弊社ライズプランニングはテレビ局出向型の番組制作会社です。
主に情報・報道番組の制作を行っています。
テレビの放送がデジタルに完全移行されてからもう10年以上が経ちますが、
昔のアナログ放送だった時は、「ゴースト障害」と呼ばれるものがありました。
テレビの映像が二重、三重に映って見える現象のことです。マルチパス障害、という呼び方をすることもあります。
今でもたまに放送業界では「ゴースト」という言葉が出てくることがありますが、
若い世代の方からすると「なんだそれは?」というものになりつつあるのかもしれません。
現在テレビがアナログ放送になってゴースト障害が出ることはめっきりなくなりましたが、
ではアナログ放送とデジタル放送は何が変わったのでしょうか?
ゴーストの正体
地上波のテレビは東京スカイツリーなどの電波塔から発射された電波を各家庭のアンテナがキャッチして映る仕組みになっています。
ですが、家庭のアンテナは色々な電波を拾ってしまい、
直接波と呼ばれる「電波塔からまっすぐ届く電波」以外に、
反射波と呼ばれる「山やビルにぶつかって跳ね返ってくる電波」もキャッチしてしまうんですね。
都会の場合はビルもたくさんありますから、こういう現象も起きやすくなります。
直接波に比べて反射波は、波が移動している距離が長くなるので、直接波よりも到達が遅くなり、ラグが生まれます。
これがゴーストの正体です。
ラグのある反射波が映ってしまうことで、映像が2重3重に見えてしまうんですね。
こういったゴースト障害は各家庭で直すのは難しいです。
アンテナの方向を変えたりしても綺麗に消し去るのは難しく、近くの高いビルの屋上に共同アンテナを立てて信号を分けてもらったり、ケーブルテレビに切り替えるなどの対策を今までは行っていました。
関連記事:テレビ放送の仕組みを解説します
デジタルテレビでゴースト障害が起きない理由
デジタル放送になっても、アナログ放送と同じく、テレビは直接波も反射波もキャッチしています。
つまり、この状態は変わっていないのですが、それでもゴースト障害が起きることはなくなりました。
詳しく説明すると難しくなるので、ここでは簡単な説明にしますが、
デジタル放送では、一定の品質以下まで受信レベルが低下すると、ブロックノイズというものが発生し、音声が途切れ始め、さらに受信レベルが低下すると突如受信不能になる、という特徴があります。
つまり、反射波で受信するような品質が下がっている信号は受け取らないような仕組みになっているのです。
なのでデジタル放送ではゴースト障害のようなことが起こり得ないんですね。
アナログ放送だと電波がうまくできないことで徐々に画質が劣化するのに対して、デジタル放送ではある一定の品質以下になるといきなり受信できなくなる、という違いがあるわけです。
今まで高層ビルなどが影響してゴースト障害が発生していた地域でも、アナログ放送からデジタル放送に切り替えることで、正常にテレビ電波を受信できる可能性が高く、多くの地域でデジタル放送に切り替わるタイミングで、テレビデータ受信の品質が改善されました。
難視聴地域について
地上デジタル放送に切り替わった今でも、難視聴地域と言って、テレビ放送の電波が十分に届かず、通常の方法ではテレビ放送が見られない地域が存在します。
山で電波が遮られる山間部や、電波塔から距離があり、電波の強さが弱くなってしまう離島などがその主たる地域です。
ですが、電波の強さが十分な都市部でも、大きな建物や高速道路などに遮られて電波の受信が妨げられて、局所的な難視聴地域が生じることがあります。これは都市型難視聴地域と呼ばれるものです。
実は電波が一定のところから低くなると急にテレビが映らなくなってしまうデジタル放送では、アナログ放送の時と比べて難視聴地域が多く発生するようになりました。
デジタル放送で使われているUHF電波はアナログ放送で使われたVHF電波よりも波長が短く、光に似た性質のため、障害物の影に電波が回り込むことができない、というのも関係しています。
そのため、小電力の地域的な中継放送局で、東京スカイツリーなどの電波塔から発射された地上波放送を受信し、内容を変えず、周波数や電波の偏波洋式を変えてリアルタイムに再放送をする、というような対策が取られており、今では難視聴地域はほぼ解消されています。
それでもなお残っている難視聴地域には、共同受聴やケーブルテレビの利用などの対策が取られています。
ゴースト障害というのは今ではなかなか聞くことがなくなりましたが、
テレビの歴史、仕組みと一緒に勉強してみるとなかなか面白いですよね!
毎日何気なく見ているテレビも、もっと快適に見ていただけるよう、日々努力されているのです。