り上げるのはNGです。
「どこそこの、誰それが言っていた」と、特定できなければなりません。データを取り上げる場合は、公の機関が公表しているものでないと載せられません。
データのグラフやランキングが出るときには、画面の隅に小さく「出典」と書かれています。そういった資料を集めたり、確認したりするのは、ADやディレクターの仕事。
プロデューサーのなかには、コンプライアンスのチェックを専門にする担当者がいます。映像をみて、取材している会社や店舗や人物は、法律を守って営業しているのか、撮影は法を守って行われているか、をチェックします。例えば、取材したのが店舗なら、こういった法律が関わっています。
- 食品衛生法
- 景品表示法
- 製菓衛生師法
- 道路交通法
- 薬事法
- 建築基準法
- 風営法
…などなど
そういった観点からチェックして、あやふやなところは、クリアにしておくように、と進言されます。
ときには、DやADが取材した企業や店舗に、こういう点を問われたのですが、どう対応されてますか?と連絡をとったり、管轄の省庁や保健所に問い合せをしたりします。
新人のアシスタントディレクターがびっくりすることのひとつは、この確認事項の多さ。役所に連絡したり、専門用語で書かれた資料を読んだり、と面倒なこともあるんですよね。そこが苦手という人は多いです。
しかし、面倒でも一つ一つ事実確認をすることで、放送の正確性や公共性が保たれているのですね。
1位は…「プレビュー」
プレビューの前は軽ーく胃が痛くなったり、もっと先に延ばしたいと願ったり。できれば避けたい、と思っているディレクターは多いでしょう。プレビューによって、その作品の評価やディレクター自身の評価もされるのですから。
プレビューというのは、「試写」のことです。工程のなかでは、⑥編集 のなかになります。
編集には、オフライン編集(仮編集)とオンライン編集(本編集)と2段階に分けられています。オフライン編集はディレクターがパソコンで編集していくのですが、オンライン編集はポストプロダクションという施設で行います。
プレビューは、オフライン編集とオンライン編集の間に行われます。プレビューをクリアしなくては、オンライン編集できないのです。
プレビューとは、プロデューサーたちの前でディレクターが仮編集した映像に合せて、ディレクターは仮のナレーションを読み上げていきます。プロデューサーがチェックするポイントは、
- おもしろいか
- 企画の意図通りの取材がされて、編集されているか。
- 事実関係が整理されてわかりやすいか。誤解を与えないか。
- 最後まで飽きずに見れるか。ストーリーとして成立しているか。
全体を通しでみて、全体の印象や、企画のコンセプトと映像があっているかどうかなど、プロデューサーからの感想や意見が出てきます。そして、もう一度最初から見てワンカット、あるいは、シーンごとに、詳細の修正点が指摘されます。
プロデューサーが3人4人とずらりと並んでいるなかで、映像を見せて説明するのは緊張します。ディレクターにとっては全行程のなかで緊張Maxなとき。番組の規模が大きいほど、プレビューするプロデューサーの人数も多く、アシスタントディレクターのなかには、このプレビューに立ち合い、指摘を受けるディレクターを見て、「これを乗り切るほどのメンタルは持ち合わせていない」と、転職を考える人もいます。
プレビューはだいたい3回行われますが、最初に見せるときが一番苦痛です。1回目でダメ出しをされて、修正をして、2回目のプレビューでは、尺調整をして、3回目のプレビューで全てがクリアになっているか確認をされます。
ダメ出しが多かったからといって、出来ないディレクターというわけではありません。1回目のプレビューででた修正ポイントが、2回目でちゃんと直っていればいいのです。
なぜ修正が必要なのか、どうなおすのか、をプロデューサーとやりとりして、納得のうえで修正する。ときにはプロデューサーの指摘が間違っていることもありますから、そこで自分の考えを主張できる、それが”出来るディレクター”です。
プレビューは緊張するけど、プレビューこそテレビならでは、と言うディレクターもいます。多様性のある視点で見てもらうことで、面白さや分かりやすさが吟味されるのですね。
関連記事:オフライン編集とオンライン編集はどう違う?テレビ番組制作における編集過程
今回はディレクターやアシスタントディレクターが苦手な仕事について挙げてみましたが、逆に好きな仕事は「ロケ」「仮編集」「MA」です。