テレビ番組を制作するスタッフに、テレビリサーチャーという仕事があります。
番組を支えるリサーチャーたちは、番組の質に大きく関わる部分を担っています。今回はテレビリサーチャーの仕事を解説します。
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テレビリサーチャーは制作にどう関わっているの?
テレビ制作の工程は、大まかにわけると、3工程。
企画(プレプロダクション)→ 撮影(プロダクション)→ 編集(ポストプロダクション)
テレビリサーチャーが関わるのは、最初の企画(プレプロダクション)の段階です。
だいたい、放送日の1か月半から2か月前から準備が始まります。制作のスタートは、何をテーマにするかを決める企画会議。
企画のテーマや方向性が決まったら、ネタ探しが始まります。
ネタというのは、これを取り上げたらいいんじゃないか?っていう取材先候補のこと。
- 企業
- お店
- 施設
- 商品
- 人
- ユニークな動画
などなど。
テーマに沿っていて、取材するとおもしろそうなネタを探して、次の企画会議で発表します。
その数は番組によりますが100件近く集まることも。
その中から、面白いネタ、今どき感のあるネタなど、10くらいに絞りこまれます。
絞り込まれたネタのところに電話をして何が撮れるのか、深掘り取材。そして取材許可を取る。それが、リサーチャーの仕事です。
最終的に番組で取り上げるのは2~5ネタくらい。取材先が固まったら、次の企画に取り掛かります。
どのネタがどういうふうに取材されたのか、は放送をみて初めて知ることもあるんだとか。
ただ、検証番組や歴史ものなどの教養番組などはリサーチャーが放送間際まで事実確認をしたり裏どりすることもあります。
テレビリサーチャーは三つの分野がある
テレビリサーチャーには3つの分野があります。
それは、、、
- ネタ探し
- 人探し
- 動画探し
ネタを探す
ネタというのは、取材できそうな企業や店、商品、人、イベントなど。
例えば、7月の放送予定で、海辺のおいしい店を特集したいよね、と企画の方向性がでると、海辺の町、例えば江の島や葉山、三浦海岸、大磯、勝浦や九十九里浜などを候補にあげて、それぞれの土地での評判の店、人気の店、今年オープンした新しい店、その土地で採れる食材を使った料理やイベント情報などを集めます。
ネタ会議で選定して、ピックアップされた店や主催者に連絡をとって、撮影許可を取ったり、何が撮影できるのか聞きだしたりします。
ネタの探し方は、雑誌や新聞、地方誌、ネットなどです。
人を探す
ドキュメンタリー系の番組で、密着取材させてくれる人を探す、というのもリサーチャーの仕事です。
例えば、スナックでバイトしている東大生、子どもが上京して離れ離れになる地方の家族、離婚寸前の夫婦…。
密着したらそこにドラマが生れそうだな、という人を探すのもリサーチャーの仕事です。
ネタ探しよりも難易度が高いこともあって、採用されればギャラが上乗せされることもあります。
動画を探す
最近多いのは、おもしろ動画を探すというもの。
家族のハプニング動画、ペットの癒される動画、衝撃的な一瞬をとらえた動画、海外で人気の動画など。
SNSで公開されている動画を探して、アップしている人、撮影した人、映っている人に放送の許諾を得なければなりません。
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リサーチャーはどうやってなるの
リサーチャーになるには、3通りの方法があります。
リサーチ会社に所属
リサーチャーを目指している人は、リサーチ専門の会社を探して、採用試験を受けるのが王道ですが、リサーチという仕事を知っている学生はあまりいないので、新卒で入る人は少ないです。
リサーチ会社に所属する人たちは、テレビ制作会社や雑誌などの編集プロダクションから転職してくる人が多く、試用期間をえて、社員として所属したり、ほかの仕事と兼業するため契約社員として働いたり、雇用形態はさまざまです。
放送作家を目指して放送作家事務所に所属
放送作家を目指している人がキャリアをスタートさせるには、放送作家事務所に所属します。
経験をつむために、キャリアの浅い若手たちは、放送作家たちが出入りしている番組に同行して、企画会議で出た案件のリサーチをします。
放送作家の修行のひとつとして位置づけられるリサーチですが、リサーチの面白さや奥深さに触れたり、周囲のスタッフから才能や知識を重宝されて、リサーチャーになる人もいます。
放送作家の事務所には、リサーチャーが所属していることが多いです。
制作会社に入ってADからリサーチャーへ
番組制作会社に入って、アシスタントディレクターをするうちに、リサーチの方が自分に向いているかも、と方向転換する人も多くいます。
アシスタントディレクターの仕事はリサーチも含まれています。
ADの仕事は、撮影の段取り、編集のフォローなど多岐にわたるのですが、過酷な現場も多く、体力的にもたない、と離脱する人も多くいます。
ADはつらいけど、リサーチは好きだな、合ってるなとか、ネタを上げて取り上げられる率が高い、という人には、周囲からリサーチャーの方が向いているのでは?と促されることがあります。
制作会社のなかにリサーチ部があったり、リサーチ専門のスタッフとして在籍する場合があります。
テレビリサーチャーに向いてる人とは?
リサーチでは、ネットで検索することが多いのですが、検索ワードにどんなワードを入れたら、お目当てのネタを探り出せるか、がリサーチャーの腕ともいえます。
いかにワードを思いつけるか、それは、企画会議で出たアイデアから連想を広げられるかどうか、こんな店があったらいいな、と想像をどれだけふくらませることができるか、です。
想像力や連想力のある人が向いています。そして、せっかく面白い店を探し当てても、撮影NGの場合もあります。
一般の人であれば色よい返事はなかなかいただけません。説得したり口説いたりすることもあります。
人が好き、話をするのが好き、という人が求められています。
取材先の候補が一般の人の場合、テレビに出ることはリスクが大きいと感じますが、最初に話をしたリサーチャーが感じのいい人だったから、悪いようにしないだろうという理由で出演してくれることもあるのです。
リサーチャーの働き方とギャラ
ほとんどのリサーチャーは裁量制の働き方です。
裁量制とは、会社で仕事をするのではなく自分で仕事をする場所や時間を決められることができます。下調べはネット検索するか、図書館で調べるか、から始まるので、自宅で作業したり、図書館へ行ったりするほうが効率がいいのです。
会社で定期購読している雑誌やストックされている資料などを見たり、報告書を作成するときに出勤します。
もちろん、成果を上げなくてはなりません。企画会議までに報告書を提出しなければいけませんし、会議への出席が義務づけられている場合もあります。
リサーチャーは番組専属のこともありますが、ほとんどの人は番組を掛け持ちしています。
ギャランティは、番組の規模によって様々。
だいたい、レギュラー番組だと一回の放送で4万円から、特番になると20万円くらい。
経験を積んで、掛け持ちの本数を増やしたり、番組で取り上げられる率を上げて、自身の価値があがるとギャラも増えます。
育児や介護などが重なるライフステージに突入したら、仕事を減らすなど調節しやすい特徴があります。
リサーチは、得意分野があるほど、声をかけられる仕事です。
京都の老舗に強い、歴史が好き、料理人にネットワークがある、医療に強い、プロ野球なら全ての選手を覚えている、インスタグラマーの繋がりがある、など。
得意分野や強い分野があれば、その知識が存分にいかすことができる仕事なのです。
