テレビ業界の裏話

アシスタントディレクターの仕事:無茶ぶりに応えるAD根性

今回は実際にアシスタントディレクターとして働いている、二年目の人の話をそのまま載せてみます。

アシスタントディレクター(AD)にも、多少はプライドがあります。

ディレクター(D)から、多少無理難題を言われても、なんとか形にしたいと働くのがアシスタントディレクターだと思います。

ただ、本当に無理なことも言われます。

 

雪まつりで外国人を探す!

 

今年2月の「さっぽろ雪まつり」でのことです。

北海道の情報番組は、各局中継をだしていて、当然うちの番組も、会場から中継をしていました。

その現場で、ディレクターからある指示を受けました。

「生放送の本番で、外国からの観光客にインタビューをしたい。

ただ、通訳もいないし、英語が得意なアナウンサーもスタッフもいないから、日本語の話せる観光客を連れてきてほしい。」

そのような都合の良い人が、すぐに見つかる訳がありません。

完全に無茶ぶりです。

指示を受けたとき、インタビューの本番まで、あと30分ほどしかありませんでした。

この指示には、いくつものハードルがありました。

まず、外国から来た観光客に、日本語を話せるかどうかを聞かなければいけない。

そして、テレビに出てもらわなければならない。

なにより、僕は英語が話せません。

ただ、僕にもアシスタントディレクターとしてのプライドがあります。なんとしても見つけたい、

その思いで、僕が立てた作戦はこれです。

英語で、テレビ番組のアンケートだと言って、どこから来たかを聞く。

英語で、日本語が話せるかどうかを聞く。

日本語が話せる人なら、ここからは日本語で、テレビに出てほしい旨を伝える。

外国から来た観光客であろう人を見つけたら、手当たりしだいに、

「アイム ジャパニーズ TVショースタッフ!
アンケート! ワンクエスチョン! オーケー?」

(私は日本のテレビ番組のスタッフです。ひとつアンケートがあるのですが、答えてくれませんか? と言ったつもりです。)

すると、声をかけた全員が優しく、「イエス」と答えてくれました。通じていること

に感動を覚えながら、僕は質問を続けます。

「ウェアー アーユーフロム?」

いろいろな答えが返ってきました。

アメリカ、イギリス、フランス、オーストラリア、韓国など、本当に世界中からいろいろな国の方々が来ていました。

ただ、「キャン ユー スピーク ジャパニーズ?」の質問には、

全員が「ノー」でした。

english_kaiwa_bad_man

誰一人として、日本語を話せる人がいないのです。

本番まで、あと残り時間はわずか。

最初から無茶な指示だとは思っていましたが、本気で見つけられないとあきらめかけていました。

そこからまた何人かに声をかけたあと、向こうから、ひときわ大きい黒人男性が歩いてきました。

ダメで元々、僕はその人にも声をかけました。

また訳のわからない英語で、アンケートだというと、快く「イエス」と言ってもらえました。

そして僕は、次の質問の答えを聞いて、戸惑いました。

「ウェアー アーユーフロム?」

「フロム サセボ」

サセボ。そんな海外の都市あっただろうか、少し考えました。そして、僕はこう続けました。

「サセボ イズ ナガサキ?」

イエス、ナガサキ!」

「あの、日本語話せますか?」

ええ、話せますよ。」

僕は驚きと、喜びで飛び上がりそうになりました。

身長172センチの僕が、見上げるくらい大きな黒人男性の口から、流暢な日本語が放たれたのです。

詳しく聞くと、その男性の父親が、佐世保基地で働いていて、長い間長崎で暮らしていたため、日本語が話せるようになったそうです。

その男性は、快く生放送のインタビューにも出演してくださいました。

ある程度の無茶振りでも、意外とどうにかできるものなのです。

AD根性というか、あきらめない心が、アシスタントディレクターには大切なんだなと実感した日でした。

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(北海道 アシスタントディレクター)

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