テレビは不特定多数の人に情報を伝える手段であるため公共性が高く社会全体に与える影響が大きいと言えます。
そのため昭和25年のテレビの発足初期当時に放送法が定められ、テレビ業界ではこの法律のもと、規律を定められてきました。
放送審議会という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
テレビ番組で問題があると放送審議会で協議され、という言葉が聞こえてくることがあると思いますが
この放送審議会は、適正な放送が行われていることをチェックする機関で、昭和34年に設置され今もなお機能しています。
CMの考査とは
さて、民放のテレビは必ずスポンサーのCMが入ります。
公共の電波に乗ってこちらも番組同様不特定多数の人々の目に触れるため、
番組同様CMについても放送法にのっとり問題のないCMが放送されるように規制されています。
CMの考査とはCM内容について放送法、放送理論に反していないか、各種の法令や
各放送局の番組基準や、放送基準に沿っているかをチェックする作業です。
その根底には不特定多数の人が見ることができるテレビというメディアは影響力がとても大きいこと、
そのため視聴者を保護する必要があること、
そしてテレビの価値を損ねず維持し、向上していく
という目的があります。
実際の考査は大きく二つに分かれそれは
- 業態考査
- CM表現考査
になります。
後者のCM表現考査とは主にCMの実際の表現が正しく行われているかというチェックで、CMする商品それぞれの判断基準が細かく定められていますが
今回は前者の業態考査について書いてみたいと思います。
そもそも業態考査が通らないと、CM表現考査にはいきませんので、まずは業態考査が通ることはスポンサー企業としての大前提となります。
業態考査とは
業態考査というのは謄本やパンフレットなど必要なものはだいたい決まっていますが
その主な趣旨はCMを出稿する企業の営業・サービス内容が違法なものではないか、
視聴者の利益を損なうものではないかというところを見ることになります。
業態考査に必要なものは一例ですが
- 会社概要…パンフレットなど業務内容全般を確認できるもの。以前はホームページの印刷は不可でしたが、現在ではパンフレットよりホームページの方が重要視される傾向があるため、ホームページの印刷でも可の放送局が多くなっています。
- 登記簿謄本…出稿する企業の法的な登記状態を確認する書類。ホームページやパンフレットだけでは架空の会社である可能性も否めないため、法的に存在することを確認し、所在地も確認。
- 広告主の連絡先…調査機関の連絡先として広告主の連絡先を確認する。これは担当者でよく、通常は名刺や名刺のコピーをもらうことが多い。
- 商品現品…すべてではないが、健康食品、化粧品などCMに使われる商品の現品を提出してもらうこともある
- 商品説明書等…CMに使われる商品の説明書、取扱説明書等を提出してもらうこともある
- 広告原稿(絵コンテ)…詳しい表現考査は表現考査の方で主に行うが商品確認のため業態考査としても必要となることがある
- 共通コード管理センターのコード…CMを出稿する際に必ず必要になるので、まだ取得していない場合は申請が必要。業態考査では特に聞かれないが過去にCMをしたことがるかどうかは聞かれる。
- その他商品の広告にかかわる価格表、キャンペーンの内容等必要に応じて
この中で業態考査で最初に必ず必要となるのは、上の3点「会社概要」「謄本」「担当者名刺」で、必要に応じてそのほかの資料を求められることがあるという流れが多いです。
業態考査ではそもそもCM出来ない業種や、商品によってCMのやり方が制限される場合など
パターンがいろいろなのでCM制作に入る前に業態考査をきちんと通しておくのは大事なことになります。
関連記事:広告を出す時に知っておきたい法律について代理店が解説
商品の営業方法が問題になることもある
あるケースの場合、CMする商品自体には問題がなく、また会社としても歴史があり謄本上も問題がないのですが、
販売方法が訪問販売が主だったため業態考査が通らなかったことがありました。
訪問販売とは各家庭に直接訪問する方法で商品を売るやり方です。
すべての訪問販売に問題があるわけではないのですが、
訪問販売は訪問商法とも言われ、中には店舗を持たず所在がつかめないということを逆手にとって、悪質な売り方をしているケースもかつてありました。
いわゆる押し売りのようなケースです。
現在では店舗を持たずにECサイトで販売するというやり方はよくあるやりかたになっているのですが、訪問販売が主に思われるような場合は過去の経緯もあり、かなり厳しい業態考査が入ります。
その時のケースでは、会社自体はきちんとビルとして存在していたものの、店舗での販売はしておらず、販売がECサイトが中心というわけでもなく、
訪問販売や、臨時の場所を借りての販売だったりと、販売方法の実態がつかみにくい業態だったため
結局業態考査が通らないという結果になりました。
また、お見合いを斡旋する協会についても、きちんとした業態でやっていても
一部の出会い系サイトなどとの区別をきちんと差別化できない場合、業態考査は通りにくくなるなど
業態考査はケースバイケースなので、慎重に進めるのが良いと思います。