今回はあるテレビ局のディレクターにテレビ局での仕事についてインタビューしてみました。生中継では何があるかわかりません。現場は大変です。
コーヒーが出てこない!
問:これまでの仕事で失敗したことはありますか?
ある中華料理店での生中継の時のこと。
おいしい中華料理店ということで取材に行ったんです。
人気のメニューはマーボー豆腐セット、
セットにはコーヒーも付いていました。
困ったのは厨房のスタッフが全員中国人で日本語が喋れなかったこと。
コーヒーも一緒に映したいので
「コーヒー、コーヒー、プリーズ」
と言っても発音が悪いのか通じないんです。
「カーヒー、カーヒー!カヒー、プリーーズ!」
と必死に言っても厨房のスタッフさん達はポカンとしていて
そうこうしているうちに本番が始まってしまったんです。
生中継だから止めることもできない。
とっさに表に飛び出して近くの自動販売機で缶コーヒーを買ってきました。
店のコーヒーカップにジャバジャバ注ぐ、と同時に
ザーッとカメラが・・。
ぎりぎりのところで間に合いました(笑)。
いやー、あれはハラハラした撮影でしたねー。
あの時のコーヒーはお店の物では無かったことをお詫びいたします(頭を下げてました)
生放送はほんとにいろんなことがありますよ。
まあ、最近では何があってもあまり動じなくはなってきましたけどね。
それでも生放送は緊張の連続です。
問:生放送はやはり大変ですね
この緊張がダメだ、苦手だという人もいる。
逆に緊張感がいい、好きという人もいます。
自分はどちらが良いとか嫌ということはないです。
目の前のことをやって蓄積していくだけです。
アシスタントディレクターに時代怒られたこと
問:アシスタントディレクター時代、他にも何か思い出すことは?
アシスタントディレクターのとき、一度だけ先輩のディレクターに怒りをぶつけたことがあります。
仕事の件で怒られた時のこと、
怒られたことは、自分の落ち度だから受け入れたんですが
そのすぐ後に、更に上のディレクターが「どうしたんだ、説教か」と聞いたときに
おちゃらけて、ハハハ~、そんなんじゃないですよーとふざけたことにカチンときた。
こっちは真剣に聞いているのに、そんなチャラついた気持ちで怒っていたたのかと思ったんですよね。
信頼していただけに、怒られても受け入れていたのにと頭にきた。
さすがに先輩ディレクターも悪いと思ったようでしたけどね。
立場が下でも本当に正しいと思ったときは言っていい、
と自分は思う。
今は自分もディレクターになってますが、基本的に下には怒らないです。
全く判っていない時は言うけど、説教では無く諭す形ですかね。
何かあればディレクターの責任になるけど、それだってアシスタントディレクターなのだから、ディレクターの立場もわかっているはずです。
つまり失敗したことに対する反省は本人が一番わかっているんですよ。
次回は頑張ってねと思うだけです。
ただ、今でも上には言うときは言いますよ。それは変わらない。
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ストレス発散法
問:ストレス発散法は?
アシスタントディレクターの時は特に何もなかったですよ。
いろいろ経験したかったですし、あまり深く考えてなかったのかもしれませんね。
ただ、自分からよく質問をしたと思います。
あえてコミュニケーションをとるようにしたというか。
待っていても手取り足取り教えてなんかくれませんから。
人の台本を見て勉強しろとか、人の番組を見て勉強しろとか、いろいろ言う人はいるけど
台本だけ見てもだめだと思うし、出来上がった番組だけを見てもだめだと思う。
下見・打ち合わせがないから。
下見して、打ち合わせして自分で台本を書く。
そのプロセスを全部やらなきゃダメだと思う。
自分がアシスタントディレクターだったころは自分で台本を書くチャンスがあまり無かった。
だからディレクターになってからが地獄でした。
経験が足りなかったんでしょうね。
問:どうやって乗り越えたんですか
自分はプライドが無いほうだと思う。
ディレクターになってからも困ったら聞きに行きました。
今でもわからないことは
アシスタントディレクターにだって聞きますよ。
問:ディレクターになってからはどんなことが大変ですか
番組を編集すると、必ずチェックする人がいるんですが、
人それぞれの意見や、感性がありますから、
チェッカー(チェックする人)と意見が合うかどうかというのは大きいです。
意見が合わないときに押し通せるものが自分にあるかどうかっていうことです。
仮に50年に一度の良いものができた!と自分では思っても
チェッカーは絶対に何か指摘してくる。
10カ所指摘されたら、数カ所は受け入れて残りはそのままやりたい!と言ったりします。
相手も立てないといけませんからね。
重箱の隅をつつくような指摘は呑むけれど、本筋はゆずらないぞ、という感じです(笑)。
問:アシスタントディレクターとの違いは何でしょうか?
アシスタントディレクターとディレクターとの一番の違いはやはり責任の重さです。
アイデアは経験と、考え方で自分なりに増やすしかないですから。
ディレクターになったら、失敗があっても黙認する忍耐と強さは必要だと思います。
僕なんかもともとの才能なんて全くありませんよ。
問:どんな人が向いていると思いますか?
こういう人が向いているとか向いてないなんてはっきり言って無いと思う。
別にどんな人でもいいと思いますよ。
しいて言えば根気でしょう。
あと、何か言われても気にしないこと、多少打たれ強さは必要かもしれません。
この業界に向いてるかとか、合ってるかとか、いろいろ悔んだり考えたりする前に
何か自分なりにやったのか、と思います。それだけですね。
問:嫌な人がいたらどうしたらいいでしょうか?
嫌な人はいますよ。
俺はこの人とは合わない、と思うことにしています。
人事異動だってありますしね。
嫌な人がいても絶対的な権力者ではないし、意見が合わなくても所詮この人だけの意見だと思ってましたから(笑)。
理不尽なことを言われて、放送時間直前まで言い合っていたこともあります。
時間になって折れたこともしばしば。
腹が立ったのは、言い合って自分が折れたのに、
結局僕のやり方が正しかったとなったときに
さんざん言ってきた相手が知らん顔をしていたこと。
挙句の果てに、君はまだペーペーだからギリギリまで追い込む経験を積ませたかったんだ、と言ったんですよ。
そんな理不尽なこともままあります。
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テレビ業界はどんな業界?
問:テレビ業界はどんな業界だと思いますか。
実は受け皿が広い業界だと思います。
よくコミュニケーションのことを言う人がいますけど、極端な話、コミュニケーションがゼロでも他者を圧倒する能力があればOKの世界だと思います。
極端な話ですがAKBには無茶苦茶くわしいけれど、政治は全く分からないでもOK。
総理大臣を知らない人は普通の会社だと、必要無いかもしれないが、
この業界なら、それを補って余りあるだけの能力があればイイんです。
その道はちょっとイバラかもしれない、バカにされるかもしれません。
でも凝り性の人間は面白いものを作る可能性を持っていますからね。
打たれ強くなっていけば道は開けると思います。
どうもありがとうございました。
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