前回、海外ロケについて書いたときに、スタッフから「カルネについてもっと詳しく知りたーい」と催促がありました。
リクエストにこたえて、カルネについて解説します。
カルネとは?
そもそもカルネとは、「通関手帳」と言われるもので、税関を通すときに手続きを簡単に済ませるための書類です。
国境を越えるとき、空港や港で人や貨物、携帯品の持ち出しや持ち込みのチェックをして、税金がかかるものに対しては税を徴収したり、
持ち出し持ち込みが禁止されているものは没収されたり、取り締まりをしたりするのが、税関です。
海外から戻ってきて日本に入国するときは、携帯品は海外で購入した、しないに関わらず、すべての人が申告しなくてはならない、という決まりがあります。
海外ロケに、なぜ税関が関係ある?
それは、機材が高額で目立つからです。
カメラや照明、音声機材をもって海外ロケに出る場合、機材は専用のジェラルミンケースに入れます。
スタッフが4名5名でも、手荷物や私物の携帯品以外にジェラケースや三脚などが10個近くになります。
20年くらい前は、収録がテープでしたから、10日間のロケだと50本とか持っていくわけです。収録メディアだけで、段ボール1箱です。
そうすると、飛行機に乗せるときに、なんですか?それは?ってなりますよね。
- それは、どういうものか?
- いくらするのか?
- それを使って商売するのか?
- それは誰かに貸すのか?
- それは商品として販売するのか?
- この国を出たら、どっか別の国に行くのか?
など聞かれます。
いちいち面倒くさいです。それに飛行機に乗るたびに、荷物をあけられて、取り出して説明させられ、また梱包しなおす、なんてことはしたくありません。
そもそも、これらは、日本から持ち出して、日本に持ち帰るもの。
それを各空港の税関で理解してもらわねば、輸入品だか輸出品だかと間違われて税金がかけられてしまいます。
なので、あらかじめ書類を作って申請しておく、という決まりがあるわけです。これはこういう使用目的で、旅程はこうですよ、とリストになっているものがカルネです。
日本から出すときは一時的に輸出しますよ、外国に到着したときは、一時的に輸入しますよ、と税関を通るごとに、通関のお印をいただきます。
どこに申請する?
日本商事仲裁協会(JCAA)一般社団法人 日本商事仲裁協会 JCAAに登録して申請をします。
手続きをふんだら、カルネが郵送されてきます。
カルネは国を通過するたびに通関の記録を記載してもらいます。
帰国したら、カルネは協会に返還します。
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協会への登録とカルネの手続き
最初に協会への利用登録をします。日本商事仲裁協会(JCAA)のホームページから登録と申請を行います。
- オンラインで仮登録
- 指定のメールアドレスに届いたURLにアクセスして、必要事項を入力
- 登録申請書を印刷して、社判を押印
- 登録申請書と必要書類を協会に提出
- カルネ電子申請システム利用のための通知書とID、パスワードが郵送で届く
- カルネ電子申請システムを利用して、申請内容を入力して送信
- 審査を受けて、通過すると発給日と発給料金が決定
- 発給料金を振り込み
- 郵送あるいは窓口で書類を受け取る
- 日本を出国時に、輸出ページに必要事項を記入
- 税関に、物品とカルネを提出
- 確認後、物品と通関記録のあるカルネが戻される
これで、無事、機材を飛行機にのせることができます。
そしてロケ地の空港では…
空港の税関で物品とカルネを提出し、確認後、通関記録ののったカルネを受け取る。
飛行機に乗るたびに、この通関手続きをします。
そして、帰国したら…
- 日本に戻ってきたら、再輸入通関を行います。空港の税関で物品とカルネを提出。
- 税関が確認したら、通関記録ののったカルネを受け取る。
- 使用完了したら、カルネを協会に直接窓口に届けるか、郵送で返還します。
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リストには何を書く?
リストに書くのは、
- 物品を特定できる具体的な名称・メーカー名・型番・シリアルナンバー
- 個数
- 重量
- 日本での販売価格
- 物品の最終加工国(ISOコード 2文字)
です。
例えば、ソニーのカメラだと、
- Video Camera/Sony/HXR NX3/ABC12345(シリアルナンバー)
- 1
- 1,5Kg
- 240000Yen
- JP
となります。
持っていく機材すべてをリスト化するので、カメラ以外にもレンズやライト、マイク、音声機材、三脚、モニター、バッテリー、バッテリーチャージャーなどを記載します。
表記は英語です。
申請にどれくらい日程がかかる?
協会に申請をしたら、審査になります。
審査が完了してから営業48時間後に発券になります。
審査がどれくらいかかるか、は混雑状況にもよりますので、余裕をもって申請をしなければなりません。
いくらかかる?
発券手数料として基本料金14000円。
カルネ枚数が20枚を超える場合(ロケの場合、それほど枚数はかさみませんが…)超過1枚につき30円。
日本を含めて通関回数が8回を超える場合、超過1回につき250円かかります。
それと、所定の担保が必要です。
今回は、カルネについて解説しました!
カルネの申請はプロデューサーが行うものですが、私がアシスタントディレクターのころ、その制作会社のプロデューサーは、海外ロケの経験がなく、カルネ申請をしてくれませんでした!
もちろん、ADがこんな知識を持ち合わせているハズもなく、カメラマンが教えてくれたため難を逃れました。
あのとき、カルネ申請をしなかったら…各空港で輸出入税を支払ったんでしょうね。きっと。知らないって怖い…。
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