現役ディレクターへのインタビュー、今回は番組制作4年目のYさんにお話をお伺いしました。
報道・情報番組のADを経て、現在は週末の人気ニュース番組のディレクターをされています。
クールな受け答えの中にテレビの仕事に対するスタンスが垣間見え、自分のことをよく見せようとしない分だけ、信頼のおける方だと思いました。
それではYさんのお話をどうぞ。
大学中退からテレビの世界へ
大学を中退して、しばらくは居酒屋で働いていました。2年くらいです。
そこで正社員になっても良かったんですが、どうせなら何か別のことをやってみようかと。
バラエティ番組が好きだったので求人サイトで見て、なんとなくテレビの仕事に応募しました。みんなそんなもんじゃないのかな?(笑)
どのジャンルの番組を担当することになるのかとか、テレビ業界についての知識はまったくありませんでした。
テレビの仕事と言われても、どんな内容なのかもわからない。
イメージしていたのは、忙しいだろうな、ということくらいでした。
でも、今まで仕事で音を上げたりしたことはなかったので、まあ大丈夫だろうとは思っていました。
いわゆる企業に勤めた経験はなかったんですが、採用してもらえて、それなりにホッとはしましたね。
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初めてのテレビの現場
4年前、初めて入ったのは情報・報道番組でした。
テレビの仕事の現場に入ったとき、「ここにいる人たちは、なにをやってるんだろう?」と思いました。
なにひとつ分からないところに来てしまったという感じでしたね。
4年前の当時は、テレビ局内に編集室がなくて、少し離れたところの編集室で作業をしなければならなかったんですけど、
テープを納品するとき、走ってそこを往復するんです。
わりと足は早かったと思います(笑)昔、バスケや野球をやっていて、スポーツは得意だったので。
それにしても、現物を持って走って届けるなんて、テレビの世界って意外にアナログだなーと思いました。
他の番組に駆り出されてちょっとしたことを手伝う、いわゆる「ヘルプ」もたまにやっていました。
当時は、同じ曜日に入っていた先輩のディレクターに「身体大丈夫?」とか心配してもらいましたね。
気にかけてもらって、ありがたかったです。
その後、素材出しや許可申請などの仕事もするようになりました。
実はあんまり人と喋るのが好きじゃないんですけど、仕事なんでそんなことも言っていられません。
テレビの仕事をやめようと思ったことがあるか、というと…
やめたとして、そのあとどうするんだ、とは思っていましたね。
大学中退してるんだし、せっかく入ったし。まあ、続けるか、という感じだったのかな(笑)
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テレビの仕事をしていて楽しいこと
仕事上で楽しいことは、みんな有名人に会えてうれしい、と言うのかもしれませんが、自分はそういうことはないですね。
アイドルにもあまり興味がないんですよ。まあ、スポーツ選手が来たら「おおー」とはなりますけど、そのくらいです。
仕事で褒められるのが嬉しいです。
できなかったことができるようになって、評価されるのはやっぱり嬉しいですよね。
泊まりのADが1人で、ディレクターが5人というような現場がありました。
その人数だと、素材集めが追い付かないんですよ。
でも、30本集めておいてくれと言われたりする。
そういうとき、ただ30本映像を集めるんじゃなく、その中から使えそうなものとそうでないものを選別しておけば、お互い作業もしやすくなるわけです。
そういう現場で、適切に取捨選択ができるようになって「気が利くようになったな」と言われたり。
そんなときは嬉しいですね。入って半年くらいだったかな。
自分は面倒くさがりだし、仕事できないほうだと思うんです。
でも、締めるときは締める。その成果なのかなと思います。
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テレビの仕事が続けられた理由
なぜテレビの仕事を続けてきたか、を考えると…現場の雰囲気が好きなんですよね。
生放送が終わったあとの雰囲気が好きなんです。
飲みに行こうぜ、飯食おうぜっていう、和気あいあいとした雰囲気。
その瞬間が好きなんでしょうね。
ラーメン食べに行って、愚痴こぼしたり。
この仕事やってなかったら出会えなかった人たちと、そんな風に付き合うのが楽しいからやってこれたんだと思います。
だからこの仕事をやめたくないと…思っていたのかなあ。
今は別の番組を担当してますけど、ときどき「よっ」みたいな感じで当時の番組をのぞきに行くこともあります。
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大変だった仕事
今までキツかった仕事は、突然都知事が辞任したときですね。
何からやったらいいかという感じでした。
自分だけじゃできないので、みんな手伝ってくれましたが、忙しくてあまり覚えていないくらいです。
なんとか切り抜けたという感じです。
思い出せば結構そういうことはありますね。
災害など突発的なことがあった場合も、当然ですがガーッと忙しくなります。
過去の映像素材を探すだけでなく、現地に誰が向かうことができるのか、記者をレポーターとして出せるのかということも最初に探らなければなりません。
社会部などの個別の部からでなく、制作の現場からレポーターを出すとしたら、
宿泊先やチケットの手配も必要になりますし、いつごろ中継を入れられそうかも確認します。
それから、撮った映像をどうするかですね。
数年前の大島の土砂災害のときは、仮設中継基地があったんです。そこから電送してもらえたんですけど、実はラインがパンクしちゃったんですよ。
他の番組も使っていたので、集中してしまったんです。
ディレクターは当然、早く映像を入れたい。でも順番待ちしなきゃならない。
映像が届かないと編集ができないので、追い込まれる。限られた時間の中で間に合わせなきゃいけないのでバタバタになるわけです。
他の情報・報道番組で使った映像をそのまま使わせてもらうってことは、できなくはないですけど、
基本的に「番組独自」の映像を作りたいっていう気持ちがどの番組もあるので、そういうことはあまりしないですね。
番組ごとに独立しているって言ったらいいのかな。それぞれの番組で作る、っていうのが暗黙の了解になっているわけです。
これからやってみたいテレビの仕事
その情報・報道番組は2年弱くらい担当しました。
次にやることになったのは、今担当している週末のニュース番組です。
抜擢っていうとあれですけど、ディレクターに声をかけられて、移りました。あとで聞いたら「あいつはやめなさそう」っていう理由だったらしいです(笑)
1週間のニュースをまとめてオンエアするんですが、バラエティなどを作っている制作1部が担当しているので、報道との合作みたいな位置づけです。
角度・切り口を変えてニュースを提供する「視覚的に面白く、解説は柔らかく」という趣旨の番組ですね。
視聴者に気楽に見てもらうために、ユニークなところに焦点を当てて伝えるのが持ち味です。
作る側は毎日会議があって、大変なんですけど(笑)
オンエアの前の日は一番忙しいですね。そのまま局に泊まり込んで、朝、オンエアが終わって、反省会などをしてお昼頃帰ります。
ずっと情報・報道、ニュースをやってきたわけですけど、一度バラエティをやってみたいなとは思いますね。
勢いのある芸人さんがコントをするような。
大変そうですけど、楽しければやっていけると思います。もともと「ごっつええ感じ」が好きだったんですよ。
先述したように、芸人さんにすごく会いたいというのでもないんですけど…(笑)
取材を終えて
シャイで、時折自虐めいた言葉を口に乗せるYさん。
「〇〇さんが、Yさんのこと褒めてましたよ」と言うと「きっとウソですよ」とニヒルに笑ったり、
手前味噌的なことはまったくおっしゃらないのですが、自慢しない人ほど現場で信頼されているもの。
これからも身体に気を付けて、がんばってください!(ライター・K)
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では今日はこのあたりで。