2021年6月12日に放送された『キングオブコントの会』(TBS系)について、世帯視聴率は6.8%でしたが、20年ぶりに新作コントを披露したダウンタウンの松本人志さんが14日、Twitterにて以下のようなツイートをしたのが話題になりました。
「コア視聴率が良かったんです。コア視聴率はスポンサー的にも局的にも世帯視聴率より今や重要な指標なんです。そのコア視聴率が3時間横並びでトップやんたんです」
ここ1〜2年でコア視聴率という言葉を業界でもよく聞くようになりましたが、世間一般的にはまだまだコア視聴率という指標はあまり一般的ではないのだと思います。
今回はコア視聴率という視聴率がどのような指標なのか、それによって今テレビ業界がどのような変化をしていているのかということを解説してみたいと思います。
世帯視聴率と個人視聴率の違い
コア視聴率の説明をするにはその前に世帯視聴率と個人視聴率の違いを説明しなければなりません。
とある10世帯のサンプルを用意しました。
今赤くなっているのがテレビを視聴している人です。
この図を世帯視聴率で計算すると、世帯視聴率は40%となります。
世帯視聴率というのは一世帯の中で一人でも番組を見ている人がいれば視聴率としてカウントされる方法になります。
そのためこの図では10世帯中の4世帯がテレビを観ている世帯という風にカウントすることができますので、視聴率は40%となるわけです。
視聴率が40%というのはNHKの紅白だったりドラマで言うと半沢直樹などで聞いたことがあるすごい数字だと言えるでしょう。
では同じ10世帯でもこれを個人視聴率で計算してみるとどうでしょうか?
個人視聴率で計算する場合は名前の通り個人のみでカウントをしていきますので20人中4人がテレビを視聴している状態と考えることができます。
つまり個人視聴率で計算をすると視聴率は20%ということになるのです。
先ほど世帯視聴率では40%あった視聴率が個人視聴率になると途端に20%という数字になってしまうんですね。
かなり数字が変わってくるということがよくわかると思います。
世帯視聴率に比べて個人視聴率の場合、より正確な情報を知ることができます。
視聴率という数字の精度が上がるんですね。
それに伴い数字的には世帯視聴率で見る時よりも個人視聴率で見た時の方が下がってしまいます。
一見視聴率そのものが下がったように感じてしまいますが、そもそも指標が違うので平均値も違います。
例えば世帯視聴率で言うと10%程度視聴率が取れればよく見られている番組であり番組終了危機は免れると言えるでしょう。
これを個人視聴率で測るとなると6%から7%程度になるという感覚です。
実はテレビ局側ではこの世帯視聴率よりも個人視聴率の方を一般的な指標にするよう移行しつつあります。
ただお茶の間で発表される視聴率というのはどうしても今までの世帯視聴率の感覚が抜けませんので、世帯視聴率から個人視聴率にいきなり指標を変えてしまうと、数字だけ見た時に「なんだか視聴率が下がったな」というイメージを持たれてしまうわけです。
コア視聴率とは?
コア視聴率というのは個人視聴率よりもさらに細かく視聴者を分析してカウントする方法です。
コア視聴率でカウントされるのは、T層とF1~F2層、M1~M2層です。
簡単に言うとこれは中学生以上から50歳未満の視聴者のことを指しています。
これは一般的に購買意欲が高い層と言われており、スポンサーが一番重要視しているターゲット層です。
テレビ番組というのは無料で見られるものですが、そこにはスポンサー企業が広告を出稿しており、その広告収入によって番組制作が行われています。
つまりスポンサーからすると視聴率というのはどれだけ自分の企業の広告を見てもらえたかという指標になるわけで、視聴率が高い番組に広告を出稿すればそれだけ多くの人に自社の製品などを知ってもらうことができるということなのですね。
だから番組側も視聴率第一で制作を行なっているわけです。
今までは世帯視聴率で視聴率を測っていましたが、個人視聴率さらにコア視聴率を重視することで、よりCMを見て欲しい人にリーチさせることができる番組づくりが目指されるようになってきているのです。
では先ほどの10世帯をもう一度見てみましょう。
これをコア視聴率で計算してみると、20人中3人が視聴者の中のコア層、ということになります。
つまりコア視聴率は15%ということですね。
世界視聴率に比べて個人視聴率、また個人視聴率に比べてコア視聴率の方がより精度の高い数字になりますので数字的には低い数字が出てしまうのは仕方がないことです。
これは指標が変わっているので当たり前ですね。
しかし今後重要視しなくてはいけないのはコア視聴率だと言われているわけです。
関連記事:F1層がターゲットの時のテレビ広告戦略
番組制作の方針も変わってきた
今までは世帯視聴率が重要視されていましたので、単純に人口が多い高齢者層や少し年齢が上の層をターゲットとした番組制作が行われていました。
これによって若い世代のテレビ離れが加速して行ったと思っています。
しかし結局のところ購買意欲があるのはコア層なので、世帯視聴率の数字が高くても物が売れなければ意味がないのです。
そこで最近はコア視聴率を重視する方向になってきて、より若い世代に受ける番組作りが目指されています。
一時期よりもお笑い番組やネタ番組が増えた気がしませんか?
テレビでYouTubeやtiktokなどのSNSを扱うことも多くなりました。
これからどんどんコア層をターゲットにした番組が増えていくでしょう。指標が変わったことによってテレビ番組づくりも大きく変わろうとしているのが今のテレビ業界なのです。