今回は美容整形のCMについて書いてみます。
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美容整形のCMはできるのか
通常の病院や医院、クリニックというのはほとんどCMを行っていません。
テレビラジオの広告の業界の観点から言うと、医療関係はまったくCMを行ってはならないというような規定はないのですが、
実際にほとんど見かけない理由はいくつかあると思います。
- 医療については表現等の規制が非常に多いのでCMをやりにくいこと
- 病院の場合ターゲットが周辺に限られるので効果が薄いこと
- 医師会や、医療従事者内において広告は基本的に推奨していないこと
など。
とはいえ美容整形の世界においては、比較的テレビCMを見かけるのではないでしょうか。
美容整形の場合も美容整形関係の医師会はあるものの、通常の医師会とは基本的に団体が別で、
病気を治す医療と、美容整形では分野が違うということや
通常の医院と異なり、ターゲットの地域が比較的広くCMの効果が得やすいこと、
また点々と複数個所の医院を持つことも少なくないため、広範囲のCMが可能であること、
何より、美容整形は信頼が重視される世界であるため、テレビCMにより信頼度を高める効果を期待しているということもあるようです。
通常の医療とは分野が異なるとはいえ、美容整形も医療であるためあくまでそのCM表現は医療広告で表現できる範囲と同じです。
関連記事:医療機関のCMで禁止されている表現
医療広告のガイドライン
美容整形は基本的に医療広告と変わらない扱いになるのですが、
そもそも医療の場合広告とはどんな定義を持っているのかというと
- 患者の受診を誘引する意図があること(誘引性)
- 偉業を提供するものの氏名、名称、病院、診療所の名称が特定できること(特定性)
- 一般の人が認知できる状態にあること(認知性)
のいずれの要件も満たす場合に広告とみなされます。
美容整形は医療の分野なので、広告規制の対象者は医療機関のみに限らず、マスコミ、広告代理店、患者等、いずれも広告規制の対象になるという厳しさがあります。
広告代理店も指導の対象になるため、医療関係の広告が少ないのはこれらの状況もあると思います。
表現についても厳しく、暗示的、また間接的な表現においても厳しい制限があります。
たとえば
「最高の医療の提供を約束」
というのは不可で、「最高」というのは不確かであり得ない表現ということになります。
また病院の写真は可能ですが、イメージ写真や他の写真を引用するのは不可。
専門科の談話を引用するのも客観的視点ではないので不可です。
病院のホームページのURLやメールアドレス等に「NO.1」など暗示させるようなものを使うのも不可。
こういった病院自体や、ホームページ記載事項についても厳しいチェックが入ります。
美容整形のCMを行う場合、放送するテレビ局で特に気にするのは、過去のトラブル事例ではないかと思います。
どの業界もトラブルが全くないなどということは無いと思いますが、
どんなトラブルがどの程度発生していて、それはどのような原因によるものであるのか
その際の対処はどのように行ったかということは、かなり細かくチェックされます。
その事例を洗い出して潰していくだけでもかなり大変なことで、それだけでCMを断念する場合も実は多いと思います。
CMを請け負う広告代理店においても、ある程度のCM出稿がが無ければ労力を考えると、CMを積極的に勧めないのが現状ではないでしょうか。
関連記事:広告を出す時に知っておきたい法律について代理店が解説
医療広告ガイドラインQ&A
美容整形については医療広告ガイドラインがかなり参考になりますので、一部を載せてみたいと思います。
キャッチコピーに院長の挨拶を入れるのは可能かについて
医療と直接関係のない項目、たとえば「開院〇周年」や院長による「はじめまして」といった挨拶は美容整形のCMでも使うことができます。
例えば、「○○美容整形外科は開院20周年を迎えました。これからもスタッフ一同努力しますのでよろしくお願いします(病院長○○)」
のような表現をCMで使うことは大丈夫です。
「2週間で90%の患者さんに効果がみられます」というような表現は使えるのでしょうか。
美容整形において効果は最も使いたくなる表現の一つだと思いますが、
美容整形CMにおいて治療の効果に関する表現を使うことはほぼできないと言っていいでしょう。
医薬品と同様、美容整形の効果は個々の患者の体質や状態、状況により当然結果は異なるものですから、効果についていささかでも誤認を与えるような表現は行ってはならないことになっています。
90%という数値も一時的な値に過ぎず、誤解を与えやすいため、ある時期に実際に出た数値であっても使うことはできません。
唯一できるのは、治療結果の分析を行っている旨や、分析結果を提供している旨について表現することは可能です。
美容整形のCMで従業者の写真等を掲載できるのか。
これについては可能で、
- 文字
- 写真
- イラスト
- 映像
- 音声
等の表現が可能です。
たとえば従業者の人数や、配置状況などをCMに入れるのは問題ありません。
また医師等従事者の年齢や、性別、略歴、役職等を写真とともに載せることも、従事者を特定し、患者が認知するという観点から問題ありません。
診療風景の写真を載せるのは可能か
設備の写真、据え置き型医療機器の写真等を載せることは可能です。
ただし、施術中の診療風景については、手術前、手術後の写真等が含まれる場合、治療の効果を表現していると受け取られるため不可です。
学会の役員または会員であることは表現しても良いか。
客観的事実であって、正否について容易に確認できるものであれば可能で、たとえば学会の役職についている旨は、現在も任期中であれば可能ですが、その旨が学会のホームページで容易に確認できるものでなければいけません。
また基本的に単なる会員の場合はCM表現として不可となります。
略歴を記載することはできますが、特定の部分だけを切り取ったような表現は不可で、一連の履歴がわかるような載せ方であるならば可能です。
ただし美容整形CMは短いのでこれは難しいと思います。
治療の前後のイラストや写真を載せるのは可能か。
これは効果にあたる表現なのでCMで表現することはできません。
前述と同様、個人によりその効果は異なるもので誤認を与える恐れが大きいためです。
「最新の治療法」、「最新の医療機器」のような言葉はCMで使えるか。
医学的社会的な常識の範囲で事実と認められるものであれば、必ずしも禁止される表現ではありません。
ただし、登場してから何年までを最新と認めるかの基準を示すのは困難で、より新一郎法や医療機器が定着したと認められる時点においては虚偽、誇大CMとみなされてしまう可能性があるので要注意です。
費用を太字にしたり、下線を引くのは大丈夫か。
ガイドラインにおいては、費用を強調した物は品位を損ねる広告として慎むべきものとされていますが、費用は有益な情報の一つであり、わかりやすく太字で示したり、下線をひくのは差し支えありません。
ただし、費用を前面に押し出すような品位のないCMはダメです。
関連記事:CMの表現考査とは?放送する映像を作る時に知っておきたいこと
美容整形CMに特に関係しそうなところをあげてみましたので、美容整形のCMをするときは参考にしてみてください。