広告業界には広告業界でしか使わない単語ってあるものなんですよね。私も広告代理店をやっていると、
「これって一般の人にはわからない言葉だなあ」とか「専門用語が多いからこそ、CMを出す事に対する壁が大きいんだろうな」という事は大きく感じるところなのです。
例えば、広告業界の中でも、テレビの広告においては、パブリシティのことを略して「パブ」と言ったりしますが、本来はどういう意味なのでしょうか?
いや、そもそも広告代理店に属していたりとか、テレビCMをやって、パブリシティがおまけでついてきた!という経験を持った企業の広報担当じゃないと、
その意味さえわからないのではないか?と思うわけなんですよね。
そこで、今回は広告の中でも、テレビCMとパブリシティの関係を書いてみました。
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パブリシティの本来の意味
パブリシティ(publicity) の本来の意味は「宣伝、広告」です。
そしてこのパブリシティには
- お金を払って広告・宣伝をする場合
- お金は払っていないが、メディアが取り上げたので、結果的に町興しになったとか、広告・宣伝になったという場合
という、大きく分けて2つの場合があります。
通常前者の場合をペイドパブリシティといい、後者の場合をフリーパブリシティ、またはただのパブリシティと呼びます。
今回取り上げるのはテレビ広告、中でもCMに付随するパブリシティの事で後者の方です。
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テレビCMとパブリシティの関係
テレビ局が主に広告収入で成り立っており、広告収入とはテレビCMのことである、ということは多くの方がご存知だと思います。
テレビ局にとってたくさんのテレビCMを出してくれる企業はお得意様なので、多く出してくれた企業には何かしらサービスをします。
たくさんの買い物をするとおまけに何かをくれたりする事がありますよね。基本的にはあれと同じです。
そのひとつにパブリシティというものがあります。
これは何かと言うと、○○円以上ご出稿(CM広告を出す事)の企業様には別枠(電波枠)をサービスしてくれる、というものです。
本来のパブリシティは企業がお金を出さない広告の事をさすので、この場合も一応サービス品(おまけ)ということで、パブリシティとよばれています。
ただし、ある程度まとまった金額のテレビCMを出してくれる企業に対するサービスなので、これを本来のフリーパブリシティと言っていいのかというとそれは微妙かもしれません。
とはいえ、テレビCMにくっついている、あくまでサービス品ということですから、パブリシティはパブリシティですね。
パブリシティはテレビ局主体のものなので基本的にはどの時間帯で流すか、どんな型式でやるのかなどは、テレビ局が決めます。
「○○円以上のご出稿(CM量)で30秒のパブリシティが付きますよ!」とこんな感じです。
ではこのサービス品であるパブリシティはどんなものがあるのでしょうか。
関連記事:CMの相場はどれくらいなのか
パブリシティの種類
基本的な【読みパブ】とよばれるもの
まず基本的なものとして読みパブというものがあります。
ある程度のボリュームのCMを出してくれた企業に対するサービスパブリシティの最も基本的なものです。
どんなものかというと、企業が提供する写真や映像を元にテレビ局で編集して流すCMです。
通常は番組のMC(司会者)や局アナなどが原稿を読みます。
原稿や流れ、映像などは企業が指定できますが、テレビ局では不適切だとされている言葉が使われていないか、長さは大丈夫かなどをチェック、修正して編集していきます。
基本は1回、ですが、CMを多く出稿してくれる場合はパブリシティの回数が増えたり、長さが長くなったりします。
長さの基本は30秒のところが多いようですが、60秒、90秒などそれより長くなる事もあります。
またパブリシティ用の枠は各テレビ局が独自で決めているので、基本的にはどこで流すかは選べませんが、複数ある場合は選ぶ事ができます。
【生のパブリシティ】とよばれるもの
基本的な読みパブに対して生のパブリシティと呼ばれるものがあります。
通称「生パブ」(ナマパブ)です。
これは何かと言うと、読みパブが事前に編集したものを流すのに対して生放送中に生で広告・宣伝するものです。
企業の広報担当者や、社長が自ら出演して商品のアピールをする事ができます。
やり方は基本的には
- スタジオでやる形式
- 外でやる形式
がありますが、外でやる場合は天気予報コーナーなどをやる定点中継(いつも同じ場所で行う中継)の場所で行う事が多いようですね。
局アナとの絡みで
「では今日は○○社の△△さんに来ていただきました。」
「今回ご紹介するのは…」
という感じで、企業の広報担当者が商品を見せながら説明したり、社員数人で元気良くアピールしたり、とケースバイケースです。
また、局アナやMC(司会者)が生原稿を読んで映像やパネルとともに紹介、PRするようなケースもあります
こちらも基本的には30秒1回のところが多いようですが、CMの量により長さや回数は増減します。
新商品の紹介はもちろんのこと、コンサートやイベントのCMの付帯としてこれを活用する場合は、本人が出演することでより効果が期待できますよね。
関連記事:CMプランナーが考えていること
【パブ番組】とよばれるもの
そのほかパブ番組とよばれるものがあります。
これは上記の「読みパブ」や「生パブ」が番組と番組の間や、番組の途中に枠を設定しているのに対し、番組ごとパブリシティにしてしまっているものです。
時間は5分や30分など様々です。
各テレビ局でどんな番組を作るか、どの時間帯にしているかは独自で決めているので一概に言えませんが、深夜帯や、朝昼夕を外した時間帯、タイムランクでいうとC帯に設定している局が多いようです。
タイムランクについて詳しくはこちら:タイムランクと掛け率
方法としては、お笑いタレントさんと一緒に新しいお店に取材に行く、とか工場見学に行く、
または企業が提供する素材を使って数分のVTRを編集したものを流すなど、多岐に渡りますので、テレビ局と相談になります。
パブリシティに関してもそうですが、テレビCMという広告は「多数のやり方や方法が存在している」媒体なんですよね。
もちろん、そうある事によって、宣伝方法の幅が増えているのですが、その分クライアントサイドからすると、わかり辛くなっているのかもしれません。
関連記事:CMは一本いくらで作れるのか
パブリシティとの相性を考える
前述のようにパブリシティにはいろいろな種類があります。
中身も様々です。
企業の商品、性質上、合う合わないもありますから、そこは代理店や、局担当者と相談しましょう。私たちもパブリシティに関しては、クライアントさんとお話する事が多いのです。
関連記事:広告代理店の選び方
たとえば新しいチョコレートが出ました、というだけではパブ番組で扱いにくい、というのが実際のところです。
だったら読みパブリシティのほうがいいでしょう、ということになるわけです。パブリシティを使っての宣伝・広告の仕方も多種多様なんですよね。
それに対し、新しいタイプのお店が開店する、などというときはパブ番組は向いていますね。
取材に来てもらって現場の様子を写してもらうと見ている人は行って見たくなるものです。
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まとめ
今回はテレビCMについてくるサービス、パブリシティについて基本的なものをご紹介してみました。
いったいいくらくらいのテレビCMを出すとこのパブリシティができるのかというところが気になる所だと思いますが、これはテレビ局によりまちまちです。
各テレビ局の規模によるんです。
CM出稿代金も地域で雲泥の差がありますが、それは人口が違うので仕方のない事だと思います。
人口が違う、ということは視聴率も違う、ということですし、視聴率によってCMの値段は左右されますからね。
関連記事:視聴率とcmの関係性
CM費用が高い地域はパブリシティについても高めの設定で、安い地域は安い金額でもパブリシティをサービスしてくれる傾向にあります。
CM費用について詳しくはこちら:cmの費用はパーコストで決まる
またキー局や準キー局では通常、上記のようなパブリシティは難しくそのような枠をほとんど設定していません。
その代わり、視聴率のいいところにCMを入れてくれたりしますね。
テレビCMをするなら是非このようなパブリシティも活用されるといいと思います。
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