プロデューサーって、どんな仕事?
たぶん、きっと、この世の中で、一番絵にならない職種が、このテレビプロデューサーっていう仕事じゃないかと思う。
テレビを作っている本人が、一番、映像にならない。
人と会ってしゃべっているか、ネット見ているか、書き物をしているか、町をプラプラしているか、飲みに行ってるか、
ビデオ見てるか、立ち読みしているか、ぼーっとしているか。
まるで、なんだか、大人なのに遊んでいる人たちのようにも見える。
いったいどんな「仕事」をしているのでしょう。
テレビプロデューサーの日常
例えば、地上波の午前中に放送している生放送の情報番組には、制作スタッフだけで、70人から100人もの人たちが関わっている。
その人たちを統率し、管理するのがプロデューサーだ。
それぞれの番組には、見てほしい視聴者のイメージがあり、
それに合わせた、スタジオセットや出演者や番組の構成やテーマ、企画、テイストがあるのだが、明確に文字化されたものがない。
もちろん最初はある。
でもそのうち、どんどん刷新され、変更されていく。
数字のとれないコーナーはなくなり、新しいコーナーができ、放送開始から数か月もすると、当初とは違うものになっていたりする。
変更の基準は「うちの番組らしいかどうか」だ。
プロデューサーは、企画の取捨選択において、大きな責任を負わされている。
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情報番組のプロデューサーの例
プロデューサーは、70人から100人もいる制作スタッフのチーム分けや、それぞれのチームの進行具合と予算の管理だけでなく、
司会者やコメンテーターなど、出演者のスケジュールのすり合わせもしなければならない。
毎日生放送している情報番組は、当然のことながら、放送日という「締め切り」があるわけだが、
プロデューサーにとって最も大事な仕事は、
「正しく取材しているかどうか」をチェックすることである。
- 取材を受けている人は、どんな人なのか、どんな立場の人なのか。
- カメラが設置されているところは、どこか。許可をとって撮影しているか。
- 取材されたものが、正しく放送されるか。
- 取材者のコメントを故意に編集していないか。
- ナレーションの日本語は正しいか。
- テロップは間違っていないか。
- 視聴者に誤解を与えないか。
- もともとの企画にきちんと沿っているか。
- ディレクターの情が入りすぎていないか、偏りはないか。
放送前に必ずプレビューをするのだが、
そのときは、視聴者として「初めて映像を見てわかるかどうか」という視点と、
責任者として「誤解を与えず、正しく取材してきているかどうか」の視点と両方持ってみなければならない。
放送される前に、その日にオンエアする映像を見るため、
放送が始まっても、その日の放送の終盤の映像をまだプレビューしていることもある。
意識を集中してみるため、非常に神経が疲れる。
プレビューが終われば、すぐにオンエアの立ち合いをして、そのまま反省会。
そして、翌日以降のプレビューと企画会議。
自分でネタを探し、今、はやっているもの、はやりそうなものを感じ取るため、町の中をさまよい、新聞雑誌をチェックする。
夜は同業異業とわずさまざまな人と交わり、会話のなかからネタを拾う。
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プロデューサーの一番大事な仕事
「うちの番組らしいか・らしくないか」というのを、
制作スタッフ全員に共有させるのがプロデューサーの役目である。
プロデューサーがすべての良し悪しを判断し、取捨選択をするのは限界があるけれど、「番組らしさ」の感覚と認識をスタッフに共有してもらうことで、
プロデューサーの責任や役目を分散させることができる。
うちの番組っぽいことを、出演者やディレクターだけではなくて、
アシスタントディレクターやカメラマンやレポーターや構成作家にまで浸透させることが、
プロデューサーの役割である。
そして、番組に関わる全てのスタッフが気持ちよく仕事ができるように、仕事に集中してもらえるように、
スタッフをねぎらい、もてなし、時には、叱り飛ばすのも仕事である。
番組に関わる全てのスタッフの気持ちを一つにして、同じ方向に向かうように仕向けるのが、プロデューサーのいちばん大事な仕事だと思う。
スタッフの気持ちをデザインする、マネジメントする、というのが、手腕を問われるところだろう。
ディレクターやアシスタントディレクターが成長できるかどうかは、プロデューサーによるところが大きい。
バラエティ番組を次々に世に送り出した名プロデューサーは、プロデューサーとは何か?と聞かれて、ディレクターを育てること、と仰った。
それにつきると思う。
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