今回は、CMを制作する際の映像手法CMについて考査の観点から注意したい点について書いてみます。
CMの作り方はある意味自由です。
常に新しいCMを作り、視聴者にインパクトを与え、認知してもらうというのが基本的な目的だからです。
ただ、CM制作における映像手法については、なんでもありかというとそういうわけではありません。
というのもテレビCMは電源を入れれば一方的に視聴者の目に入ってしまうので、視聴者への健康を損なう映像手法や、誤った認識や観念を植え付けるような映像手法は、視聴者の保護という観点から避けなければならないからです。
これらはCMの表現考査の段階でチェックされますので、今回は考査で問題にならないよう映像手法について書いてみます。
映像手法にかかわる放送基準は大きく分けて
- 視聴者の健康への配慮上の注意点
- 視聴者に誤った観念を植え付けないような注意点
の2種類になります。
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視聴者の健康への配慮上の映像手法注意点
輝度変化の激しい映像手法、パカパカ
輝度変化の激しい映像手法とはテレビから発せられる強い光や強い光の点滅などの手法のことです。
これにより見ている人の中には吐き気や痙攣をおこすことがあり、特に暗い部屋でこのよう映像を見た場合、脳波に異常が起きることがあるのでこのような映像手法は基本的に避けなければいけません。
パカパカというのはその中でもアニメーションにおける技術の一つで、背景に強い光を当てることで少ない動画枚数でも派手な映像を作ることができるため、かつてアニメにおいてよく利用された手法でした。
ところが1997年にこのような映像を見た視聴者から数多くの体調不良の報告があったため、問題になったという経緯があります。
特に子供に悪影響を与えるということで、この後「アニメーション等の映像手法に関するガイドライン」が新設され、
強い輝度変化や、いわゆるアニメのパカパカのような映像手法は基本的に禁止されるようになりました。
そのためCMにおいても同様に細かく点滅する映像手法や、強い光の背景には要注意です。
またアニメを使ったCMの場合はパカパカと呼ばれるような手法となっていないかを制作する際に注意する必要があります。
渦巻き模様、同心円、規則的なパターン模様などの映像手法
縞模様や、うずまき模様、またはダーツの的のような規則的なパターンの模様については前述の輝度変化の激しい映像手法、パカパカなどと同様、視聴者への身体的影響が懸念されています。
とくにこれらの模様をもとにした点滅の繰り返しなどは、光感受性の人は発作等を起こす可能性があると言われています。
同じように光を使ったものでも、一定方向に流れ、視覚で追うことができるものについては影響が少ないといわれているのですが、規則的なパターンの模様でコントラストが激しい映像手法は問題があるため十分に注意する必要があります。
特に前述同様アニメーションの場合に見受けられるので、「アニメーション等の映像手法に関する解説資料」なども参考にすると良いでしょう。
モーションシックネス、ブレなどの映像手法
モーションシックネスというのはいわゆる乗り物酔いのことです。
映像の「揺れ」により視聴者が乗り物酔いのような症状が出ることを言い、映像手法として故意にぶれを起こすときや、またカメラの手振れなどにより揺れが起きてしまう場合などもあります。
モーションシックネスは耳と目のそれぞれから脳に送られる情報のズレにより自律神経に混乱が生じることで、おきると言われています。
モーションシックネスになると「めまい」や「生あくび」などの症状が現れたり、さらに頭痛や冷や汗、吐き気といった諸症状をもよおす場合が出てきます。
カメラが揺れているとみていて気持ち悪くなった経験がある人も多いと思いますが、
このような健康被害が視聴者に生じないよう、映像手法に十分に注意する必要があります。
関連記事:広告を出す時に注意したい、考査について
視聴者に誤った観念を植え付けないような映像手法注意点
サブリミナル、視認できない映像手法
サブリミナルとは通常視聴者が感知できない映像や音声を挿入することです。
かつて感知できない程度の飲み物の映像を差し込んだことで、爆発的に売れた、という衝撃的な実験で有名になりましたが、実際には科学的根拠がなかったこともわかっています。
とはいえ、日本のテレビCMでは潜在意識に訴えようする意図の有り無しに関わらず、このサブリミナル的な映像手法をCMで使用することは、誤った観念を植え付けかねませんので、CMでは認めていません。
よって制作の際には頭に入れておきましょう。
モノクロ映像手法
CMでモノクロ的な映像手法を取ることがしばしばありますが、これについては放送事故と視聴者に受け取られないように慎重に取り扱う必要があります。
事前に絵コンテや映像で表現考査を行う際、モノクロやそれに近い場合はその旨を必ず記述(絵コンテの場合)することが必要です。
また放送事故と取られないために全部モノクロにするのではなく、モノクロの中に部分的に色を入れ込むという手法を取る場合もあります。
映像事故ととられかねない映像手法、カラーバー
映像事故と取られかねないCM映像の手法は注意が必要です。
例えば画像をわざと乱れさせる、音が無い状態を作る、カラーバーを入れるなどは視聴者の注意を惹きつけるやり方として取り入れたいと思うかもしれませんが、あくまで視聴者が映像の事故と認識する恐れが無いような映像手法に留めることが重要です。
このような手法やこれに近い手法をどうしても取る場合は制作の前に考査判断を慎重に受けるようにしてください。
ぼかし・モザイクの映像手法
新しい商品にモザイクをかけて注意を引いてから商品を表す、ぼかしをかけて興味を引く映像手法を使うなどのCM案が出ることがあるかもしれませんが、
これらの手法は本来ニュースや報道番組において人権を守るために止むを得ず使用する手法出あり、使い方によっては視聴者に誤った観念を植え付ける場合があり、原則CMには使ってはいけないので要注意です。
このようにCMの表現においては映像手法の観点からも考査が入りますので、
制作会社、広告代理店等と慎重に進めて行きましょう。
テレビ局によっては考査の厳しさに差が出ることがありますが、それも踏まえて安心できるCM素材を作ることをお勧めします。