バラエティ番組やドキュメンタリー番組で、テレビの制作現場が取り上げられたり、制作スタッフがいじられたりして、裏方の人たちの仕事風景が垣間見れるようになりました。
例えば、NHKの「100カメ」。
少し前ですが、2022年6月の放送では、「鎌倉殿の13人」の舞台裏にカメラを設置。大規模な野外での合戦シーンを中心に制作スタッフの様子も捉えていました。
この回は、もう一度みたい!とリクエストが多かったせいか、2023年の大河ドラマ「どうする家康」の舞台裏も放送。
テレビ東京の「YOUは何しにニッポンへ」や「家ついてっていいですか?」、中京テレビの「オモウマイ店」では、ディレクターがカメラをもって、人や店探しをして密着していますから、ディレクターの姿や声を見ることができます。
制作陣の姿をみると、泥まみれになってやってるのか…深夜に張りこみしてるのか…と大変そう。
以前から、こういわれています。
テレビ業界ってキツイ、キタナイ、キケンの3Kでしょ?
え?3Kって、帰れない、厳しい、給料が安い、じゃないの?
…それって、ほんとのところ、どうなの?というところを、解説します!
テレビの仕事って、キツイ・キタナイ・キケン?
制作の工程は、撮影を中心に考えられます。
- 撮影前…撮影の準備。何をどう撮影するのか計画します。
- 撮影
- 撮影後…編集して放送まで
この3工程なかで、最も時間を”かけていない”のは、②の撮影です。
制作スタッフはほぼ毎日撮影しているもの、と思われているようです。
大河ドラマは、撮影に1年以上かけている、という記事がありますが、撮影前の準備は2年以上かけています。
オープニングCGをつくったり音楽をつくったり、ということを考えると、撮影以外にかかる時間は膨大です。
どんな準備をしているのか、を簡単に書いてみますと、
企画がたちあがったら、時代考証や文献の読み込みなどリサーチ、
台本ができれば、撮影場所の選定や交渉、セットや衣装、美術のデザイン、キャスティング、役者さんたちは時代にあった所作や役に必要なお稽古(乗馬や武術、茶道、舞踊・・)など。
撮影に入っても、そうした準備は同時進行で行われていますから、撮影よりも準備と編集に時間がかかります。
(*注意:テレビ業界は専門分業制なので、撮影スタッフは撮影工程を、ポストプロダクションは編集の仕上げ工程を担っており、日々、さまざまな番組に関わっています)
で、「キツイ、キタナイ、キケン」なのは、この撮影での仕事のときを指しています。
キツイ?
キツイ、というのは、撮影の準備から撤収まで関わるため、
早朝から深夜の仕事になります。
撮影もスケジュール通りに進行せねばなりませんから休む暇がありません。
キタナイ?
キタナイ、というのは、どんな番組であろうと、制作スタッフは立ちっぱなしの走りっぱなし。汗だくだくです。
野外ロケのときは、草葉の陰に隠れてキュー出し(役者さんに合図する係)、モノを運んだり、撤収したり、と、汚れ仕事が多いです。
キケン?
キケン、というのは、安全ベルトを装着したり、ヘルメットをかぶるような危険なエリアでの撮影もありますし、山や海など足場がわるい場所での撮影もあります。
炎天下に立ちっぱなしのときも、極寒の地でロケもあります。
スタジオだと、大きな機材が密集しているわ、床は配線だらけ、セットは倒れやすく、天井には照明がいくつもぶらさがってるようなところです。
海外ロケだと、日本のように安全が保障されている訳ではありません。
テレビの仕事の全工程が、「キツイ、キタナイ、キケン」ではなく、撮影の場所が「キツイ、キタナイ、キケン」な現場の”可能性”はあります。
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テレビの仕事って、帰れない・厳しい・給料が安い?
帰れないワケ…
テレビの仕事だけではなく、ほかの仕事もそうなのですが、
- 通常のとき(さほど動きがないとき)
- 集中するとき
があります。
例えば、仕事が集中するときは、大きなプレゼンや発表をするときとか、納品が差し迫っているとき、とか。お客さんをたくさん迎えるとき。
テレビ制作の集中するときは、撮影や放送前にあたります。
20年ほど前は、テレビ局でも制作会社でも、椅子を並べてベッドがわりにして寝ている人、壁に沿って床に寝ている人がたくさんいました。
徹夜作業がなかなかの頻度であったからです。
今は、技術の進化や働き方改革の推進によって、労力が分散化されたり、スタッフのスケジュール管理が整ったりと環境改善されています。
帰れないときもありますが、通常のときはちゃんと帰れます。
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センパイや上司は厳しい?
かつては職人気質の人たちが多く、口で説明するのが苦手な人が多い職場でした。見て覚える、という世界でしたが、それも昔のこと。
テレビが最盛期のころで、どんどん人材が入ってきたころの話です。
どんどん人が入ってきて、どんどん辞めていきました。
今は、せっかくこの業界に入ってきてくれたのだから、きちんと教えて、ディレクターに育てよう、という風土になっています。かつていたような当たりの強い人は、ずいぶん少なくなりました。
もちろん、企業ですから目標設定はありますし、なにより、放送日が決まっていますから、その厳しさはあります。
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給料が安い?
テレビ業界の給料事情についてお話しますと、テレビ局やテレビ局系の制作会社、大手制作会社の社員の給料は平均よりも高いです。
とくにテレビ局員は、業界のなかでもトップですし、日本企業の給料ランキングでも上位です。
制作会社は、というと、いろいろです。
ほとんどの会社はホームページに採用情報が掲載されていますし、就職・転職サイトに求人情報を掲載していることがありますので、そこで知ることができます。
だいたい、日本の平均給与に当てはまるところが多いようです。
ディレクターの個人事務所的な制作会社も数多くあります。そうした小規模の会社は社長の胸三寸といったところでしょうか。
全ての制作会社のデータをとっているわけではないのですが、ほかの業種と比べて安すぎる、というわけではないと思います。
ということで、今回は、テレビ業界のよく言われていることって、ほんとのところどうなのか、解説してみました。
どんな仕事であっても、自分が思い描いているイメージとギャップがあります。
自分の仕事にする前に、そのギャップが小さいほど、思っていたのと違う!とはならないはず。テレビ業界での疑問があればお問合せくださいね。
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