テレビで根強いコンテンツの一つにドキュメンタリーがあります。
例えば、フジテレビでは、日曜日午後2時から「ノンフィクション」。
NHKでは「72時間」、「100カメ」、
テレビ東京の「ガイアの夜明け」「カンブリア宮殿」もドキュメンタリー。
テレビ東京では「Youは何しにニッポンへ」「家ついてっていいですか?」もドキュメンタリーですが、スタジオ構成もあるため、ドキュメントバラエティと言ったほうがしっくりするかもしれません。
今回はドキュメンタリーを制作しているディレクターについて取り上げます。
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ドキュメンタリーとは?
ドキュメンタリーというのは、世の中で問題になっていることや、関心があることを、その当事者だったり、周辺の関係者、状況や取り巻く環境を丹念に取材していくものです。
話題になっていたり、注目されている人や企業に密着しているのもドキュメンタリー。
道行く人にインタビューして、そのまま同行取材するのもドキュメンタリーです。
バラエティ番組やドラマと何が違うのかというと、
シチュエーションや登場人物が用意されているかどうか、登場人物に台本が用意されているかどうか。
そこで疑問がおこるかもしれません。スタジオにタレントを集めてフリートークする番組に台本はないのでは?それならドキュメンタリーではないか?
フリートークの内容はタレントさんたちが自分の身に起きたこと、経験したことという「事実」に即した内容ですから、ドキュメンタリーと言えるかも?ですね。
その回答は、最後にしてみましょう。
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ドキュメンタリーにディレクターは必要なの?
ドキュメンタリーでディレクターは何をしているのか?
ディレクターは、ディレクターという存在・気配を消すということに意識を注いでいます。
なぜなら取材対象者に撮影されているんだ、という意識を持たせないことが大切だからです。
じゃあ、ディレクターがいなくてもいいのでは?と思われるかもしれませんね。
もしディレクターがいなかったら、取材対象者は何をしゃべればいいかわからないし、そもそも誰かに何かを聞かれなければ、人はしゃべりませんよね。
カメラマンもディレクターがいなければ、何を撮っていいかわかりません。
ディレクターがおらず、取材対象者とカメラマンが取り残されてしまったら、何も撮れないのです。
関連記事:街録とは?現場での流れと撮影のコツも解説
ドキュメンタリーではディレクターは何をする?
ディレクターは、その番組の全体像をイメージできている人のことです。
取材対象者からこういうコメントが出るだろうという想像があり、そのコメントが出るまでいろいろな角度から質問したり、インタビューする場所を変えたりします。
そのコメントを番組全体のどこに配置するのかをイメージしながら、コメントを補足するようなシーンや、コメントへたどり着くような流れを作っていきます。
そのために状況説明のカットや関係者の取材などが使われます。
頭で思い描いている全体像を映像として具現化するために、ひとつひとつのピースを撮影して集めていくんですね。
ほしいコメントがあるのなら、そう言ってもらえばいいのでは?と思われるかもしれません。でも、それをやってしまうと取材対象者の意志のない空っぽな声になりかねません。
ディレクターが撮影前の打合せや下取材(撮影のための取材でカメラは回さない)のときに聞いていたコメントを想定していたにかかわらず、撮影時にはそのコメントが一向に出てこないことも多々あります。
それは取材対象者の意識が、聞いていたときとはちょっと変わってしまった可能性があります。人の考え方は常に揺れ動いているものですし、選ぶ言葉もそのときどきで違うものなのです。
考えが常に揺れ動くなら、取材時と放送時において考え方がすっかり変わっていることはないのか?
と思われるかもしれません。
考え方が揺れ動いているからといって、その考えの根っこの部分から大きく変わる、ということはないものです。誰しも、その考えにいたる根拠や根本があるものですから。
木で例えると、枝や葉っぱは風になびいたり、季節によっては落ちたりしますが、木そのものが移動することはありません。
自分のコトバで話す、というのは、多少の揺らぎがあっても、根本に揺らぎはない。
そのために、ディレクターはいろんな角度から質問したり、
シチュエーションを変えて、例えば、移動中に聞いたり、仕事場で聞いたり、雑談中にふっと聞いたりとするわけです。
ドキュメンタリーを撮影するときのスタッフ体制は?
撮影スタッフの体制は、取材対象者に撮られているという意識をさせないため、最小限にします。
ディレクターとカメラマン一人の合計2人か、音声さんをつけて3人という体制が多いです。
ディレクターがカメラを回して1人体制のときもありますが、それでは取材対象者の目線がディレクターに向いてしまい、カメラ目線になってしまいます。
それに、ディレクターは撮影することに意識がいってしまい、今何を撮るべきか、何を聞くべきか、に集中できないこともあります。
関連記事:カメラマンが撮影するロケ、ディレクターが撮影するロケ、何が違う?
ドキュメンタリーには台本がある?
番組によって台本がある場合とない場合とさまざまだと思います。
台本があるなら、ドキュメンタリーじゃない!
というのはごもっともです。
台本があったとしても、取材に台本を持ちこまず、その台本を取材対象者に見せません。
なんのための台本かというと、撮影スタッフや番組で、ディレクターの全体イメージを共有するための台本。こういうコメントが撮れるだろうと思われます、というものです。
もし、撮れなかったら?
その場合はまた、ディレクターは番組の全体像を軌道修正していきます。
撮れなくても成立するのか、違うコメントならどんなシーンが必要なのか、番組の流れは変えるのか変えないのか、など。
その台本通りに撮っていく、というものではなく、番組終了までに修正を繰り返していきます。コメント一つで、番組の着地点が変わることもあります。
関連記事:テレビ番組に台本はあるもの?台本には何が書かれている?台本がある理由とは…
スタジオ収録のフリートークはドキュメンタリー?
ひな壇のタレントさんたちが経験したことを話してもらうので、事実に沿った話、ですよね。
それはドキュメンタリーか?というと、そうではありません。
というのも、タレントさんたちはあらかじめテーマを知っていますし、そのテーマについてどう話すか、決めてきます。
バラエティ番組なら、おもしろおかしく盛ったりするでしょう。
番組のMCやゲストのタレントたちが、その番組を面白くしようと盛り上げたり、また、面白くするための演出があるので、バラエティ番組なのです。
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