テレビ番組制作はアシスタントディレクターからのスタートで、ディレクターの補助をするのが仕事。
ドラマ制作では、ディレクターではなく監督といい、監督を補助するのは助監督にあたります。
ドラマとその他のテレビ番組は仕組みも違うし、仕事も違います。
今回は助監督をフィーチャーします。
助監督とADのいちばんの違いとは?
テレビ番組制作の体制は、ディレクターひとりにアシスタントディレクターがひとりついているか、複数のディレクターにアシスタントディレクターはひとり、というところがほとんど。
アシスタントディレクターを続けていれば、3~5年後にはディレクターに昇格していきます。
かたや、ドラマの場合は、監督ひとりに助監督が3人か4人という体制です。
連続ドラマの場合は、監督が回によって替わる場合もありますが。助監督のなかで序列があり、上から
- チーフ
- セカンド
- サード
- フォース
の順番。
監督とチーフの関係は、監督が「主」でチーフが「従」とは一概に言えず、現場によっては同等の立場、監督とチーフは並列の関係のこともあります。
助監督は監督のアシスタント、ではない。
ドラマはすべて作りこむ世界。
時代や地域を設定して、そこに生きる人たちひとりひとりを細かく設定していきます。
その設定されたシーンに合う場所、モノ、を作り管理するのが助監督の仕事です。
登場人物が働く会社とか、住んでいる部屋、行きつけのカフェやバーなどそういう場所を作るのは美術さん、
登場人物が着ている洋服や持ち物、アクセサリーや身の回りのものはスタイリスト。
料理が出てくるドラマだと、フードコーディネーターやフードスタイリスト。
ファッション、フード、インテリアと衣食住を網羅する専門職がいるのですが、彼らに登場人物の世界観を伝えて、揃えてもらうのは助監督の仕事です。
例えば、主役が東京のIT企業の男性と、就活で上京してきた女性が出会うストーリーであれば、それぞれの細かいなりたちを作成。
家族構成や性格、どんな学生時代を送ったのか、趣味や嗜好なども設定していきます。
1人の人物の出生からふたりが出会うまで細かく作られているんです。
それらはドラマでは出てこない、裏エピソードもかなりあります。
子供時代のシーンやアルバムで登場するシーンがありますよね。
東京で生まれ育っていれば私服だろうし、地方であれば制服姿かもしれません。
その時代が80年代なのか?2000年代なのか?で着ている洋服は本人だけでなく、両親にも反映されます。
ヘアメイクもその時代に合せなくてはなりません。衣装だけではなく、背景もです。
町並や車など、映り込んでいるものがその時代にあるものかどうか。
まだ誕生していないものが写っていると、ネットを賑わすことになります。
…と、実に細かいのです。
それぞれの専門スタッフに説明したり、その当時のファッション雑誌や生活情報雑誌、新聞を集めたり、参考資料を探すのは助監督たちの仕事なんですね。
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チーフ助監督の仕事
チーフの仕事は、
- 監督やプロデューサー、出演者との打ち合わせ
- スケジュールを組むこと
- 撮影部、美術部、衣装部とコミュニケーションをとり調整、連携をはかること
出演者の移動や衣装チェンジは1日のうちにできるだけ控えたい。
移動や着替えで時間を取られてしまいますから。
効率よくスケジュールを組まなくてはなりません。
そのため、シナリオ通りに順撮りしていくのではなく、場所や衣装に合わせてシーンを撮っていきます。
撮影初日が、クライマックスシーンだった、と番宣のときにエピソードとして語る俳優さんがいますが、そういう事情なのです。
ドラマを撮影するときのスケジュールは、香盤表といいます。
香盤表はその日の撮影内容が1枚で分かるようにリストになっています。
書かれているのは、
- 撮影する場所(スタジオなのか、それ以外の場所なのか?)
- 演者さんたち(香盤表には役名で書かれています)の入り時間と出の時間
- 撮影するシーン(第何話のどのシーンか)
- 衣装
- 小物
など。
スタジオ以外での撮影の場合は、集合場所や移動時間なども書かれています。
どの部署の人もこれを見れば、何時までにどこに何を用意しておくのか、が一目で分かりますが、まるでパズルのようなパーツを一つひとつ組んでいくという緻密な作業なのです。
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香盤表とは
香盤表とは、「こうばんひょう」と読みます。
不思議な字を書きますね。テレビ由来ではないし、映画由来でもない言葉です。
もともとは、日本古来より「香道」という、香木の香りを鑑賞する芸道があるのですが、その道具にマスの目に引かれた盤を使います。
その盤が演劇の進行表に似ているため、香盤表と呼ばれるようになったのだとか。
バラエティ番組でも、スケジュール、と言わずに香盤表と言う現場があります。
出演者が多い時に使っているようです。
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セカンドの仕事
セカンドの仕事は、
- 登場人物の衣装・ヘアメイク・持ち物を揃えて管理すること
- エキストラの演技指示、演技指導、管理
- チーフ助監督の補佐
撮影に入る前に、衣装合わせをします。
スタイリストがアパレル会社から借りてきた洋服や古着屋を巡って集めた洋服が、役ごとにラックにぎっしり。
シーンに合わせてコーディネートして、試着。それを写真に撮ります。
セカンドは衣装の香盤表を作成して、チーフと突き合わせをして、チーフは全体のスケジュールを組んでいきます。
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サードの仕事
サードの仕事は、ドラマのなかに出てくる印刷物を作成することがメインの仕事です。
印刷物は意外と多くて、例えば、
- 新聞や雑誌
- 本棚に並ぶ書籍、書類
- コンビニや書店にならぶ本
- 町なかに貼られているポスター
- 飲食店の看板や壁に貼っているメニュー
- 会社の社員証や名刺、名札
- 手紙やチラシの類
…などなど
チーフやセカンドの補佐もしなくてはなりません。
役者さんの立ち位置を確認したり、弁当の空き箱を回収して捨てるのも仕事です。
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助監督から監督になるのに、どれくらいかかる?
サードあるいは、フォースからはじめて、チーフになるまで5年以上かかります。
そして、チーフから監督になれるかどうかは、努力次第。監督にならず、ずっとチーフに徹する人もいます。
チーフ助監督は、カメラ割りを決めたり、演出をすることもありますから、監督と同じくらい重責です。
ただ、拘束時間は監督よりも短くてすみます。
監督はシナリオから本編集、ナレーション、音楽入れまでと長期になりますが、助監督たちは、撮影の1か月前くらいから準備が始まり、撮影終了まで、ですから。
その分、仕事をつめて入れることが可能です。
監督よりも優秀なチーフのほうが実入りがいい、ということがあります。
ちなみに、「よーいスタート!」と声がかかり、カチンコを鳴らすのは、セカンドかサードの役割です。
カチンコはたいてい、自分で用意します。先輩から借りたり、譲ってもらったり、美術さんが作ってくれたり、と愛着があるみたいです。
ということで、今回は助監督についての解説でした。
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