今回はテレビADの目線でテレビ番組制作過程を紹介してみたいと思います。
一口にテレビ番組制作と言っても、番組にも色々な種類がありますので入る現場によって仕事の内容も大きく変わってきます。
色々な番組がありますがその中でも一番大変だとされているロケを行ってスタジオでVTRを見るタイプのバラエティ番組の制作過程を例に、今回は解説してみたいと思います。
今回はロケも収録も行う番組になりますが、ロケをしたものを編集して放送する番組やスタジオで生放送を行うだけの番組もあります。
ネタ決め
テレビ番組制作の一番最初の過程として行われるのがネタ決めと呼ばれる企画会議です。
大体放送の二ヶ月ほど前にこのネタ決めを行います。
ADも含めディレクターや放送作家などが集まってネタ決めを行っていきます。
新人のADでも意見を求められることは多々ありますので、普段からどういう企画をやったら面白いのかということを考えながら生活していくことが大切です。
一度のネタ決めで20から30ほどネタを出していきその中からピックアップして4つから5つ程度に絞ることが多いです。
実際にそのピックアップした内容についてお店がやっているかどうかだとか、タレントさんを手配することができるかどうかということをはめ込んでいって、残るのが1つあればいいかなくらいです。
一回でこのネタ決めが決まれば、あとは具体的な準備をしていくことができますが、どうしてもうまくいかなくて繰り越してしまうこともあり、そういう場合は準備期間がどんどん短くなっていくので制作がタイトになって大変になっていきます。
リサーチ
ネタが決まったらリサーチという工程に進みます。
このリサーチを専門として行うリサーチャーと呼ばれる人たちがいる場合もあります。
今巷で話題の食事を特集するのであれば、その食事を扱っているお店について調べ上げたり、タレントさんと打ち合わせが必要な番組に関してはタレントさんのリサーチも徹底的に行います。
タレントさんの場合はSNSをチェックしたり、インタビュー記事などを遡って全部調べたり、など。
とにかく情報収集。
図書館を使ったりインターネットを使ったりというのがメインの作業になりますが、お店の目星がつけば実際にお客さんとしてお店を訪れてみる、ということもあります。
地道ですが番組の情報濃度を高めるために必ず必要な工程です。
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ロケ台本の作成と仕込み
ロケ台本の作成は基本的にディレクターの仕事をなのですが、ある程度キャリアを積んで信頼してもらえるようになるとADでもロケ台本の作成をお願いされることがあります。
リサーチ内容やネタ決めの時に出た案、打ち合わせ内容などをまとめてロケの台本を作っていきます。
そしてADの一番の仕事と言っても過言ではないのがロケの仕込みです。
どのようなものを仕込むのかというと
- ロケ場所
- ロケスケジュール
- 小道具
- 役者さん
- 車両
- メイクさん
- 専門家さん
- カンペ
- ロケ弁当
- ロケの資料
- カメラマン
- 機材
といったものです。
ロケ場所にはADが電話をして取材の申し込みも行います。
この時の「ADの対応が良かった」というのを理由に取材を受けてくれる取材先もありますから、ADは責任重大です。
またお店などは営業時間などの関係もありますからロケをできる時間が限られています。
タレントもスケジュールを確保できる時間に限りがあることが多いです。
そういったスケジュールを組み立てるのもADの仕事です。
小道具に関しては急遽前日に用意しなくてはいけなくなった物などが出てきたりもします。
用意ができない場合はADが自分で手作りするなんていうこともあります。
関連記事:ADのセンスが問われる?人気のロケ弁と選び方、発注のコツ
ロケ
ロケにも色々な種類がありますが、タレントさんにバレてはいけない、カメラも複数台必要になってくるドッキリ系などはかなり大変な部類になります。
街に出てロケをする場合は撮影許可をとったり、交通規制をしなくてはいけないこともあります。
「今撮影しているので少し待ってください」みたいな案内を通行人にするのもADの仕事ですね。
またロケ現場が複数ある場合はスケジュール管理なども重要になってきます。
編集
編集には
- パソコン上で行うオフライン編集(ノンリニア編集)
- 本編集
の二つの段階があります。
オフライン編集はディレクターがパソコンで行いますが、その編集をしやすいようにADがロケの素材をあらかじめ整理し、「抜き」と呼ばれる作業を行うこともあります。
抜きというのは「面白い」と思われるシーンをあらかじめピックアップしておく、という作業です。
他にもコメント起こしや「こういう表情があるところ場所探しておいて」みたいなことを頼まれることもあります。かなり地道で大変な作業ではあるのですが…
オフライン編集が終わったらプレビューと呼ばれる演出によるチェックを行い、ここで再編集となることもあります。
これを終えたら本編集(リニア編集)に入ります。
これは編集所で行う編集で、この編集所でエフェクトやテロップなどを入れて行きます。
編集所にはたいていCGなどを作って画面に入れ込んでくれたりエフェクトを追加してくれるエディターさんと、テロップを作ってくれるアシスタントさんがいます。
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MA
音作りをするのがMAという作業で、効果音や音楽を音響効果さんがつけてくれます。
そしてナレーターさんを呼び、ナレーションをつけていきます。
ナレーターさん向けの原稿作り(タイムをふったり、ルビをつけたり、原稿にミスがないか確認したり)といったことはADの仕事になります。
これらの音の仕上げをしていくのはミキサーさんと呼ばれる方です。
全体のボリュームチェックなどもミキサーさんがしてくれます。
これらのVTRが全部完成したものを「完パケ(完成パッケージ)」と言います。
関連記事:番組制作さいごの工程『MA(エムエー)』について解説します
収録準備・収録
収録に向けてカンペ作りをし、収録日はADはカメリハを行います。
カメラさんが撮影する時に画角作りをするためにADは演者さんになりきって打ち合わせを行います。
ディレクターにぴったりついてフォローをしたり、食事を出したり、色々な仕事があります。
関連記事:撮影前に行う「技打ち」について説明します
収録素材の編集
またスタジオで収録したものを編集していきます。
こちらはロケ素材の編集と同じ内容ですが、別のディレクターが担当することが多いです。
ワイプの編集をするのはADがやることが多いです。
たくさんの演者さんがいるので、その中からどの人のワイプを抜くか、というようなことを考えます。
一つの番組を作るのにこんなに過程があるんですね!
本当に1時間の番組を作るのに2ヶ月前からずっと動き続けて、たくさんの人が関わって番組が制作されるのです。