はっきり言ってテレビの業界はちょっと変わっていると思います。
なぜかというと、テレビは最新の情報を扱って、時代の先端を走っているように見えるのに
実際に現場で作っている様子は、職人さんたちの集まりのような古風な現場だからです。
テレビの仕事がきついというイメージがあるのも、
テレビ業界に入る前と入った後のそんなイメージのギャップのせいなのかもしれません。
特にそれを感じるのは新人研修です。
通常の会社の新人研修
はじめて社会に出て働き始めると、多くの会社には新人研修の期間というものがあると思います。
とはいっても新人研修というのは、会社の義務でもありませんし、
企業の規模や、業態によって、やるところもあれば、やらないところもあるでしょう。
やり方も様々で
1カ月間新人研修期間があるとか、10日間とか、また長いところでは半年間という企業も聞いたことがあります。
銀行の窓口の人やスーパーのレジの仕事をしている人も、「研修中」というバッチをつけている時がありますよね。
あれをつけていると、多少もたもたしていても、新人研修中だから仕方ないのかな、と思ったりします。
研修期間は新人だけ別の場所に集合して、集中して研修を行うという会社もありますね。
特に大きな企業は新人の人数も多いので、毎年のマニュアルが定まっていて、2ヵ月くらいかけてやるところが多いようです。
一般社会人としての振る舞いや、電話のかけ方や、名刺の渡し方からはじまって
技術職であればそれにプラス技術的な研修をやるでしょう。
これらの研修は、先輩社員が教えてくれたり、または外部の人が来て教えてくれたりします。
新人だけを集めた研修があると、新人同士のコミュニケーションができるので、心強いですよね。
同期と親しくなれるのも新人研修期間でしょう。
もちろん新人研修が必要ないとか、やらない、という会社も実は数多くあるのですが、
どうしても世の中の情報として、会社に入ったら新人研修がある、というイメージが付いている人が多いのではないでしょうか。
テレビの現場の新人研修
テレビの現場に新人研修はあるのか
ではテレビの現場の新人研修はどうかというと、
実は現場に入ってしまうと新人研修らしい研修はほぼないところが多いです。
いきなり現場に配属されて、見よう見まねで覚えていくというのが実際のところです。
見て覚えろという感じは強いでしょうね。
あとは言われたことをやる。
職人さんの現場、例えば大工さんの現場でも最初は道具の扱い方や、カンナの削り方など、を
教わると思うのですが、
テレビの場合はそれもなく、荒っぽい言葉でいうと
いきなり現場に放り込まれる、と言っていいかもしれません。
ただ、それでは不安ですし、効率的ではありません。
そこで弊社ライズプランニングでは、現場に出る前にできる限りの研修をするようにしています。
先輩ディレクターによる、マンツーマンの研修です。
先輩ディレクターたちは様々な番組に携わっているので、必ずしも同じようなやり方を皆がやっているわけではありません。
それでも、実際のディレクターたちから事前に教えてもらえることは実はちゃんとあるんですね。
現場に入ると新人研修らしい研修がないということについては、
理由があります。
テレビというのは同じものを作るわけではなく、毎回違うものを作っています。
番組名が同じでも、扱う内容が同じだったら誰も見ませんよね。
同じ番組でも毎回やることが違うのですから、番組が異なればさらにやることは異なるわけです。
だから、新人研修をするというのはもともと難しいんですね。
番組というのは基本はゼロから作り出していくものなので、マニュアルなんて無いわけです。
もちろん許可申請のような、事務的な仕事もたくさんありますからそういうのは教えてもらわないとできないですよね。
でも番組の制作については、会議室に新人を集めて、
「はい、これから番組の作り方について、研修しますね」
とはならないわけです。
特に生放送の場合だと、何日も前から作り置きしておくような仕事ではないので
現場一発勝負という感じで、毎回オンエアに向けて緊張の連続の現場になってしまいます。
同じことをやっていればいいという仕事の内容ではないんです。
もたもたしていると、オンエアの時間に間に合わなくなってしまうから
ゆっくりとやさしく教えている暇も無いわけです。
だったら後で、ゆっくり教えてもらえるかというともう次のオンエアに向けて走り出しているので、そんな時間もない。
そんな状況がほとんどだと思います。
新人でADになった人たちは、「こんなはずじゃなかった」と思ってしまうのかもしれません。
新人を別室に集めてやさしく、テレビの作り方を手取り足取り教えてくれると思ったら大間違いなんですね。
また、現場でやさしく教えてくれる人がいるときもありますが、いないときの方が多いと思います。
テレビの現場・新人研修の伝統
テレビの現場は見て覚えるというような暗黙のルールが残っているところが多くあります。
手取り足取りやさしく研修するという風習がないのは
暗黙のルールが残っているからということがあるかもしれませんが、もう一つの理由が
先輩ADや、ディレクターたちも同じ道を通ってきたということがあると思います。
研修期間があって、手取り足取り教えられてきたのであれば
あとから入ってきた後輩にも同じように接することができると思いますが、
自分が経験していないことをいきなりやれと言われてもそれはやはり難しいと思います。
自分が見て覚えてきたのだから、新人も見て覚えるんだろう、と思ってしまうわけですね。
確かに要領の良い人もいるので見ているだけで覚える人もいると思います。
でもやはり一度で覚えられませんし、優先順位もわかりませんし、
重要度もわかりませんよね。
まして、テレビはやってはいけないことが多いので、新人の時は失敗もしてしまいます。
しかも新人だけが集まる研修もないので、相談する同期もいないとなるとやっぱり不安になってしまうことがあるかもしれません。
でも「新人は見て覚える」だけでは
効率が悪く、とても時間がかかるし、結果として遠回りになるということもみんなわかってきています。
だから変わろうとしていることも確かで、実際にとても変わってきています。
関連記事:新人ADが仕事を始めてきついと思うこと
これからの新人研修
テレビの現場は番組によって、新人の仕事もまちまちですが、
だからと言って、先輩の背中だけをみて、言われたことをやって、失敗を重ねて徐々に成長していくという新人研修のやり方はあまり効率が良くないですよね。
テレビだからと言って全く研修ができない、ということはないんじゃないかと思います。
テレビの新人研修というと、機材の使い方や、編集の仕方、という技術的なことを浮かべる人が多いかもしれませんが、新人の時に編集などはまずやることはありません。
それ以外の雑用が山ほど、しかも種類も山ほどあるんですね。
特に許可申請関係などは面倒で手間がかかる仕事の一つです。
実際にどんな仕事があって、どんなこまごまとしたことをやらなければいけないのか、また
現場に行ったら、みな、時間が無いので、ゆっくり教えてもらうことができないということを
新人のADさんには伝えてあげることは必須だと思うんですよね。
それを知っているだけでも多少そういうものだと、前もって思うことができます。
別室で新人研修がきちんとある、と思い込んでいると、誰でも面食らってしまいますよね。
テレビは大変だよという人は多くいても、それだけではわからないと思います。
実は踏み込んだ研修ができないわけではありません。
生放送と、完パケ番組では、作り方は異なりますが、重なっている部分も多数あります。
事前に研修していくことは、無駄な失敗や苦労をなくすことになるし、結果として、よい番組の制作につながると思うんですよね。
弊社ライズプランニングでは新人研修として、先輩ディレクターと1対1で研修をしています。
どんな番組につくかわからないにしても、実際にディレクターと事前にやり取りすることで、かなり気持ちは楽になるようです。
場合によっては、制作の方にちょっとだけ一緒についてもらうこともあります。
またアルバイトでテレビ局の中の仕事を経験してもらうこともできます。
テレビだから研修は無い、現場で見て覚える時代はもう終わっていくんじゃないかと思いますね。
弊社では実際にテレビ業界で働いてくださるアシスタントディレクターの方を募集しています。
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では今日はこのあたりで。