スタジオ収録のときには、カメラリハーサル(通称 カメリハ)が必ず行われます。
カメラリハーサルは何のために、いつされているのか。
そのときアシスタントディレクター(AD)は何をするのか、解説します。
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カメリハは何のためのリハーサル?
カメラリハーサルは、カメラのためのリハーサル、つまり、カメラの動きを確認して調整するために行います。
カメラだけではなく、技術面のスタッフたち、音声、照明の動きの確認や機材の調整を行います。
スタジオ以外での収録、「ロケ」や「ENG」と呼ばれる撮影のときは、カメリハはほとんどしません。
特殊なカメラを使うときは行うときもあります。
カメリハが必ずある現場とは
①スタジオでの収録
カメラは複数台で撮影します。
そして、出演者も複数人います。
番組によっては
- ゲストが登場する
- フリップやパネルを使う
- モニターで映像を出す
- 小道具を出す
- 料理を試食する
など、演出でいろいろな人、モノ、ときには動物も登場します。
それらをどのカメラがどのくらいのサイズで撮影するのか、を決めておかねばなりません。
カメラは複数台で撮影します。
そして、収録をするのはスタジオではなく、スタジオに併設された副調整室という別室にあります。
副調整室では、カメラの切り替えをするスイッチャーや音の調整をするミキサーなど、ここにも技術系のスタッフがいます。
ちなみに、総合演出のディレクターやプロデューサーはこの副調整室にいます。
スタジオ収録の場合、出演者も多いし、カメラの台数も複数あります。出演者が4人くらいの番組でも、ヒキ(スタジオ全体を撮影する)1台、ヨリ(人物を撮影する)が2台か3台ありますから、小さめのスタジオ収録でも3台、大きなスタジオになると、10台以上稼動することがあります。
生放送の中継
生放送の場合は、カメラが1台であってもカメリハはやります。
生中継の場合ですと、中継のラインも確認しておかなくてはなりません。
カメラで撮影しただけでは放送できないのです。
カメラで撮影している映像を中継車で受け取り、それをテレビ局へと送ります。その確認をするためにも、カメリハを行います。
③ドラマや映画の撮影
ドラマや映画の場合、照明で季節感、時間帯、天気を作りこみます。
季節によって日差しの強さは違いますし、朝6時と朝8時の明るさは違います。
照明によってカメラの設定も変わりますし、俳優さんの動きや表情に合せたカメラワークをするため、カメリハは絶対なのです。
つまり、カメリハをするのは、
- カメラが複数台あって、スタッフが大勢のとき
- 生放送や生中継
- 撮影する場所(スタジオ)と調整する場所(副調整室)がわかれている
といった時ですね。
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カメリハに参加するのは誰?
カメリハに参加するのは、
- 技術スタッフ全員
- ディレクター
- アシスタントディレクター
- プロデューサー
です。
スタッフ全員が参加します。
メインは技術クルーで、技術的な機材や調整をするためなので、出演者は基本的には参加しません。
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カメリハのとき、ADは何をする?
カメリハのときに、アシスタントディレクター(AD)は、大事な役割を任されます。
それは、出演者の代役。
とはいえ、出演者代わりに演じたり、セリフをしゃべったりする必要はありません。
カメリハでやりたいのは、出演者の立ち位置や動きの確認と、カメラワークの修正です。
小道具やパネルを出すときに、出演者がどう持ったり、動かしたりするのかを技術スタッフに見てもらい、カメラワークを確認します。
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カメリハをするのはいつ?
カメリハは、技術のスタンバイが整ったあとに行われます。
本番の30分から1時間前くらいに終えるように始めます。
モノを出すときに、出演者がどちらの手で持つか、どこに立つかを確認しながら行います。
ときには流れを止めて、どう撮影するのがベストなのか、ディレクターとカメラマンが話し合うこともあります。
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リハーサルは、カメリハ以外にも!
リハーサルには、カメリハ以外にも、「ドライ」と「ランスルー」と呼ばれるものがあります。
ドライ
ドライをするのは、ドラマや映画のとき。
俳優さんによるリハーサルで、技術スタッフはそれを見るのみ、です。
俳優さんの実際の動きをみて、カメラや照明をセッティングします。
ドラマや映画の撮影のときは、①ドライ②カメリハ③本番の流れになります。
ランスルー
ランスルーは、本番さながらのリハーサルのことです。
出演者もスケジュールの調整がつく方は参加します。
もちろん、技術も制作も参加します。
ランスルーをするのは、生放送の音楽番組やクイズ番組など。
「THE MUSIC DAY」や「音楽の日」「紅白歌合戦」はランスルーをします。
こうした番組はセットの転換や、バックダンサーたちの入りとはけ、照明の切り替え、ときにはアーティストさんたちの早着替え、スタジオと中継を結ぶなど、複雑な構成になっています。
本番さながらにそれぞれが動きを確認し、決められた時間どおりに動けるのかをはかります。
ランスルーは、1日ではなく数日間割くときもあります。1回ではなく2回3回行うときもあります。
本番の前日か前々日までにランスルーをして、それぞれのスタッフは収録の流れやタイミングを身体で覚えます。
ランスルーのときにアシスタントディレクターは、本番さながらの動きをします。
チーフクラスのADであれば、カンペを出したり、舞台袖に立って、出演者の誘導をしたり、出演者の出し入れの手配をします。
ほかのADは、控室で待機している出演者の呼び込みをして、舞台袖の前室と呼ばれる、出番直前まで待機している場所に案内。
出番が終われば控室に戻します。
ADさんたちは、スポットライトの当たっていない裏動線を走りまわっているのです。
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