「技打ち」とは、撮影に参加する技術スタッフ(技術クルー、テクニカルクルーともいいます。)とディレクターが撮影の段取りについて打ち合わせをすること。
撮影に関わるスタッフ全員が顔をそろえるのは、撮影日当日。
撮影直前に、誰が何を撮影するのか、どう撮影するのか、を確認します。役割分担ができていないと、撮影時に混乱しますからね。
もっと詳しく説明してみましょう。
いつ技打ちをする?
小規模の撮影の場合
撮影の規模が小さいもの。ENG1班(スタジオではなく、外での撮影で、カメラマンとビデオエンジニアの2人体制か、音声スタッフが追加された3人体制)であれば、撮影30分くらい前までに技打ちをします。
技打ちで撮影の段取りが確認できたら、必要な機材をセッティングしたり、バッテリーや照明などの機材をバッグにまとめて、撮影場所に運びます。撮影まで余裕をもって準備しておくため、撮影開始30分程度前には技打ちを終えて、スタンバイをするイメージです。
撮影当日の流れは、
- 制作スタッフ・撮影スタッフ 集合 (撮影30分前)
- 技術打ち合わせ (約15分)
- 機材スタンバイ (約10分)
- 撮影スタート
制作スタッフと技術スタッフが一緒に移動するときは、移動中に打ち合わせをして、現地に到着したら、すぐにスタンバイして、撮影スタートです。
大規模撮影の場合
撮影の規模が大きいもの。
例えば、ENG3班体制だったり、スタジオでの収録でカメラが3台以上あるものだと、撮影1時間前までには打ち合わせを終えておきたい。
なぜなら、技打ち後にカメラの動きをリハーサルしたり、調整するなど、準備をせねばなりません。
カメラの台数が増えるほど撮影は複雑です。
ディレクターの意図を理解し、撮影対象者の動きと、自分以外のカメラが何を撮るのか、も理解しておかねばなりません。全体のなかで「自分の役割とは」ということを把握しておくために時間がかかります。
スタジオ収録の場合、技打ちのあとにカメラリハーサル(通称 カメリハ)と言われるカメラの動きを実際に確認するためのリハーサルをします。
スタジオ収録の場合の撮影日当日の流れは、
- スタッフ集合 (撮影本番3時間以上前)
- 照明・撮影機材セッティング
- 技術打ち合わせ (撮影本番2時間程度前)
- カメラリハーサル (撮影本番 1時間程度前)
- 撮影本番
といった形になります。
ちなみに技打ちに参加するのは、ディレクター、アシスタントディレクターの制作スタッフと、技術スタッフ全員です。
- カメラマン
- ビデオエンジニア
- 音声
- 照明
などのスタッフの方たちですね。
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技打ちは何を打ち合わせる?
撮影日までに、撮影スケジュールと撮影台本は全員に配られていますが、それをもとに確認をしていきます。
打ち合わせの流れは、
- ディレクターから、番組についての説明
- 出演者についての説明
- それぞれのカメラの狙いと動きを説明
カメラが複数台のときは、1カメ2カメ3カメとナンバリングします。
撮影時の指示も、カメラマンの名前ではなく、基本は1カメ2カメ3カメと呼びます。
それぞれのカメラは出演者の誰を狙うのか?司会者を狙う、ゲストを狙う、司会者とゲストの2ショット。スタジオ全体のヒキ(ロングともいいます)を狙うなどです。
カメラマンは自分が何を撮っているのか、自分以外は何を撮っているのかを把握しています。
もし技打ちをしなかったら、3台のカメラがあっても、その場で面白い事象を撮ろうとして3台が同じ映像を撮ってしまいかねません。3台のカメラがあれば、主観的視点、客観的視点、説明的視点など、それぞれに目的や役割を与えることができます。
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機材や撮影の方法を考えるのは、誰がいつ?
さて、カメラを何台セッティングするのか、特殊なカメラは必要なのか、どうやって撮影するのか、ということはディレクターが考えます。
ディレクターは構成を考えますが、そのときにこういう映像が欲しい、こういうシーンが撮れたらいいな、とイメージします。
レギュラー番組で、いつも通りの撮影であれば「技術会社へスタッフと機材はいつも通りでお願いします」で済みますが、特別な撮影の場合は技術会社に「こういう撮影をしたい」とプランを伝えます。
そして、技術会社はプラン通りの人員、機材を揃えます。
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技術スタッフがロケハンに同行する場合もある
特殊な撮影の場合、例えば『鉄道の番組で、レポーターありで鉄道作業員の深夜作業を撮影する』という場合は、技術スタッフもロケハンに同行する場合もあります。
この場合の特殊性は、
- 深夜であること
- 鉄道作業員の作業であること
- リポーターがいること
です。
深夜の作業であるため、周囲がどの程度暗いのか、を確認しておかねばなりません。照明を手配をするためです。
また鉄道作業がどういった作業かを見ておかねばなりません。いったい、何人の作業員がいて、行動範囲がどれくらいなのか。それによって、カメラがいくつ必要で、どれくらいのサイズのカメラがいいのか?どの程度の精度のカメラが必要かなどを考えます。
リポーターがいるということは、リポーター目線のカメラや声も録らねばなりません。作業の音がどの程度の大きさか、レポーターはどう動くのか?作業中は側にいるのか、それとも別の場所なのか?など確認しておきます。
予算の範囲のなかで、どういうレベルのスタッフを何人手配して、機材はどうするのかをプランニングするには、技術スタッフの知恵が必要です。ロケハンに同行するのは、メインのカメラマンが来ます。
ディレクターと撮影カメラマンがいかに連携をとっているか、で撮影の質も変わります。ディレクターは、経験を積んでいく中で、信頼できるカメラマンが1人か2人はできます。信頼関係のあるカメラマンだと、このディレクターはこういうカットが必要だな、こういう撮り方が好きだな、と指示せずとも分かり合えるので、技打ちの時間もさほどかからなくなります。
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