テレビは公共電波で不特定多数の人の目に触れ、影響力も大きいため、番組だけではなくCMについても基準にのっとったCMであることが求められます。
そのためにCMを打つ際には必ず考査という審査のようなものがありますが考査は主に
- 業態考査
- 表現考査
に分けられます。
今回は表現考査について書いてみたいと思います。
表現考査とは
業態考査が主に企業の業態をチェックするのに対し
表現考査というのは実際に流されるCMの内容についてチェックするものです。
文字やナレーションの内容をはじめ、金額の表示方法、必要なことが載せられているか、または不必要に不快な内容になっていないかなど
表現考査ではCMの隅々までチェックされると思っていいでしょう。
その主な内容の大きな目的は、
- 放送法、放送基準に反していないか
- 関連法令に反していないか
- 業界ごとの自主基準に反していないか
- 視聴者に不利益になっていないか
という観点からチェックしておりそのための資料は実に膨大なものがあります。
CMの商品によっては医薬品のようにとりわけ細かいチェックが必要なものと、それほど細かいチェックが必要ない商品がありますので、表現考査に必要な時間が変わってくることを知っておいた方が良いと思います。
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表現考査に必要な物は何か
では実際の表現考査には何が必要かについてですが、基本的には
- 絵コンテ(またはVコンテ)
- オンエア前のCM素材
になります。
そのほかCM表現考査にはその内容を確認できる資料の提出を求められることがあります。
例えば、CMする商品の現物であったり、商品の優位性を示す表現を用いる場合はそれが証明できるような資料が必要になります。
その資料は信頼できるものである必要があり、どの調査機関の資料であるか、信用に足る数値であるのか、いつの資料であるかなど細かいチェックが入ることがあります。
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放送基準とは
では表現考査にでてくる放送基準に反していないかというのはどういうことなのかについてです。
放送基準というのは「日本民間放送連盟 放送基準」のことで、ラジオやテレビの番組はもとよりすべてのCMなどすべての放送に適用されるもので、その骨子は以下の内容に現れています。
- 正確で迅速な報道
- 健全な娯楽
- 教育教養の進展
- 児童及び青少年に与える影響
- 節度を守り真実を伝える広告
非常に大まかな内容ともいえますが、その根本には平和な社会の実現に寄与することという大きな目的があります。
この大きな目的に基づいて民放連放送基準は更に人権や政治、宗教や教育といった項目別に細かい記載があるのですが、中でも表現上の配慮という項目にについては最も細かい注意が載せられています。
例えば、
放送する時間に応じて視聴者の生活状態を考慮し、不快な感じを与えないように…とか
方言をつかうときはその方言を日常使っている人に不快感を与えないようにする
というようなことまで書かれていることからもその細かさがわかると思います。
各種法令とはどんなものがあるのか
次に関連法令とはどんなものがあるかについても簡単に書いておきます。
関連法令は種類がとても多いのですが、よくあるところでは
- 貸金業法
- 健康増進法
- 食品衛生法
- 宅地建物取引業法
- 特定商取引法
- 風俗営業法
- 薬事法
など。
貸金業法というのは昭和58年に貸金業を営む業者については登録制にするのが目的で作られたものですが、たびたび改正が加えられ、最近ではヤミ金融対策として利息の上限や取り立て方など、大きく改正が加えられた重要な法律になっています。
貸金業を営む業者のCMを行う場合は、貸金業法に基づいて、CMの表現は細かくチェックされることになります。
健康増進法というのは比較的新しい法律で、国民の健康維持と現代病予防を目的としています。
健康食品やサプリメントなどをCMする場合はこの法律がかかわってきます。
食品衛生法というのは飲食により人々に害を及ぼすことのないようにするための法律で
食品や添加物の制限、食品にかかわる容器や包装について細かく定められている法律です。
また宅地建物取引業法というのは、土地や建物の取引に免許制度を取り入れ、正しく公正な取引を行うことで、人々に被害が出ないようにするための法律です。
ただし、不動産に関するCMにおいては、個別の物件についてのみCMをすることは比較的少ないので、企業を知ってもらうためのCMになることが多いです。
そのため表現考査で宅地建物取引業法をつぶさにチェックされるということはあまりなく、
きちんとした企業であるかどうかの業態考査の方を重点に見られる傾向があります。
特定商取引法というのは消費者の権利を守るためにクーリングオフなどを制定している法律で、そもそもこの法律ができたのはマルチ商法や、勧誘販売で、被害が広まった過去の問題から来ています。
店舗を持たない業者は特に注意が必要で、最近だとECサイトのみで販売するような業態の場合は、
この特定商取引法に基づいてチェックされ、企業の名前や、所在、連絡先がネット上などに明記されていることや、価格や付随する費用の明記、商品の受け渡し方法の明記、クーリングオフの明記などが法律にのっとっているかが見られます。
表現考査においても、ECサイトのみの場合、CM表現考査としては送料等細かいところまでの表現は求められませんが、ネット上には送料や受け渡し方法等が明記されているかどうかなどが細かくチェックされると思います。
風俗営業法はキャバレーや、ソープランド、ホストクラブ、パチンコ等に対して定められている法律で、該当する業種のCMは基本的に認めていません。
パチンコ等の企業の中にはイメージCMの方法でCMすることがありますが、風紀を乱すような表現はNGで、直接商品を説明するような表現は使うことができなくなっています。
薬事法は人々の安全を守るための薬品に関する法律で
薬品はもちろんのこと、サプリメントや健康食品など、効能を記載するためには
薬事法にのっとった表現がもとめられます。
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その他表現考査については業界ごとの協定なども加えてチェックが必要な場合があるので、
細かい規制とチェックを通ってはじめてCMが可能になると思っておいた方がよいでしょう。