テレビCMを放送する時に、「どうしたら視聴者の目に留まるか」「どうしたらCMを覚えてもらえるか」ということを一番に考えると思います。
数あるテレビCMの中で印象に残ってもらうということは、とても大変なことです。
しかしどうやったら人の記憶に残ることができるかということを考えるのと同時に、「うざい」「不快だ」「見たくない」と思われないようなCMを作ることも考えなくてはいけません。
せっかくお金をかけてCMをするのに、ネガティブキャンペーンになってしまってはもったいないからです。
もちろん誰にでも良いと思ってもらえるCMを作るというのはなかなか難しいことですし、色々な事に配慮しすぎて結局面白みのないCMになってしまい、CMの放送をしたものの、内容が可もなく不可もないものになってしまっていて、あまり効果を得ることができなかった、となってしまっても意味がありません。
このバランスは非常に難しいところだと思います。
インパクトのあるCMや人気のあるCMがどのようなCMなのかということを研究するのはとても大切なことですが、それと同時にどういったCMがうざいと言われているのか、視聴者にネガティブな感情を植え付けやすいのか、ということも研究することで、新しく作っていくCMの内容がよりブラッシュアップされるのではないかと思います。
今回は広告代理店である弊社ライズアドバートの目線で、うざいと言われてしまうCMにどのようなものがあるのかを解説していきたいと思います。
放送頻度が高すぎるもの
まず一番に気をつけたいのがCMの放送頻度です。
CMの出稿をする時に、1日あたり流れるCMの本数というのは調節することができるものなのですが、1日に何度もCMを放送するということもできます。
もちろんCM接触回数が多いオーガCMの記憶は残りやすくなりますから、単純に考えればなるべくたくさんCMを放送した方が記憶に残ると考えられます。
ひとつの目安として一人当たり3回同じCMを見ればその人にテレビCMを覚えてもらうことができると言われています。
特定のテレビ局でテレビCMを放送する場合、その放送エリアでテレビCMを見ることができる人が一人当たり一回テレビCMを見たという指標になるのが視聴率100%でしょう。
もちろん視聴率100%という数字はありえないのですが、延べ視聴率という考え方があり、視聴率を単純に足し算していくというCM業界の指標があります。
単位はGRPと呼ばれるもので、視聴率10%のところで一度CMをしたら10GRP、さらに視聴率20%のところでもう一度テレビCMを放送したら10+20で30GRP、といった具合に視聴率を計算していきます。
上記で説明した「一人当たり同じCMを3回見る」という数字は、GRPに置き換えるとおおよそ300GRPということになるわけですが、もちろんこの中にはダブルカウントなども含まれますので400GRPあたりを目安としてテレビCMを放送する企業が多いです。
わかりやすいようにほとんどのテレビ局では1GRPあたりの値段、という形で料金設定がされています。(パーコスト制)
どのCMエリアでどのような内容のCMを放送するかにもよりますが、最初からこの数字を狙うのではなく、最初は100GRPから150GRP程度を目指して、反響を見ながら内容も調整したり時には修正してまた放送してみるというやり方が堅実です。
即効性を求めるのであれば一度にたくさんのCMをするというのもありですが、それによって視聴者にうざいと思われてしまっては本末転倒です。
一度にたくさん放送するのではなく様子を見ながら最終的に400GRPあたりを目指すというのが良いのではないでしょうか。
関連記事:GRPとは?計算方法と目標値、CMを出す時にチェックするべきポイントを紹介
カメラワークが独特すぎるもの
こちらはかなり技術的な話にはなってしまうのですが、ぐるぐる回っているように見えるカメラワークだったり、意図的にではあってもブレているものや躍動感のあるものは、何度も見ていると気持ち悪くなってしまうという視聴者が多いようです。
演出的な部分になってくるので、どうしてもその表現が必要なのであれば良いと思いますが、一部ではそういった声が上がりやすくなりますので注意が必要です。
音や声がうるさいもの
CMの音量についてはレベル(音量)の幅が決まっていますので、他のCMや番組に比べて極端に大きい音を出したりすることはもちろんできません。
なので実際には規定のレベルの範囲内での演出に違いないのですが、音がガチャガチャしているものや、怒鳴り声・キンキン声のような物が入っているCMに関しては「うざい」という声が聞かれやすいです。
特に怒っている声というのは、CMの中で対象物があったとしても、なんとなく視聴者が「自分のこと怒られている気がする」と感じる人が多いみたいなんですね。
また同じような系統で、何かを貶めるような表現が使われているものに関してもネガティブな意見が上がりやすいです。
「対象を下げて笑う」ような表現に関しては、必ずと言っていいほど「自分に言われている気がする」と感じる人がいます。
あまりにもネガティブで過激な表現は使わない方が良いです。
テレビCMを放送する前にテレビ局の表現考査というものがあり、視聴者に誤解を与えるような表現が使われていないかということを主に審査する仕組みがあります。
この考査で引っかかった場合には、「この表現は使えないので直してください」と言われるので、あまりにも過激な表現が使われている場合はそもそもこの考査の時点で通らないにはなっているんですけれどね。
関連記事:CMの表現考査とは?放送する映像を作る時に知っておきたいこと
CM制作のときに考えたいこと
今回はうざいと思われてしまうCMについて考察をしてみました。
良いCMを作るということだけでなく、悪い広告にしないということにもぜひ目を向けていただければと思います。
CMを制作する時に考えたいのは、「男女の目線で考える」ということです。
もしくは女性に絞られている場合どうしてもターゲットのことだけを考えてCMを製作してしまいがちですが、テレビCMは良くも悪くも多くの人が受動的に見るものです。
そのため様々なことへの配慮が求められますし、特定のターゲット層に特化したCMほど批判が来ることがあります。
家族全員でそのテレビCMを見たときみんなで笑うことができる、「良いCMだね」と言うことができるようなCMになっているかということを考えてみると良いのかもしれません。
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