映像系の会社からテレビ業界へ転職を考えている人から、
AD(アシスタントディレクター)をしないでディレクターになれないのか、聞かれました。
テレビ制作の仕事と他の映像系の仕事とは、同じように見えて違うところがあります。
その違いの一つは、テレビ番組制作では「ADというディレクターのアシスタント業務をしないとディレクターになれない」ということです。
- 大学や専門学校で演出や編集を学び、作品もつくったのに、すぐディレクターをやらせてもらえないのだろうか?
- 一緒に卒業した同期生はディレクターだと言っていたのに、自分がアシスタントディレクターなのはどうしてなのだろうか?
- マンガ家や映画監督のように、誰か師匠について助手をする期間を経ないとテレビ番組のディレクターになれないの?
ADはディレクターの補佐をするのが仕事です。
ディレクター経験があるなら、わざわざアシスタントをしなくてもいいのではないか?と思うかもしれません。
テレビ以外の映像現場では「いきなりディレクター」が可能
テレビ以外の映像系の仕事であればいきなりディレクターとして仕事をはじめることは可能です。
例えば、
一人で仕事をする場合や、会社に所属してもすぐに仕事を任されてクライアントと一対一で仕事をするようなとき。
最近は自社のホームページやYouTubeで新商品やサービスの紹介VTRが見られる企業も多いですよね。
こうしたVTRは「VP(ヴィジュアル パッケージとか、ヴィジュアル プロモーションの意)」と言われます。
社内や関連の設備のなかで撮影することになりますし、企業が場所や商品や、出演者を提供してくれます。
キレイに撮影してわかりやすく映像加工したり、
イラストやグラフィックを使って商品の使い方や機能を説明します。
こうした技術は映像の専門学校で学べますし、パソコンがあれば技術を習得することができます。
実績がなくてもアイデアやセンスで、ある程度仕事をとることが可能です。
クライアントとクリエイターをつなげるマッチングサービスがたくさんありますから、そこで仕事を見つけることだってできるんです。
自分の作品集があれば、名刺に
- 「ディレクター」
- 「クリエイティブディレクター」
- 「クリエイター」
と肩書をつけて、仕事をすることもできます。
学校を卒業していきなりディレクターとして仕事をする、なんていうことが可能なんですね。
もし同級生が代理店や制作会社に勤めていて「ディレクター」という名刺を持っていたとしたら、
それはテレビではなくて企業向けの映像を作っているのかもしれません。
関連記事:映像制作の仕事がしたい!と思ったらどんな働き方がある?
テレビとVPではクライアントが違う
映像制作を一人で行う場合は、一人でひとつの作品を作り上げてクライアントに納品する。
納品されたらクライアントから料金を受け取る。
その関係性は、一対一です。
ですがテレビ制作はそうではありません。
制作は専業性、分業制になっているところがあります。
複数の人でチームをつくり、案を練り上げて、映像を作り上げていきます。
それをまとめるのがディレクターの役割です。
またクライアントは誰かというと、取材する相手ではありません。
発注はテレビ局からになります。
VPの場合は映像制作のクライアントが企業であり、撮影する相手も企業。
それに対して、テレビ制作はクライアントはテレビ局で、撮影する相手は番組がリサーチして企画に合う企業や人、なのです。
関連記事:番組制作会社とCM制作会社の違い
テレビ番組制作の構造
テレビの番組制作は複雑な構造になっています。
多数の人が関わっていますし、取材する相手の方は「テレビに出られる!多くの人に知ってもらえるからウエルカム!」というわけではありません。
自社が期待している企画内容や取り上げられ方をするのであれば取材に積極的に協力してくれますが、そうではない取り上げられ方のときもあります。
そうしたときは取材に消極的です。
企業であれば、わざわざ取材の時間をとるのはどうか、と協議されたりもします。
ディレクターは身内である制作チームをまとめなければなりませんし、取材先の人たちに協力を求めたり、説得したり、交渉したり、しなければなりません。
取材先の相手や企業が思い描いている取り上げ方を聞き取りつつ、自分がどう撮りたいのか、を企画に沿う形に合わせていく必要があるのです。
テレビディレクターは何をディレクションしているの?
テレビのディレクターは「撮影や編集でディレクションをする」というだけではなく「人の気持ちや感情もディレクションする」ということも仕事です。
人を動かすのがテレビ番組のディレクターです。
人を動かすのは社会に出たばかりの新人には難しいものです。
こうしたい、こう撮りたい、これを準備してほしい、この日に撮影に行きたい。
取材を受ける側は仕事の時間を割いて受けなければなりません。
こちらの条件だけを並べても、それがストレートに通るとは限らないのです。
取材を快く受けてもらうために、何をしなくてはいけないのか考える必要があります。
引き受けてくれたり、協力してくれたりするのは、交渉にきたディレクターの熱意だったり、人柄によるものだったりすることが大きいものです。
交渉を任されたアシスタントディレクターが一生懸命だったから取材を受けた、なんていうこともあります。
技術だけではなく、一緒にチームを構成している仲間からの信頼を得られるか
取材先との関係性をうまく作れるかどうか
というような要素でディレクターになれるかどうかが決まります。
関連記事:テレビディレクターになりたい人はどんな学校を選ぶ?進学はどうしたらいい?
ADとして仕事をする期間
ADのころというのは人に揉まれる期間でもあります。
どうやったら人を動かすことができるのか、どう説明すれば協力的になってくれるのか、を場数を踏んで身につけていく期間なのです。
場数を踏んで、時に失敗しながら、
人の気持ちがどう動くのか、どう説明したら受け入れてくれるのか、を学んでいくのです。
失敗しても挽回できる、相手方を怒らせてもディレクターがフォローしてくれる、そういう期間がアシスタント時代です。
アシスタントの期間に、しっかり人と関係を築く方法を学び、それを実践していけるようになって、晴れてディレクターとしてデビューを果たすことができます。
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