朝、昼の情報ワイド番組、夕方のニュース番組、そしてゴールデンタイムのバラエティ番組、あらゆる局であらゆる時間帯で放送されているグルメ企画。
チェーン店のランキングだったり、大勢のタレントさんがぶらり旅で訪れる番組、デカ盛りや地域密着型のユニークなメニューもあれば、店主が主役のドキュメント系も。
ふと目にしたテレビ番組でハンバーグが出ていたら今日の夜はハンバーグに決定!なんて、テレビと実生活が直結する場合もありますね。
私たちの生活に根付いているグルメ番組。どうやって取材するお店を探しているのでしょうか。
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番組リサーチという仕事
テレビ番組の制作工程では、リサーチという工程があります。
企画が立ち上がったら、その企画に見合う、人物や店舗などの取材先を探す、という工程です。
企画はアイデア先行なので、そこに具体的な取材先が書かれていない場合もあります。
こんな店があったらいいな、とか、例えばこういう店を取り上げます、と想像の店舗だったり、ヒントのようなことが書かれている程度のことも。
企画に沿った人や店舗など取材先を探すのが、番組リサーチという仕事で、リサーチを専門にしている人を番組リサーチャーといいます。
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リサーチに入る前に、企画の整理
リサーチャーはどんな視点で取材先を探すのでしょうか。あるリサーチャーの手順を追いかけてみます。
例えば、このような番組でリサーチする、としましょう。
- 放送局…地上波
- 番組構成…土曜日午前中2時間の情報ワイド番組。スタジオで生放送+VTR取材で構成
- 放送エリア…関東エリア
- 企画意図…この冬食べたいラーメンを特集
- コーナー尺…約10分
毎日どこかしらの番組でラーメンを取り上げていますが、この番組ならではのラーメンを探さなくてはなりません。
視聴者を具体的にイメージ設定する
リサーチはネットで探すのが主流ですが、いきなり探し始めると、個性的なラーメンや並んでいるラーメン、口コミの評価が高いラーメンに目を奪われてしまいます。
その結果、おもしろいけど、この番組向きのネタじゃない、とディレクターから却下されるかもしれません。
私たちは日常会話で食について話題にすることがよくあります。
その内容は、会話の相手によって違いが生じます。
ラーメンが話題でも、仲のいい同性の友達、会社の異性の同僚、会社の上司によって、何を取り上げるのか、選んでいます。
つまり、私たちは、頭の中にストックされているラーメン情報の中から相手に適した情報を選んでいるのです。
ここの「私たちの頭の中」は、インターネット上の情報のことであり、「相手」はメインターゲットの視聴者。リサーチャーは調べる前に、誰にその情報を伝えたいのか、を設定することから始めます。
メインターゲットの視聴者像は、番組の放送時間帯や放送エリア、出演者やスタジオのセットなどでわかります。
メインターゲット層に好感度のあるタレントが抜擢されていますし、リポーターは視聴ターゲットにしている層を意識しています。
この番組なら、東京郊外に住んでいる20代の女性、大学生や社会人でまだ結婚していない層。
週末にデートや買い物で都内に出てきたときに寄れるところが求められています。
こういう女性が、週末どんな行動をするのか?を想像して、お店を探します。
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取り上げる条件を洗い出す
20代の女性がデートやソロで食べに行くラーメン店で、この冬、番組がおすすめするラーメンを探さなくてはなりません。
条件は…
- 20代の女性が入りやすい店
- 20代の女性が食べてみたい、と思えるラーメン
- 20代の女性たちの土地勘のあるエリア
- ラーメンのビジュアルがいい
- 新規開店、リニューアルオープン、季節限定メニューがある、など今どき感がある
この5点を抑えたラーメン店がベストでしょう。
構成をたてる
10分程度の尺なら、取り上げるのは3件程度。
リサーチャーは、どういう個性のラーメンを並べるか、構成を想像します。
今、トレンドの人気のあるラーメンを3件並べると、色や形が似てしまうし、ナレーションもダブってしまいます。なにより、視聴者が飽きます。
1件目が今、人気のラーメン、
2件目はニューオープンで1件目とは違う味と色のラーメン、
3件目は1件目2件目と違う味と色で豪華なラーメンと、
それぞれキャッチが被らないように構成をします。
最初にたてた構成は、リサーチをしながら変更していってもかまいません。
こんな店があるといいなあ、とイメージしておくことで、そういう店を探し当てることが可能になります。
リサーチはネットで
リサーチはネットで検索して探します。
ちなみに、グーグルで検索窓に「ラーメン」と入れてみますと…271000000件ヒットしました。
この中から、番組の視聴者に教えたい店を3件探さなくてはならない。それが、リサーチャーの仕事です。
食べログを活用
さて、ここから具体的にどこを見ていくのか、追いかけてみますと…
活用するのは、「食べログ」です。
エリアは「東京」ですから、「東京 ラーメン店」で検索をすると、6825店でてきました。
とりあえず、ランキング順の表示にして、1位からざっと見ていきます。「今、トレンドのラーメン店について知る」作業をします。
視聴者層が好みそうなラーメンの情報をマークしておきます。
マニアや専門家の記事を読む
次は、ラーメンマニアや専門家の記事を探します。
「食べログ」のなかに、「食べログ マガジン」というサイトがあり、そこでラーメンの記事を探します。
マニアや専門家の方が、「2022 人気のラーメン」「今食べるべきラーメン」といった記事がヒットします。
そのなかで、20代女性が好みそうなラーメンの記事をマーキング。
ニューオープンを探す
ニューオープンの店も、「食べログ」でリストアップすることができます。
エリアを選んで、キーワードを「ラーメン店」といれて、表示順を「ニューオープン」を選びます。
20代の女性が行くエリアですから、「銀座・新橋・有楽町」「渋谷・恵比寿・代官山」「新宿・代々木・大久保」「原宿・表参道・青山」などでしょう。
これも気になる店をピックアップしておきます。
人気ランキング、マニアおすすめの店、ニューオープンのカテゴリーを見るだけで20件くらい集まると思います。
調べる・選定する
20件くらいリストアップできたら、1件ずつ調べていきます。
見るのは、店舗のホームページやラーメンサイト「ラーメンウォーカー」やラーメンユーチューバーの動画などで、それぞれの店の記事や、ユーチューバーの動画を検索して店の特徴や評価をみていきます。
そして、ランクをつけます。
- すごいおもしろい=「A★」
- おもしろい=「A」
- 深堀したらおもしろいかも?=「B★」
- まあまあ=「B」
- いまいち=「C」
ランク付けをしたら、上から順番に、詳細にみていきます。
こんどは、
- テレビ番組で取り上げられているか、いつ、どの番組で取り上げられているか
- ネガティブな口コミがあれば、どんな内容か
をみます。
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報告する・下調査をする
以上のリサーチで5件程度に絞ることができたら、企画会議で報告をします。
プロデューサーやディレクターから却下されたり差し替えを要望されたりして、番組で取材候補の3件と予備ネタとして2件程度を暫定的に決めます。
取材候補の3件から連絡をして、番組取材を前提として詳しい話を伺っていきます。
関連記事:テレビ番組の企画は誰が出して、どうやって決まるの?
今回はラーメン特集のリサーチを追いかけてみました。こうやって、膨大な情報量のなかから、番組に見合った情報を絞り込んでいきます。
リサーチャーの能力はどのくらいの情報量を持っているか、ではなく、どうやって番組に沿う情報を選定していくのか、そのノウハウをどれくらいもっているか、なのです。