テレビ番組の撮影をしていてタレントさんが怪我をしてしまう、などといった事故がニュースになるのをたまに見かけるかと思います。
もちろん番組を撮影する時は細心の注意を払っており、そういった事故が起きないように対策もしているのですが、どうしてもこういった事故が起こってしまうことは避けられません。どんなに対策をしていてもそういった事故が起こることはあるのです。
ではどうしてこのような事故が起こるのか?制作側ではどのような対策をして撮影に臨んでいるのか、ということを解説していきたいと思います。
事故が起こらないようにシミュレーションは必ずする
普段なんとなくテレビ番組を見ていると、当たり前ですがオンエアの部分しか視聴者はわからないので、それ以外の部分を想像するのは難しいです。
オンエアは基本的には演者さんしか映りません。
しかし事故が起こるかもしれないような撮影を行う時は必ず番組制作スタッフの方で一度シミュレーションをしています。
まるで初めてやることかのようにオンエア上では見えるので、このシミュレーション部分にはスポットは当たりませんが、ぶっつけ本番でやるのは危険かもしれないと思われるものは必ずシミュレーションを行っているのです。
タレントさんの代わりにスタッフが入ってシミュレーションを行いますが、ほとんどの場合、この代わりに入るのはADですね。
アシスタントディレクター時代はそういったことを本当に多くやることになると思います。
演者ではなくスタッフとして番組制作に携わろうとこの業界に入ったわけですから、シミュレーションをするとなると嫌だと感じることもあるかもしれません。
しかしどのような動きをするのか、ということがあらかじめわかっていないとカメラは追えないですよね。
テレビ番組は本当に視聴者にとってわかりやすい画角、構成になるように作りこまれているもので、演者がどのような動きをするのかあらかじめ予測してカメラもしっかりそれを追えるように導線が作られているのです。
シミュレーションというほどではないですが、スタジオで収録を行う時もカメリハと言われるカメラさんのためのリハーサルがあります。これもスタッフがタレントの代わりに入るような形で行います。
事故が起こる危険性が考えられるような企画の時は、スタッフでシミュレーションをして、そこで怪我をしてしまうスタッフが出ることもあります。
これは表には出ませんので、タレントさんの事故のニュースよりも数は多いです。
怪我をしてしまった場合は、どこか改善してその企画を実行することができるのか模索します。
難しそうであれば企画自体がボツとなります。
きちんとシミュレーションをした上で、演者さんに入ってもらうような流れになっています。
事故が起きやすい現場
事故が起きやすい現場としては、やはり実験系の企画をやっている現場とドッキリの現場でしょう。
実験系の現場は毎度必ずスタッフでシミュレーションをしています。
ただ、スタッフが動く動き方とタレントさんの動き方は異なります。
演者が芸人さんだったりすると、リアクションを大袈裟にすることもあり、体の動きも大きくなって、それがそのまま事故に繋がってしまう、ということもあるんですね。
ニュースで見る事故はこれが多いと思います。ニュースになっている演者さんも芸人さんが多いです。
また、ドッキリ系の現場に関しては演者さんにあらかじめ企画の相談をしておくことができないというのが大きいです。
普通は撮影の前に打ち合わせをして、簡単なリハーサルをしてから撮影を行いますので、「こういう動きをすると危険なのでこう動いてください」という指示を事前にすることができます。
しかしこれができないドッキリ系は、本人にとってはリハーサルなしのぶっつけ本番になりますので、想定外の動きをしてしまって事故に繋がるということが起きてしまうのです。
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事故が起こるとどうなる?
対策を色々しているとはいえ、事故が起きてしまったのはスタッフの責任となります。
事故が起きやすい現場というのは、それだけシミュレーションもしていてお金も人員もそれなりにかかっている現場が多いのですが、事故が起きればその企画はお蔵入りになる可能性が高く、放送もできなければマイナスになるだけです。
そのせいで番組が終了してしまう、ということもあります。
なので事故が起きてしまっても、タレントさんは「なんとか放送してほしい、申し訳ない…」と言われる方が多いんですね。
結局演者さん側もスタッフ側も、一緒に番組を作るチームなのです。番組が終わってしまえば仕事もなくなってしまいますから。
面白い番組を作るには常に新しいことに挑戦する必要がありますし、テレビ番組というのは「視聴者がまだ見たことない、自分ではできない」というものを追求して見せていくものでもあります。
そこにはいつも危険がつきまといますが、挑戦しなくなってしまっては面白いものが作れません。
とはいえ、最近はSNSの普及によってさらに番組作りが難しくなっている時代でもあります。
どんなことが面白いと思ってもらえるものなのか、常に考えて番組作りに向きあっていかなくてはいけませんね。