映画やテレビドラマのロケなどをする時にお世話になる組織にフィルムコミッションという組織があります。
今回はこのフィルムコミッションという組織がどんな組織なのか、どんな風に撮影に関わってくるのか、ということを解説していきたいと思います。
フィルムコミッションとは
フィルムコミッションとは撮影を行う時にロケがスムーズに行えるように、映像制作会社とロケ地の間に入る非営利団体のことを指します。
日本では2000年以降に発展しましたが、実は最初にフィルムコミッションができたのはアメリカのコロラド州で1969年。最初にフィルムコミッションという組織が誕生してから、もう50年以上経っているんですね。
日本で最初に発足した組織はフィルムコミッション設立研究会です。
2009年にはジャパン・フィルムコミッションに名前を変えていますが、現在は全国に350以上のフィルムコミッションがあり、撮影ロケに協力をしています。
映画やドラマなどでロケ地として使われれば、地域の知名度が上がり、観光客誘致にも繋がります。
なので地域活性化の策にもなるわけですね。
みなさんの中にも好きな作品の「聖地巡礼(ロケ地めぐり)」をされた方がいらっしゃるのではないでしょうか。
大好きな作品のシーンで使われているロケ地なんかは、その場に立つと「あぁ!あのシーンだ!」と思って、なんだか興奮してしまいます!
撮影を行うには申請が必要だったり、機材搬入のための確認事項などが多くあります。
ですが、普段撮影に関わっていない方にはそういった内容を理解するのは難しいですよね。
なので、映像制作会社と地元の自治体との間にフィルムコミッションが入るわけです。
日本のフィルムコミッションは多くが地方自治体によって運営されています。
役所内の観光課や広報課などが役割を担っていることが多く、民間企業の場合はJR西日本がフィルムコミッションと同様のサービスを行っています。
アメリカでは警察や国をあげてのフィルムコミッションがありますが、日本では少し規模が小さくなりますね。
日本では法律的に道路を封鎖しての撮影などができない、といった背景があります。
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フィルムコミッションの3つの条件
フィルムコミッションを行うにあたって、ジャパン・フィルムコミッションでは3つの条件が定められています。
- 非営利の公的団体であること
- ワンストップサービスの提供
- 作品の内容を問わない
それぞれについて少し解説していきます。
非営利の公的団体であること
フィルムコミッションはロケ地に撮影スタッフを誘致するだけでなく、撮影ロケのフォローも行います。
- エキストラが必要な時に住民からのエキストラを募る
- スタッフや出演者の食事の手配
- 宿泊施設の手配
といったことです。
ですが非営利であるため、ここに手数料がかかったりすることはありません。
制作会社と対等な立場でいるために、手数料などは受け取らない、という決まりになっているのです。(もちろん手数料はとらない、というだけで、実費は発生します)
ワンストップサービスの提供
ワンストップサービスというのは全ての作業を一元的に提供するサービス手法で、
どうしても撮影許可取りなどは、この手続きはどこどこで、こっちの手続きはどこどこ、と窓口が分担されがちなのですが、
これらを一度にまとめて提供する、という意味ですね。
ロケの場合は細かい事務作業が多くなりがちなので、これはとてもありがたいです。
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作品の内容を問わない
色々な撮影がありますが、作品の内容を見てフィルムコミッションが受け入れを決めるかどうかを決めてはいけない、というルールがあります。
これは「表現の自由」を尊重するために設けられている要件ですが、
ロケ地になることで明らかにその地域に不利益があると思われる場合は、例外として受け入れられない、ということもあります。
ただ、基本的にはどんな作品でも、フィルムコミッションで受け入れの可否を判断することはない、ということですね。
フィルムコミッションが提供するサービス
では具体的にフィルムコミッションはどのようなサービスを提供しているのでしょうか。
まず、ロケ地に関する情報提供として、
- 写真提供
- 撮影条件の提示
- 各種使用料
- 連絡先
- 地図
などが挙げられます。
撮影条件や使用料なんかは、それぞれの管轄ごとに違うものなので、フィルムコミッション側で情報を提供していただけるのは本当にありがたいですよね。
さらに、ロケに関する諸々の手配。
- 宿泊先
- 食事
- 機材
- レンタカー
などといったもの。
番組制作であればADが手配する部分になりますが、フィルムコミッションが入る場合は手伝っていただけます。
また、全てのフィルムコミッションで提供されているものではありませんが、以下のようなサービスも提供される場合があります。
- 警察署や公的機関などへの撮影許可手続きの代行など
- ボランティアやエキストラの手配
- ロケハン・撮影の同行
- 宣伝協力
- フィルムコミッションが所有している専用車両や公用車による送迎、案内
- ロケハン助成金や制作補助金などの助成
逆に、フィルムコミッションが提供できないサービスとしては、
- タイアップ交渉
- 製作資金の提供
- 撮影時に生じた人的・物的損害の補償
などがあります。
ドラマや映画などのエンドロールで「〇〇フィルムコミッション」という表記が出てくることがあります。
ぜひそんなところも注目して見てみてください。
